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The Math Book  作者: Wam
9/94

Z先生の癖

この頃からZ先生の癖も観察する様になる。いや、こう表現するとまるでストーカーなので誤解を解こう。正確に言えば授業の回数が増えたので毎回Z先生の行動を自然と見ざるを得なかったのだ。

 

 先生は良く手を組んで手遊びをする。といっても幼い子供の様に手でワニを作ったりカエルを作ったりするということはしない。単に手を祈る様な形に組んだり、時には手を鳴らしたりしている。必死で問題を解いているのに手をパキパキさせる音は聞き慣れなかった私としてはちょっと気持ちが悪くて耳障りだった。でもそんなことを言ったらZ先生が可哀想だったので何も言わずに黙々と問題を解いていた。


  

 だいぶ昔、小学生の頃ではあるがクラスに手をパキパキ鳴らすことができる子がいた。彼に手の鳴らし方を教わってパキパキできる様になろうと思ったがなかなか私にはハードなことだった。そして出来ずじまいで小学校の卒業を迎えてしまった記憶がある。もう中学生だし、流石にまた教われば手をパキパキできる様になるかなって思った。

 

 だからある時、いつもの様にZ先生が手をパキパキしていたので私は問題を解く手を止め、Z先生に話しかけてみた。

「あの〜先生?」

「ん?」

「どうして手をパキパキならせるんですか?」

「俺?ちっちゃい時からやってるもん」

「手を鳴らせるってかっこいいですよね」

「え?そうか?普通にやり方教われば・・・習得すればっていうのかなあ、誰でもいけると思うよ。」

「私、小学校の頃に友達に教わったんですけど、無理でした。私、馬鹿なんですかね?」

「うん、そうだと思うよ」

否定するのかと思いきや、どストレートに言われてしまった。

「直球にいうの酷くないですか?」

「ん?酷くないと思うよ、別に。」

Z先生はそう冷たく言い放ったが顔は少しにやけていた。私も思いっきり苦笑いの表情を見せた。

「先生、パキパキのやり方教えて頂けませんか?」

当時まだ綺麗な敬語を使えていた私はそう丁寧にお願いした。

「あ、いいよ」

さっきのにやけ顔はどこやら急に真顔になるZ先生。

「こうして、こうして、こう」

手を組んで見せてもらう。Z先生はもうすでに慣れているので簡単にパキパキと音を鳴らすことに成功していた。私もZ先生の真似をしてシャーペンを手から離し、手を組んだ。

「違う、こう」

「こうですか?」

「うん、そう。で、鳴らしてみ」

必死で手を鳴らそうとするが手に痛みが走った。

「痛っ」

「え?別に痛くないよ。普通にできるって」

「いや、骨と骨がぼきぼきして痛いです。しかも音鳴らないし。先生の手、どうかしてますよ」

「いや、どうもしてないって。俺以外の手パキパキできる奴どうなるんだよ」

「おかしいですよ」

「おかしくないって、あなたがおかしいだけよ」


 結局手をパキパキさせるという夢は叶わなかった。今練習すればできるかもしれないがもう二年以上も経っているので手の組み方を忘れてしまった。これで私の不器用さをおわかり頂けただろうか?手の鳴らし方さえ理解出来ないほど私という人間は異常な不器用さの塊なのだ。

 あれから何回もZ先生は暇になると手をパキパキさせていた。


 そしてZ先生にもう一つ気になることがあった。それは毎回、問題解説をして私が理解したかを確認する時に「おけい?(OKAY)」ということだ。しかも真顔で「おけい?」というので常に笑ってしまうそうになった。たまに作り笑いをして私に目を合わせてくることがあったがそれもまたおかしくて私まで笑いそうになった。

 しかもこの「おけい?」はとあるテレビ番組のタレントも使っていたのだ。使い方は少し違ったが。そのため、Z先生が「おけい?」というと毎回その芸人と重ね合わせてしまい、笑いを堪えていた。あまりに笑いを堪えることに必死で今までZ先生が解説してくれたこと全てが一気に吹き飛んでしまうことも多々あった。

 しかし、「おけい?」と言っていた時期もほんの最初の時だけで時が経つにつれてだんだん言わなくなり、ついに二度と口にしなくなった。


 もう今は会えないが、当時のことを思い出すとまた「おけい?」と言ってほしいと思うことがある。

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