№19 ― 雑貨店の事件 ―
トビー・フォーネルはまだ殺人課に配属されて間もない新人で、重犯罪部内でもいちばん若い。
ここにいま自分がいるのは、もちろん積み重ねた努力もあるが、決定打だったのは、まだ街の警邏番をしていたころに、ポール・クレイグと出会っていたからだ。
《防犯部》で夜中のみまわりをしていたときに緊急要請をうけ、強盗が《押し込み中》の雑貨店にむかった。
車に同乗していた相棒は、「おれたちがついたころには、もう死体しかいねえよ」と言ったが、ついたらそこには、転がされた犯人と、ケガの手当をうける店主、手当てをしている男がいた。
「おつかれさん。本部には連絡したからもうすぐアンディたちがくるだろ。 ―― きみ、その犯人の止血してくれるか?」
休みの日に洗濯洗剤のきれたポールが雑貨店にはいってみると、銃を持った男が店主に銃をむけて脅している真っ最中だった。
強盗がポールに気をとられたすきに店主は緊急通報を押し、気づいた強盗が店主を一発撃ったところで、ポールが投げたマスタードの瓶が当たった。
腕を撃たれた店主よりも、床に転がされた犯人のほうが出血量が多いようだった。