5話 イレイズの森を行く
しばらく歩いて、マキナとリイナはイレイズの森にたどり着いた。イレイズの森は街道を挟む森ではないので、道はまず整備はされていない。迷うほど広い森という印象ではないが、木々が生い茂り、陽の光が入りにくいのは少々厄介だ。昼間であっても薄暗そうな森なのに今はもう夕方。魔物が出てきても、小さいサイズは見逃す危険性がある。
「きゃああああ!」
叫び声と共に、それまで隣で歩いていたはずのリイナがマキナの視界から消えてしまった。
辺りを見回すと、緑色の変な触手に捕まっているリイナが見えた。
「なにこれぇ……、ヌメヌメする……」
両手首と両足首、太腿の辺りを縛られており、普段はローブの下に隠れている色白なすべすべの太ももが露になっている。残念ながら(?)太ももの先は守られている。
うん、とてもいい!とマキナは思ってしまった。
そんな個人的趣味嗜好にふけってる場合ではなく、リイナを早く助けない手遅れになる。
残った触手は鋭い形をしており、恐らく胴体を貫いて殺害するつもりである。
マキナは銃を構えて、触手に狙いを定めた。手に馴染む感覚があった。恐らく、記憶を失う前からよく使っていたのだろう。
「リイナちゃん、今助けるよ!」
魔力を込めて、引き金を引く。弾は見事にヒットし、魔物の触手を破壊する。続けて魔力を込めてリイナを拘束している残りの触手目掛けて銃を撃つ。それらも見事命中し、リイナはグリーンローパーから解放された。
「私としたことが……、グリーンローパー相手に油断したよ。マキナちゃん、ありがとう。その銃使えたんだね!」
「うん、どうやら魔力を込めて放つタイプの銃みたい。魔力があるということは私にも魔法が使えるのかな?」
「そうかもしれないね。そうだ!助けてくれたお礼に、魔法の基礎を教えてあげるね」
調査を一時中断し、リイナの魔術師入門の講義が始まった。
「魔法とは想い、想像の力を具現するものなの。そのイメージを確固たるものにするために詠唱をするの。まず、手本を見せるね」
リイナは精神を集中させ、詠唱をした。
「じゃあ今回は火属性でいくよ!灼熱の炎よ、火球となりて、爆ぜろ!」
(ファイアーボール!!)
リイナが詠唱すると火の玉が出現し、前方へ向かって飛んでいく。
「ざっとこんな感じよ。火属性の他の属性だったり、球状にしたり、矢の形にしたり自由度は高いから、ファイアーボールができたら色々試してみてね。」
今度はマキナの番だ。意識を集中し、まずは炎を想像する。次にその炎が、凝縮され球状になることを想像する。そして最後に大きさはリイナに先ほど見せてもらったサイズを想像する。
「灼熱の炎よ、火球となりて、爆ぜろ!」
(ファイアーボール!!)
マキナが唱えたファイアーボールは見事に出現し、前方へ向かって飛んでいった。マキナは自分にも魔法が使えたという嬉しさのあまり、飛び跳ねてしまった。
「マキナちゃん、凄いよ。上手だよ、上手」
「ありがとう。リイナちゃんの教え方が上手だからだよ」
そ、そうかな…とリイナは顔を赤くして、照れくさそうにしていた。マキナはそんなリイナをまたかわいいと思ってしまった。
「さてと・・・・・・、マキナちゃん、そろそろ奥へ行きますか」
マキナたちは森の奥へ進んでいく。奥へ向かっている途中、絶命しているキラーエイプが何頭か発見した。ジーンたちは、この森の途中で見かけたキラーエイプと戦い、奥へ逃げる残りを追って進んでいるようだ。
「マキナちゃん、これって、村を荒らしたキラーエイプだよね?死体はあるのに、ジーンさん達見当たらないね・・・・・・」
「リイナちゃん、多分だけど、キラーエイプは奥へ逃げているんだと思う。逃げきれなかったキラーエイプがこうして、退治されている。村を荒らしたのは10頭くらい。今まで見つけたのは8頭ぐらいだから、それ以上の数がいなければ、そろそろ目的地につきそうだね」
マキナはそろそろ最奥につくのではないかと予感しているが、静かなのが気になった。戦闘を終えているなら帰ってきているだろうし、戦闘中なら複数人で戦っているため、多少は騒がしいと思う。
しばらく歩いていると、残りのキラーエイプの死体を見つけた。ジーンたちは討伐は終えているようだ。しかし、ジーンたちの姿が一向に見当たらない。2人は嫌な予感がして、先ほどよりも慎重に歩みを進めて森の奥へ進むのだった。
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