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《湿地》=《縄張り》
半わらいでかえった反応に、ニコルが口をまげた。
「その『ありえない』をポールはひとりでこなしてるんだ。 あの湿地で《行方不明者》の指を犬がみつけた。 だから、彼は、ほかの不明者の手掛かりも見つかるはずだとおもって、ひとりで地道に捜索を続けてたんだ。 それでターナーの義眼もみつけた」
これに、「ちがうって」と《ポール》がひらひらと手をふってみせた。
「 意味がちがうよ。 おれが『ありえない』って言ってんのは、―― 『 あの場所に人間が一人でいるなんて無理だ 』ってはなしをしてんだ。 さっき言ったじゃねえか。《背中鬼》に追いかけられた人間は、最後にあの《湿地》に逃げ込んで、あそこでヤツに捕まる。そうなるようにしむけられるんだ。 ―― なにしろあの《湿地》は、あいつの《縄張り》だからな」
『縄張り』?と数人の人間から復唱され、単語が違うか?とルイをみる。