まさか もしかして
「・・おれさあ・・・」
ザックはウィルをみあげるようにテーブルに突っ伏した。
「・・・自分は絶対、女の子と結婚するだろうって思ってたから、レイのこと好きになったとき、ちょっと驚いたんだ」
「ま、レイはちょっと特別枠だけどね」
チーフの婚約者である男は、いっけん中性的で美しく、教会におかれた彫像を思い起こさせる。
中身も《特別仕様》だとウィルは思っているが、ザックいわくは、《いいやつ》だ。
「 そうなんだよ。 あいつ、ちょっとみかけも普通の男と違うから、それもあるなって思ってたんだけど、・・・」
「今度も、同性を好きになった? いいんじゃないの。気にしなくて。 ―― それとも、家族が反対してる?」
「いや、うちはそういうの、まったくないけど・・・」
「じゃあ問題ないじゃ・・・まさか・・」
そこでテーブルからみあげる顔がひどく困ったような表情なのに気づく。
「・・ザック、まさか、『仲間の』、とか、じゃないよな・・・」
すこし前から、ザックと同年代のケンが急に距離が縮んだようにみえていた。
仕事のときはザックの補助をケンがすすんでやることもある。
休日もいっしょにいることが多いようだと、うすうす気づいてはいたが・・・。