共犯者
並んで公園のベンチに座ると、アリサは夜空に輝く星を眺めた。
ノベルはその横顔を見つめ、懐かしさを感じながら静かに問う。
「アリサ、君はエデンの騎士だろう? どうしてここへ?」
「ランダー様、お忘れですか? 私は騎士でしたが、あなたの護衛でもあるのですよ」
そう言ってアリサは優しく微笑む。
そのまっすぐな言葉は、辛い日々を過ごしているノベルの心に響いた。
自分の味方だと言ってくれる人がいるというだけで、泣きそうなほど嬉しかった。
「もしランダー様が捕まったときは、この身を犠牲にしてでも救出するつもりでした。ですが結局、エデンでランダー様は見つかりませんでした。そこで思ったのです。きっと誰かがかくまっているのではないかと」
「ということは……」
「はい。ランダー様が最も信頼を寄せているリュウエンさんならと思い、ランダー様の行方をお聞きしに行ったのです」
「そうだったのか」
「もちろん、すぐには話してくださいませんでした。知らないの一点張りでしたので、私がいかにランダー様の味方であるかを説明し、それでやっと……」
なんだかアリサの言葉尻が小さくなった。それになぜか頬も少し赤くなってもじもじしている。
どんなことを話したのかは、聞かない方がよさそうだとノベルはなんとなく思った。
「そういうことだったのか。とにかく、今は君が来てくれて本当にありがたいよ」
「ランダー様がご無事で本当に良かった」
アリサはしんみりと目を閉じ、安堵に頬を緩ませる。
だがゆっくり目を開けると、悲痛に満ちた表情を浮かべていた。
意を決したように、アリサは立ち上がり、ノベルへ深く頭を下げる。
「……エデンでランダー様の危機をお救いできなかったばかりか、プリステン家のみなさまをお守りできず、本当に申し訳ありませんでした」
「アリサ……」
彼女にかける言葉が見つからなかった。
「大丈夫だ」とか、「君のせいじゃない」だとか言っても、気休めにもならない。
彼女は母たちの近くにいながら、それでも守れなかった。
その無念さをノベルが理解してやることはできない。
ノベルは立ち上がって一歩前に出ると、背をアリサに向けて告げた。
「僕はね、家族を奪った奴らを許さない。それがたとえ、エデンの政治家だろうと、親友だろうとね」
「ランダー様……」
「僕はここで必ず這い上がり、エデンに戻って復讐する」
その重い言葉が響いた後、しばらく無言が続いた。
やがて、アリサが甲冑の音を鳴らして背後まで歩み寄る。
ノベルが振り向くと、彼女は片膝を地面につきこうべを垂れていた。
「おそばにいながら守れなかった私には、復讐などと言う資格はありません。ですが、主であるあなたがイバラの道を進むというのなら、御身に降りかかる厄災は全て振り払ってみせましょう。生涯の護衛として」
その日、アリサは王子の護衛から、復讐の共犯者となったのだった。
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