2話 事件の予感
連続で投稿します。
ある程度書き貯めたものを連投したら、
週1くらいの頻度で更新しようかなと思います。
マキナは村を見渡し、人々を見た。追いかけっこして遊ぶ子供たち、畑の作物に水をあげたり、雑草を抜く人や狩った獲物を捌く人。何もかもが新鮮に思えた。マキナはこの村にたどり着く前にどこで何をしてたのだろうと、記憶を辿るがやはり何も思い出せない。
マキナが物思いにふけていると、リイナから話しかけられた。
「何ぼーっとしてるの?ささ、リイナさんの村案内始めちゃうよー!まずは武器屋いってみよー」
テンション高いリイナに案内されて入った武器屋。やはりマキナには全く馴染みのない店だった。
この店では武器だけでなく防具も扱っており、店頭には、剣や弓など武器や、鎧やローブなどの防具がたくさん陳列されていた。恐らく、この村は食べ物を外部へ提供し、代わりに武器防具を手に入れているのだと思う。
武器屋に入ってずっとマキナは、リイナがちょっと引くくらい武器のラインナップをガン見していたようだ。
「マキナちゃん、何か気になるものでもあった?」
「えっと・・・・・・、気になるものは無かったよ。というかやっぱり置いて無かったなあと」
マキナはリイナに、初めから手にしていた銃を見せた。
「あー、それね!確かに私も見たことないなあ。それってどうやって使うの?」
「私の記憶が確かだったら、ここのトリガーを引くと先端の穴の中から弾が飛び出すの。弓から放つ矢よりも、ものすごいスピードで飛ぶんだよ。引いて飛ばすという意味では、弓と似てるかもしれないね。でも、この弾は魔力を込めないといけないみたいなの」
マキナの銃を見ると、弾を装填する部分が見当たらなかった。
リイナとマキナが武器について会話をしているとき、武器屋のおじさんが興味津々に話しかけてきた。
「リイナちゃんとお嬢ちゃん、こんにちは。もしかして、お嬢ちゃんが村の北のほこらで倒れていたという娘かい?」
「はい、私はマキナといいます。私のこと、村ではすっかり有名になっているんですね。なぜあの場所で倒れていたのか、それまで何をしていたのかは全然わからないんですが・・・・・」
「今は、ほこらで倒れた少女を保護したって話題で持ちきりだよ。マキナちゃんは記憶喪失ってことか。早く元に戻るといいね。俺の名前はディノー。この武器・防具屋の店長さ。基本的に売っているものはよそから買ったものが多いが、時々自分で作ることある。店の奥に置いているのが、そうだな」
「ディノーさん、武器とか作るんですね。初めて知りました!」
リイナが、ものすごく驚いた表情でディノーを見た。
「そりゃ、リイナちゃんは武器いらないだろう?魔術師なんだし。そういえば、マキナちゃんは随分珍しい武器を持っているんだな」
「はい、これなんですが、私もよくわからなくて……。武器屋に行けば、何か記憶を取り戻すヒントが得られるかなって」
マキナは、少しでも自分の記憶を取り戻すヒントが欲しいのか、銃についてディノーに聞いてみた。
「それと似たような武器なら、隣のディアプローという5年前に突如現れたと言われる大陸で見たことあるよ」
「本当ですか!?」
マキナは前のめりになってディノーへ問いかける。
「形はマキナちゃんの銃にそっくりだ。ただ異なる点があって、弾を装填するところはあるんだ。魔術的な銃ではなくて、物理的なものだろう」
やはり、マキナの武器は特殊なものであるようだ。
「ちなみにディアプローっていう大陸はどんなところですか?」
「さっきも言ったように五年前に突如現れたとされる大陸で、それから交易を始めた大陸だよ。ただ、一度行ったときに驚いたのは、ここと文化が大きく違うところかな。建物が高いものばかりだったし、馬みたいな動物で人を運ぶこともなく、鉄の塊のような物で運んでいたよ。マキナちゃんの服装に似た若い人が街で歩いているのを見たこともあるよ」
ディノーの発言は今まで聞いた情報のなかで最も有力だった。ディアプロー大陸にいけばなにかわかるか知れないと、マキナはそう思った。
「もしかしてマキナちゃん、その大陸の住人なのかな。だとしてもあの祠で倒れているのはおかしいよね?うーん、謎が多いなー。海に近いイーノン村の人が大陸の話を知らないってことは、このアンゲラス大陸の他のところの方が近いんじゃないかな?」
「リイナちゃん、その通りだよ。一番近いところは、カーレフという町だよ。国王のいるイムンダスの南東に位置する」
リイナの指摘にディノーは答える。どうやらアンゲラス大陸は東西に長い大陸で、ディアプロー大陸は東にあるカーレフという町からが最も近いらしい。このイーノン村からは馬車で連続で走り続けて、2,3日かかる。仮に海流で流れ着いたとしても丘の上のほこらで倒れてるのは明らかに不自然である。
「そうなんですね。見知らぬ大陸かあ。いってみたい気持ちもあるなー。ディノーさん、長々とお邪魔してすみません。そろそろ帰りますね」
「いやいや、こちらこそ遊びに来てくれてありがとう。またおいで」
マキナとリイナは武器屋を後にした。
「次に案内するのは…… ってこの村は特に無いんだよね。他にあるのは宿屋と畑くらいかな。宿屋は泊まる人は殆どいないけど、村の建物の建設とか修繕の時に外部から業者を雇うの。その時に一日で終わらない工事の場合はその宿で泊まってもらうんだ。次は畑なんだけど…… って何か畑の方何か騒がしいね。行ってみようか」
人だかりが出来ていて、がやがやしている感じに不審に思ったリイナはマキナを連れて、畑の方へ行った。
畑へ着くと、果実が木から落ちていたり、かじられたり、作物の一部が荒らされていた。
「何かあったんですか?」
リイナが村の農家の人に聞くと、
「実は魔物に農作物を持っていかれたんだ。村のみんなで途中まで追いかけたんだけど、どうやら村の東のイレイズの森に逃げていったのがわかった。これから村の狩人集めて狩りに向かう」
「持ち去った魔物はどんな奴だったんですか?」
「凶悪なタイプのエイプだった。さしずめ、キラーエイプだと思う」
「そのキラーエイプってどのくらいの強さなんですか?」
マキナは魔物のことは全くわからないので、名前を言われてもピンとこない。なので強さについて聞いてみることにした。
「この子はもしや祠で保護されたという少女かい? 俺は狩人のジーン。キラーエイプ単体ははそんなに強くない。冒険者ランクFだとしても、ある程度討伐依頼をこなせるようになったら問題ないはずだ」
「そうです、私はマキナといいます。キラーエイプの強さについてはわかりました。でも、狩人の方をたくさん集めてるということは、この作物を荒らしたキラーエイプという魔物が集団で現れたということですか?」
「マキナちゃん、その通りだよ。普段現れるとしても1,2頭くらい。今回は10頭くらい現れたんだ。次、この村に来たのを迎え撃つことも考えんたのだが、農作物しか狙わないという保証はないから、狩人集めて討伐しに行くことにしたんだ。おっと、いつまでものんびりしていられないな。そろそろ行かせてもらうよ」
「ジーンさん、気をつけてねー、あと、魔術師の力が必要ならいつでも呼んでね!」
リイナがそういうと、ジーンはぐっと、親指を立て、腕を振るポーズを決めて、狩人のみんなを引き連れて村を出た。
リイナは魔術師でした。
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