うちのボス
サリーナが、荷物および、遺体搬送用のエレベータなんだから、《お客》をのせ慣れてないんだ、とザックの肩をたたく。
ついたのはさっきよりも暗い非常階段近くで、ガラスのドアのむこうにはすぐに、ブラインドのおろされた部屋があり、じゅうたんのしかれた長い廊下のむこうには、たくさんの机が奥まで並び続けているのが見える。
サリーナが肩でドアを押すと、奥の机にいた全員の顔がこちらをむいた。
入るようにうながされたザックがおちつかない気分をあじわったとき、ブラインドの部屋のドアもひらいた。
「 ―― ま、そういうことだ」
中から、クラークとノアと、見たことがない男がまとまって出てきた。
こちらの一団をみとめると、その男がノアをおしのけ、楽しそうな顔をして近づいてくる。
「ひさしぶりだな、ジャン。 ちょっとケンとルイを借りてる。 ああ、ジョー、なんだかまた、世話になるみたいだ」
大男と握手をかわすその男も、警察官にしては大柄だった。
歳はずっと上だろうけど、大きさはニコルといい勝負かも、と考えていたザックも、「サリーナに、もう叱られたか?」と握手をもとめられる。
わらいをかみ殺した彼女がなにも言わずに横にいるってことは、この男のことを認めているということか、と握手しながら見当をつける。
男はクラークをみやり、今回だけだからな、と念押しすると、ノアの背をおして、小声でやりとりしながらむこうへむかい、こちらをまだ眺めたままの机の島の住人たちにむけ、「仕事をしろ!」と大声で指示をだした。
「あれが、うちのボスのロビン・モンローだよ」
サリーナが男の背中を目でさす。