ポールは知ってた
かなりの年代物のようで厚い紙は黄ばみ、印刷の文字はところどころかすれている。
不気味でよく描きこまれた図解の《鬼》たちは、『本物』を目にしたことのあるルイ達も感心するほどの出来だ。
「あ」
ページをぱらぱらとめくっていたら、そこで自然とひらいてとまった。
「 ―― 《ここ》を、よく開いてるから、ここでとまったってことだろ」
ケンが指さした先には、『氷鬼(または背中鬼)』という大きく凝った文字とともに、毛深く背が曲がり異様に腕が長い鬼が描かれていた。
「・・・どう思う?」
正直、ルイとしては予想外だった。
「この本を、ポールがいつ手に入れたかによるだろ。 《失踪事件》が、起こってから手にいれて勉強したのか。それとも、 ―― ずっとまえから、《湿地》と《背中鬼》のことを知ってたのか」
ケンはその答えをしっているようにわらっている。
「・・どっちにしても、ポールは『背中鬼』のことを知ってて、ジャンにこのはなしを持ってきたってことか。 ほんとかよ・・・」
どうやら、かなり『食えない男』だと、実証されたようだ。
「クラークをまじえて、はなしをきいてみようじゃねえか」
ようやく調子がでてきたケンが、楽し気に本を閉じた。