148/251
『鬼の種類と区分』
下にかさなった箱には、古びた野球のグローブとボールが入っていた。
とりだして、グローブをたしかめたケンが、さらにもうひとつグローブがあるのをみつける。
「 こういうのって、『思い出』ってやつなのか? それとも、『感傷』っていうのか?」
「むずかしいな、それに・・・」
どかした二つ目のグローブの下にみえたもののせいでルイは言葉が続けられなかった。
そこにあるのは、あきらかに、古くて、立派で、本棚にいれるべき本だった。
「だしてみないのかよ」
ケンの催促で、ようやく本に手をふれる。
そっととりだした本は、古く艶やかな布で装丁されたもので、表紙にはかすれた金字で、『鬼の種類と区分』とあった。
明るい場所でみようといって机に置いたのだが、ルイは開きたくなかった。
「こういうの・・この前の『バーノルド事件』のとき、よく見た気がするよ」
冗談にするつもりだったのに、笑えなかった。
ケンも渋い表情で机の上をみている。
眺めていてもしょうがないので、諦めて、本をひらく。