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マスクの下を見たいだけです

 マスクはしてもしなくても個人の判断に任されているはずだった。海外ではマスクなんて誰もしていないというニュースも見た。


 山瀬果奈は、彼のマスクをどう外させようか考えていた。


 彼は、近所にできた惣菜屋の店員だった。おそらくバイトで、大学生ぐらいだが、目が優しげで、声もいい。いわゆる一目惚れという状況だった。


 果奈の両親は忙しく、高校生だが、夕飯は一人で食べる時が多かった。そんな中、近所にある惣菜屋・幸福キッチンは、果奈のオアシスとなっていた。一番は唐揚げが美味しいが、卵焼きとおにぎりのセット、アジフライやカキフライ、サイドの豚汁も美味しい。店長は、三十歳ぐらいのおじさん、いや、お兄さんが経営しているようだが、彼が店に立っていると内心がっかりだ。あの彼が店に立っていると、店長には大変申し訳ないが、テンションが爆上がりしてしまった。


 問題は、あの彼がマスク美人だったらどうしようかなという事だった。もし顔から下半分がゴリラだったら、100年の恋も覚める。


 という事で、マスクを外させる為に、色々と作戦を練っていた。まず、どれだけマスクが無意味である文献などを調べ、知識はばっちり頭に叩き込んだ。また、「風邪はどんなに気をつけていてもなるものだ、体調不良の人もお互いに許しあう優しい世界が必要だ。誰がうつしたかなんて証拠もない!」と、彼の前で熱っぽく語ってしまった。北風だけでなく太陽も必要だと考える。もちろん、持病がある人や老人は気をつけるべきだが、健康な若者にマスクは本当に必要か断言なんて出来ない。


 そう語る果奈にカウンター越しの彼は、目が点になっていた。そして何故かポロポロと泣き始めてしまった。


「え? 店員さん、私何か悪い事しましたか?」

「いえ、こんなに優しい事を言われたのは初めてで」


 彼は高校の時、風邪をひき「疫病を広めるな!」「バイキン!」といじめられた過去があったらしい。友達や彼女もみんな離れて行ったという。おかげで大学生になった今も二重マスクが手放せず、バイトと大学以外は引きこもり、心を病んでいたそうだった。


「そんな……!」


 果奈は、ここで畳み掛けるようにマスクが意味ない事や日本は対策の割には、効果が出ていない現状などを語る。小さな惣菜屋という舞台で、里奈はすっかり主役になって語っていた。


「大丈夫、マスク外しても。っていうか、涙でベトベトだよ?」


 彼は、耳に手をかけ、さらっと普通のマスクをとった。


 綺麗な歯並びが見える。顎の形も綺麗だった。いうまでもなく、心の中でガッツポーズをとってしまった。


 こんな事もあり、道行く人もマスクしてないだけでイケメンや美人に見えてしまった。その点は果奈はもったいないなぁと思ったりした。


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