9話 冒険の準備1
「私はこの失われた記憶を取り戻したいです。傷が癒えたら、旅に出ようと思います」
「そんなぁ……」
がっくりうなだれるリイナ。同年代の同性の友達が旅立つの寂しいと感じているのだろう。
「リイナちゃん、旅が終わって記憶が戻ったとしても、また会いにいくよ!」
「んー……」
リイナは何か考え事を始めた。その様子は、うなづいたり、自問自答を繰り返しているようだ。そして、リイナは意を決して
「私もマキナちゃんと一緒に旅にでるよ!一人旅は心もとないでしょ?おじいちゃんも良いでしょ。私の一人旅なら反対すると思うけど、マキナちゃんと一緒ならいいよね?」
「そうは言うが、わしはリイナの両親から面倒みるのを頼まれた身なんじゃが……どうしてもいくのか?」
リイナの両親は、期間限定で王都に出ているようだ。将来ディルクから村長を引き継ぐため、政治や経済を学びに行っている。
「うん、行くよ。私もいつまでも村でニートやるわけにはいかないでしょ?旅をして、魔術師修行してそれで村にもどってくるよ」
リイナはどうやらニートであることを気にしているようだった。
「しょうがないの。マキナちゃんがいれば安心だし、逆にマキナちゃんにとっても仲間がいれば心強いからの。リイナは魔術師として素質のある子だから、きっと力になってくれるぞ」
ディルクは基本的に孫に甘々なので、リイナの意思を持って決めたことを尊重することにした。
「さて、そう決まれば冒険へ出る準備をしなくてはならないの。マキナちゃんの体調的には早くて一週間かの。マキナちゃんはまず体調を整えること。リイナはまずリックとメイヤに手紙を送りなさい。旅に出ることを知らせておくのじゃ」
どうやら、リイナの両親はリックとメイヤというらしい。
マキナはリイナが手紙を書いている間は、リハビリがてらに部屋の掃除をやっていた。
お昼過ぎにはリイナも手紙を書き終わったので、一緒に村をぶらつくことにした。
次の目的は、マキナの冒険者登録をすることだった。マキナは戸籍不明なので冒険者登録する際には、審査に時間がかかる。戸籍がないので、無犯罪証明などもできるはずもなく。国の冒険者協会へは、村としてこの人は問題ありませんよという推薦書を書かなければならない。
そのはずだったが、ディルクの計らいによってイーノン村の戸籍を貰うことが出来た。これはディルクの独断ではなく、村の総意でマキナをイーノン村の住人にしたいということもあって、特に問題はない。
「マキナさん、こんにちは~。聞きましたよ、怪我の痛みが引き次第、旅に出られるそうですね。ということはもしかして冒険者登録ですか?」
「そうなんですよー。なので冒険者登録お願いします!」
「はーい。申し遅れました、私はこの村の集会所の受付嬢をやっているネルカと申します。マキナさんは細かい審査は抜きで、剣士のFランクスタートで行きますね。大丈夫ですよ。この村の狩人たちを救ったあなたならすぐにランクもあがりますよ」
マキナは、剣士として冒険者をスタートすることにした。まず、魔銃はアンゲラス大陸には存在しない武器なので、それを武器にした冒険者は目立つ恐れがある。
次に魔術師も考えたがパーティーを組む上で、リイナとマキナの両人が魔術師というのも変に思われるので、マキナを適当な前衛職で登録するのが無難であると考えた。もしかしたら考えすぎかもしれないが、前衛と後衛がいるのが一般的だろう。
先日のハイマとの戦いでは、狩人の剣を用いて戦うことができたので、多少の心得はあるんじゃないかとマキナは少し自信あるようだ。
「やった!これで、マキナちゃんも立派な冒険者だね」
リイナはマキナの冒険者登録に自分のことの様に嬉しそうにしていた。
「マキナさん、リイナさん。クエスト受注しておきますか?次の目的地であるシャイナス町までは途中リーネの丘を通っていかないとたどり着かないから、そのリーネの丘で発令されてるクエストを登録するのがよいかと」
ネルカは冒険者デビューを果たしたマキナに早速、クエストの依頼を持ちかけてきた。
「Fランク用のクエストの募集はありますか?」
「今だと忘却草5本の採取とフォレストウルフ10体の討伐がおすすめです。ただ、最近Cランク相当のキンググリフォンの目撃情報が相次いでいるので、くれぐれも長居しないようにしてくださいね。ちなみに、クエスト完了報告は、採取系は依頼品の納入で問題ありません。討伐系は首や皮など、対象の身体の一部をはぎとって、納品してください」
「わかりました。それでは、忘却草の採取とフォレストウルフの討伐のクエスト受注お願いします」
「はーい。受注完了です。お2人なら問題なくクリアできると思うので、頑張ってくださいね」
クエストを無事に受注し終えた2人はクエスト集会所を後にした。
読んでいただきありがとうございました。
・アドバイス
・誤字脱字
・コメント
・評価
・ブックマーク等
募集しております。
作者の励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。