ポールのこだわり
事件をもっていかれたというよりも、ポールを『もってかれた』のが不服、な若い警察官をなだめるようにルイは目をあわせた。
「 こっちも、『殺人』にしたいけど、遺体がまだひとつも見つかってない、って状況に変わりはないよ。 ただ、サリーナが、ターナーの車に乗るあやしい男を捕まえてきたから、そいつからいま話をきいてるとこなんだ。 ―― どうもその男、ポールのことを、つけてたらしくてね」
テーブルの向かいの男は、はあ?とへんな声をあげる。
「ポールが狙われてたってことか? もったいぶるなよ、その男が犯人なんだろ?ターナーのところにもどって車を盗むとか、間が抜けてるけど」
ルイはどこまでを説明しようかと迷った。
むかいの男は、『警察官』であるサリーナに、紹介されてきた自分たちのことを『警備官』だなんて思ってもいないだろう。
「いや。車を盗んだ男は犯人じゃねえし、おれたちがあんたにききたいのは、ポールがここまで、この『失踪事件』にこだわってるのを、どう思うかってことだ」
とつぜんケンが、まようルイのことなどかまわずに質問をはじめた。
「『失踪』って、だって、つながっただろ?」
フォーネルは確認するように聞き返す。
これという理由もないままに、突然姿を消したたくさんの人間が。