兄弟
車にのりこみ、ルイはこめかみをもんで息をついた。
「 ニコルからきいてたけど、びっくりだなあ。 ―― ジャンが、ポールのことを、おれたちにはなしたことあったか?」
「一度もない。存在をばらされたときだって、はなしを打ち切ったからな」
めずらしく運転をかってでたケンが、さっさとエンジンをかけると国道をたどりはじめる。
「なんでかなぁ? おれ、兄弟いないからわかんないけど・・・、でも、客観的にみて、なんか、・・・ジャンのほうがひどくないか?」
「兄貴を嫌ってるからか?」
「だって・・・・・」
ポールは『弟』を自慢までしている。
ケンが先を走るトラックを楽し気においこし、さらにギアをあげた。
「なあ、ポールは、ほんとにジャンのこと好きだと思うか? まあ、おれたち会ってもねえから判断するのは早いけど、とりあえず、これだけははっきりしたじゃねえか。―― ポールは弟に嫌われてるって事実を、仕事仲間のだれにも言ってない」
車はコート州をつきすすみ、ポールとジャンの母親の家をめざした。




