117/251
今度は《ジョー》に
「人間だと、なんていうんだ? 住処にしてる場所の範囲内で、自分の好きなようにできる場所のこと」
「『住処』? おまえ、単語の選択間違ってるんじゃないか? それだと、《背中鬼》が、《湿地》に住んでるみたいになるけど」
ルイがカップに口をつけ首をかしげる。
「 住んでるさ。 湿地のあの穴は全部、あいつの《住処》につながってるんだから。 だから、人間がひとりであそこにいるなんて『ありえない』んだよ。 あの《背中鬼》が、自分の縄張りに一人でいる人間を放っておくなんて、 ありえねえんだから 」
言い切ったとたん、《ポール》の姿をしていた《コウモリ》は、この場でいちばん 『欲されて』 いる男、《ジョー》へと姿を変えた。