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滅びた地球と、若い星  作者: 武藤夏
1章
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【母と、3人姉弟の団欒】

【母と、3人姉弟の団欒】



「ガリちゃん〜」



 レイフの背中にくっついていたユキが、ガリーナを背後から抱きしめる。


「姉さん」


 ガリーナは微笑を浮かべる。

 2人は仲良しの姉妹だ。


「ガリちゃん、また成長したんじゃない?お胸とか、お尻とか〜」

「ちょっと、姉さん」

「どすけべボディに磨きがかかってきたね〜。向こうで彼氏でもできた?」


 レイフは、この時だけはユキが羨ましくて仕方がなかった。

 確かにガリーナの胸や臀部は大きい。たわわな胸に、安産型の尻。胸と尻を強調するようなきゅっと引き締まっまたウェストを、ユキは無遠慮にべたべたと触る。くすぐったそうに、ガリーナは身をよじる。


「興味がないもの」


 きっぱりとガリーナは否定する。ユキは、にたりとレイフに笑ってみせた。レイフのために確認をしてくれたらしい。



(う···こいつ)



 ユキめ、余計なことを···という気持ちになる。しかし恋人ができていないことを確認できて良かった。


 ガリーナは色恋には全く興味がないが、それでも彼女の美貌に近づく者は年々増えている。弟にしか見られていないレイフにとって、戦々恐々とせざるえない状況だ。


「ほーら。じゃれてないで、そろそろ夕飯にしなぁい?」


 サクラは料理を運んでくる。惑星トナパの香辛料をふんだんに使った料理の香りに、腹の虫が鳴り出す。思わずごくりと喉が鳴ったのは、レイフだけではない。

 3人は構成された席に腰掛ける。サクラも席に料理を並べた後、最後に座った。父の席だけが、空いていた。


「それじゃぁ、まずは滅んでしまった地球に黙祷ね」


 サクラは両手を握りしめ、祈りのポーズを行う。地球戦争終結の記念日には、各家庭が夕飯の際に黙祷をする。子供達も母に倣い、祈りのポーズを行った。

 4人が沈黙する。皆が地球について祈ったのだろう。暫くして、皆が目を開けた。


「次に、ガリーナのお祝いね」


 地球戦争終結記念日を何とも考えていない訳ではないが、レイフとユキは弾けるように笑った。


「ガリーナちゃん、おめでとう!」

「ガリちゃん、おめでとう!良かったねぇ〜」


 水を入れられたグラスを手に持ち、ガリーナが持っているグラスに軽くぶつける。グラスも物体がない、粒子で構成された素材だがーーかつんと音を立てた。


「おめでとう」


 サクラも後からガリーナのグラスにグラスをぶつけ、微笑んだ。


「ありがとう」


 ガリーナは嬉しそうに微笑み、グラスの水を飲んだ。赤い唇が緩やかに微笑むのを見て、レイフは自らの胸がときめくのを感じた。


(可愛いなぁ、本当に)


 ガリーナは、本当に綺麗で、たまに笑う顔も可愛らしい。弟だからこそ近い距離にいられるのだが、近すぎる距離感にやきもきした気分にもなる。


「ちなみにさぁ、ガリちゃんってどういう研究で賞を受賞したの〜?何度説明されてもよくわかんなくって···わかりやすーく教えてくれない?」

「あ、オレも思った。話してることが頭良すぎて、何で受賞したかわかんなかった」


 自分とユキには、まるでガリーナの研究内容が理解できなかった。彼女が生物学を研究していたのは知っていたが、知っているのはその程度だ。


「惑星マージェに住むリビディドコレクトの幼体の発生条件、懐柔条件の研究。リビディドコレクトの幼体は長年研究されてたの。けど生態系がわからなかったから、生み出す条件を見つけ出したよ」

「···んー、イマイチぴんとこない〜」


 ユキと全く同意見だ。勉強はレイフもユキも得意ではない。


「今度見せてもらえばぁ?」

「そうね···そのほうが2人は納得するかな」


 サクラだけは理解しているらしい。理解できずに唸るレイヤとユキを横目に、ガリーナは「ん」と嬉しそうに声を上げた。


「レイフの取ったペスジェーナ、美味しい」


 ガリーナは早速ペスジェーナのソテーを口に入れていた。やや黒い肝は、ソテーにされていた。皿には、惑星トナパで取れる赤い木の実が散らされている。


 レイフも口にすると、ねっとりとしたとろけた味わいが口いっぱいに広がる。散らされた赤い木の実がかりかりとしていて口触りが楽しく感じられる。


 ペスジェーナの肝も美味しいのだが、素材の味付けを生かすように味付けしたのはサクラだ。


「美味しいよ、母さん」

「ありがとぉ」

「いやー、寮生活でこんなの食べれないからさぁ、嬉しいよ」


 寮生活になったレイフにとって、母の料理はありがたい。軍学校の機械人形が出してくれる料理も勿論美味しいが、やはり簡易的な料理が多いからだろうか。栄養は保証されているが、母の味には敵うわけがない。


「そう言ってもらえると、嬉しいわねぇ」


 サクラは可愛らしく笑う。


「ん?」


 家族4人で夕飯を食べながら談笑していると、レイフは自分のラルが目の端で通知を表示したことに気がついた。


 ラルの通知は所有者にしか見えない。表示された通知には、緊急連絡と文字が表示されている。


「あれ」


 ユキも、ガリーナも不思議そうに目を瞬かせる。自らの指輪のラルと、空中を見る。きっと彼女等にもラルの通知が見えているのだろう。



「『宇宙連合より緊急の連絡です』って」



 機械人形であるサクラは、朗々とした口調で言った。



次の更新は、明日24日(日)の21時予定です。

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