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The Math Book  作者: Wam
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最初と変わらなかった模擬の結果

 E検が終わってから1週間。早くも9月の末に受けた模擬の結果が帰ってきた。

 周りに知っている人がいないか確認をしてから、結果を電車の中でそっと開けてみる。


 なんだ。変わってないじゃん、前の前と。まあ、前回よりも上がったってことだけど。


 結果を開けることにさえ緊張を覚えていた私は結果を見るなり、一気に力が抜けた。


 ってことは、E検の結果見る時はもっと緊張しちゃうかもなー。だって、模擬でこんなに緊張しちゃうんだもん。


 でもなー、Z先生とA先生の反応が怖いなー。きっと、Z先生がっかりしちゃうだろうな、模擬の結果見て。


 いつもの様にいろいろ考えているとあっという間にZ先生の所へついてしまうものだ。月は10月。塾の扉を開ける直前、何だか照れくさくなって、ふと大好きな空の方を覗いてみると、青々とした秋晴れの空だった。


「熱海の模擬、帰ってきたー?」


 教室からZ先生が、廊下を渡っている私の方へ顔を覗かせた。その姿は、なんかムーミンを想像させて可愛らしい。挨拶よりも先に、模擬について早速聞かれても憎めない。


「どうでしょう?」


 私はちょっとZ先生に意地悪く答えてみた。


「絶対返ってきてるっしょ?」


「えー、どうでしょー?」


「あ、そーだ、E検どうだった?」


 質問が模擬の結果からE検に変わった。


「やばかったです」


「難しかった?」


「はい」


 やりがいがあった、なんて恥ずかしいし、何か高慢な感じがしてとても言えなかった。


「まあー、そうだよな」


「はい」


「で?」


「はい」


「模擬は?」


「え?」


「え?」


 私が何それ?という顔をするとZ先生も何それ?という表情で返してきた。


「何のことでしょうか?」


「だから模擬だって!」


「あー、模擬ですね、はい」


 自覚しながらもわざととぼけて見せた。Z先生はというと早く模擬の結果が見たい様でうずうずしている様子だった。数学のテキストと裏紙の入ったファイル、筆記用具を出し、模擬の結果はわざとZ先生が見える位置に裏紙のファイルの中に挟んだ。


「はい、早く見せて」


「えー」


「はーやーく」


「見せるの恥ずかしいです。やばかったんで」


「えー、恥ずかしい?どこか?」


「だから模擬の結果、やばかったんですって」


「いや、やばくないから大丈夫だって!」


「えー、でもー」


「はーーーやーーーくーーーしーーーてーーー」


「・・・」


「早くーーー!」


「うわああっ!!」


 あまりにも私が渋るのでZ先生はとうとう私の椅子を揺らし始めた。

 私は、驚いて思わず悲鳴をあげてしまった。


「ちょっ・・・ちょっと待って下さい!一回、見てもいいですか?自分で」


「ああ、いいよ」


 Z先生に見られない様に結果を隠しながら、一旦自分で結果を見つめ直した。


「あ、結果見えてんじゃん。理科の偏差値38」


「きゃあああっ!見ないで下さいよ、先生!」

 

 Z先生は首を伸ばして私の模擬の結果を見ようとしていた。私は再び悲鳴をあげ、笑いながら模擬の結果をファイルに戻した。



「えーーーっ、ちょっと!俺、結果全然見てないんだけど」


「先生に見せるなんて一言も言ってませんよ」


「じゃあいいもん。A先生に見せてもらうから」


「っ!!!」


 A先生に模擬の結果を見せるのは正直怖かった。最初に模擬の結果を知ってもらうのは、Z先生がいい。安心感のせいか、私はそんなこだわりがあった。


 流石に、やり過ぎだな、私。そろそろ模擬の結果、見せてあげよ、Z先生に。


 ようやく私はZ先生に模擬の結果を渡してあげた。


「あ、見せてくれるの?」


「はい、なんかA先生に見せるの、ちょっと怖いんで」


「なんで怖いの?」


「なんとなく」


「ああ、そう」


 Z先生は食い入る様に模擬の結果を見つけた。


「前々回と一緒なんですよー、3教科の偏差値」


 軽く伸びをしながら黙っているZ先生に声をかけた。


「えー、そうだっけ?」


「じゃあ前の前の模擬の結果、見てみて下さい」


 私に言われた通り、Z先生は私のバインダーから過去にとってあった熱海の模擬の記録を見た。


「あ、ほんとだ。一緒だ」



「なんか、上がるか下がるかなんですけど」


「まあ、模擬ってそういうものだからね。上げるのって難しいよ。俺も確かそんなんだった」


「そう言えば先生って中学の時、熱海の模擬どんな感じだったんですか?」


「俺?」


「はい」


「俺はねえ・・・あんま覚えてないけど、3教科で偏差値60超えてたかな・・・?」



「あったまいいですねー!」


 心の底からZ先生のことがすごいと思った。さすが先生!


「だろ?」


ドヤ顔で返すZ先生。


「先生、それ普通自分で言いますか?」


 私が引いた目で言うと、Z先生は顔をくしゃっとさせて笑っていた。


「でも、今回、数学上がったよね」


 話題をずらそうとするZ先生。


「はい。しかも前々回と同じ偏差値に戻りました」


「え?・・・あー!そーゆーことか!・・・あー、ねー」


 前々回の模擬の結果とこの時の模擬の結果を見比べたZ先生は確認した、私の言っていることに納得した。


「しかも英語がどんどん下がってるんですけど」


「ほんとだ」


 1番最初は70、次に68、今回は65。英語の偏差値はどんどん下がっていた。


「でも、まあ、1番最初はえぐかったからねえ」


 Z先生はさりげなくフォローくれた。


「あれって高かったんですか?」


「うん、かなりね」


 真顔で答えるZ先生。その真剣な表情から冗談ではなく本気で言ってることが伝わり、私は嬉しくなった。


「でも、今回も結構高いと思うよ・・・じゃ、授業始めよっか」


「はい、どこからですか?」


「今日は、二次関数の復習からかな」


「はーい」


 あとは真面目に授業を受けた。ふざける時はふざけるけど、真面目な時は真面目で。それが私とZ先生の関係だった。私たちはあくまで「生徒と先生」っていう関係だっただから。

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