表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/50

逆襲の足掛かり

 その日、ノベルはアリサを連れ、とある地区の隅に屋敷を構える、弱小商会へと足を運んだ。


「――これはノベルさん、よくおいでくださいました」


 ノベルたちが二階の執務室に入ると、なにかの書類にペンを走らせていた男が立ち上がり、慇懃に頭を下げる。

 情報屋業を営む『スルーズ商会』の会長『ルイン・スルーズ』だ。

 痩せ細った男で眼鏡をかけており、常に引きつったような笑みを顔に貼りつけ気が弱い。心労のためか、まだ四十代だというのに黒に混じる白髪が目立つ。


「こんにちは、ルイン会長」


 ノベルは軽く頬を緩めて挨拶し、アリサも横で会釈する。

 ルインに促され、横の応接ソファにノベルは座り、小さな机を挟んでルインと向かい合う。アリサは護衛としてノベルの後ろに立った。


「ノベルさんにおかれましては、こんな弱小商会に出資して頂いて、本当に感謝しております」


「いえいえ、ここなら必ず利益を伸ばせると確信していますので」


「あ、ありがたいお言葉です」


 そう言ってルインは頬を引きつらせる。

 しかしノベルは、この商会はきっと化ける、そう確信していた。

 その根拠は、この商会が発行している情報紙にある。

 少し焦点がズレているものの、国外の情報を集めることのできる人脈は貴重であり、凝縮されている情報量はかなりのものだ。

 それで、ノベルは金庫番から受けた融資の全額をこのスルーズ商会に投資した。


 まずは一極集中。

 スルーズ商会は、かなりの経営危機に陥っているが、上手く立ち回れば復活できる可能性は残っている。

 ノベルは大きなリスクを負ってでも、これを逆襲への足掛かりとするつもりだ。


「しかしご期待してくださるのは嬉しいのですが、負債の方がなかなか……」


 ルインは言いずらそうに口ごもり、ノベルはため息を吐いた。

 スルーズ商会がここまでの経営危機に陥っていた原因は、情報紙で公表した情報の一部がある貴族に不利益をもたらし、その逆恨みで攻撃されたのが始まりだという。

 それで様々な方向から圧力をかけられ、取引先を失い、金庫番の融資も受けられなくなって、商会の仲間たちを泣く泣く解雇したのだとか。

 結局のところ、この国の権力者による横暴だ。


「大丈夫です。そんなもの、大したかせにもなりません」


「は、はぁ、そうでしょうか?」


「もちろんです。ところで、最近はどんな情報が手に入ったんです?」


 釈然としないルインだったが、ノベルの問いに表情を引き締めた。

 すぐに立ち上がり、執務机の上から数枚の書簡を持ってくる。

 それらには、国内外で得た情報が詳細に記されていた。


「これですべてです」


「凄い。かなりの情報量ですね」


「ええ。ノートスの貴族や政治家たちも、国外には圧力をかけられないですからね」


「それもそうですね」


 ノベルは得心したように頷く。

 彼は目を走らせ、書簡に書かれた内容を流し読みする。

 そして最後まで読み、右側の頬をわずかにつり上げた。

もし「おもしろかった!」と思って頂けましたら、この下にある☆☆☆☆☆から作品への評価をお願いしますm(__)m

ブックマーク追加も一緒にして頂けると嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ