近寄れない
「『 ちかよれない 』? どうしてだ?」
そんなわけないだろう、とでもいうように首をかしげたクラークを、こわごわ見返したコウモリは、助けを求めるようにウィルとルイをみた。
「この男に言ってやってくれよ。 『 背中鬼 』に捕まった《魂》になんて、寄りつけないって」
助けをもとめられた男たちは顔をあわせて首をふった。
そこでようやく、思い当たったように《ポール》は、落胆の息とともに腰を落とす。
「 そうか。 おまえら、・・・いちおう人間だもんな。 聖父はまだ、ここに来ないのか?」
首をふるウィルの楽し気な表情に、ちくしょう、とまた小さく毒づき息を大きく吸った。
「 ―― さっきも言ったが、《ここ》では姿をかえて人間をだましてたってのは、認める。でも、騙した人間から必要以上のもんは、おれたちは盗らない。飯が食えて寝床がありゃいい。――この国の中を、ゆっくりぐるぐるまわって、いままで人間たちの噂にならないように気をつけてやってきたんだ。 一か所には長くとどまらないで、居心地がよくても見切りをつけて出ていく。 最後に一筆『お別れの言葉』をかいておしまいだ。 ・・・たいていは、『いい思い出』ってことになって、問題は残らねえから、聖父に『罪』とか、いわれるほどのもんじゃねえと思うがよ」
「それをきめるのは、騙された方の人間だよ」
ルイに指をさされ、不満そうに口をまげたが、つづけた。




