15/251
どちらも惜しい
「やっぱ、ダメ、かな・・・?」
眉がさがった顔が助けをもとめるようにあげられる。
「 いや。 え、と。 いや。ダメなんてことないさ。 ―― ただ・・・、」
そう。
ただ、同じ班員として《仕事》はできないだろう。
どちらかが移動をすることにはなるだろうが、 ―― どちらも手放すのは、惜しい。
「 えーっと、ザック、 ・・・先に確認したいんだけど、もう、気持ちは伝えてあるんだよね?そんで、むこうもお前のこと好きってことで、」
「ち、ちがうって!言ってなんかないよ! だからこうして、あんたに相談してんじゃん」
赤い顔をあげ、怒ったようにこちらをゆびさす。
「あ、ああ、そうか・・」
ちらほら食堂にいるみんなが、こちらを見ているのに気づき、ウィルはまわりに手をふってみせた。
たしかに、ケンがザックにそんな告白を受けたらすぐに行動するだろう。
ああみえて、班での仕事の意味を重んじているところがあるので、まっさきに、自分がほかの班にゆくと、班長か副班長に進言しにゆくはずだ。