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The Math Book  作者: Wam
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変なドアの譲り合い

確かにこの頃にはZ先生と一緒にいることにも慣れてきたが、同時にZ先生と一緒にいると苦しさも覚えた。「嫌いだから」とか「怖いから」とかいうネガティブな理由ではない。でもなんて表現すればいいのだろう。思春期の感情はかなり複雑で意味がわからない。今の自分にも理解不能。きっとZ先生のことが大好きだったからこそ、余計に複雑になってしまったのだろう。当時の日記にはZ先生と一緒にいることの苦しさが綴られていた。


 授業をしている間、私は何度も塾から逃げ出したくなった。

 毎日、Z先生に会いたいって思うのに会うと逃げ出したくなる。

 なーんてこった。矛盾してるじゃないか。Z先生のこと、大好きなはずなのに、人として。この気持ちは一体、何なんだ。


 事実、当時の私はZ先生に会うまでずっとZ先生のことばかり考えて会いたいって思いで潰れそうなのに、いざ会うと逃げたいという気持ちでいっぱいになる、という不可解な現象が起きていた。Z先生を見ているだけで胸が苦しくなってしまっていた。Z先生に申し訳ないっていうか、なんかZ先生に対する罪悪感を覚えていた。


 だからこの日もZ先生の授業が終わった時、真っ直ぐに塾の玄関の扉へと向かった。Z先生にお礼を言ってすぐに。だって、それくらいZ先生と一緒にいることが辛かったから。


 先生、ごめん!私、先生のことずっと考えちゃうんだ!

 なんで?・・・なんで!?

 先生に迷惑だし、知られたら引かれちゃう!


 私は早足で受付を済ませるとドアに扉に手をかけ、思いっきり押した・・・


 の、だが。


 ちょうど同じタイミングに高校生くらいの女の子が塾に入ろうと扉を引いた所だった。


 私は慌てて後ろへ引き下がった。女の子も扉を引いたまま、後ろへ後退りした。


「す、すいません!どうぞお先に!」


 私は後ろへと後退りを続けながら彼女に塾に入る様に促した。


「い、いや、お先にどうぞ!」


 女の子もかなり遠慮勝ちに私が先に塾から出る様にと譲ってくれる。でも自分から女の子に道を譲った分、ここで折れる訳にもいかないのだ。


「いえいえいえいえいえ」


「いやいやいやいやいや」


 私と彼女はしばらく譲り合いへと発展した。


 どうすることも出来ずに後ろを振り返って見ると、受付に居た先生たちはおかしそうにその様子を眺めていた。Z先生もその場にいておかしそうに笑っていた。あと、塾長もいた。



「どうしたの?2人とも」


 1人の先生に声をかけられた。


 が、私は女の子を先に通すことに夢中でその先生の問いに答えることが出来なかった。


「お願いします!先に言って下さい!」


 最終手段として、私は女の子に頭を下げた。

 彼女は戸惑った笑みを見せながらも、ついに折れてくれた。


「じゃ、じゃあ、お先に・・・ごめんなさい!」


 女の子が先に塾に入った直後、私も塾の外へ出た。


「いえいえこちらこそ!ごめんなさい!」


 私の声が響いてしまった。くすくすと笑う声が、私が出て行こうとした瞬間、こだました。

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