表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Math Book  作者: Wam
31/94

夏期講習の日程表

 夏期講習が始まる日が近づいた。

 

 月は7月。二月に塾に入ってから1日でちょうど5ヶ月となった。


 結局よくわからないまま、夏期講習の申込書に数学と国語、両方を提出していた。

最初は国語の授業も取り始めるのにも嫌な顔をしていた父。それなのに父はなぜか無言で数学と国語の夏期講習の申込書に自分のサインを書いていた。まったく私の父はよくわからない人である。




 そして授業中に夏期講習も申込書を書いたことを思い出し、声をあげた。


「そういえば先生」


「んー?」


 いつもの呑気過ぎる返事。


「夏期講習の申込書持ってきました」


「おおー」


「はい」


「で」


「はい」


「出して」


「今出してるじゃないですか」

 私は慌ててリュックのチャックを開け、父に書いてもらった申込用紙を手で探る。


「はーーーやーーーく、はーーーやーーーく」


 また手を叩いて急かすZ先生。


「急かさないで下さい、先生!じゃないと出しませんよ」


「はい」


 こう言う時にZ先生も素直になる。私が夏期講習の申込書を出すまで、静かに待っていてくれた。


「はい、これ。お願いします」


 ようやく見つけた申込書を両手で渡すと、Z先生は


「はーい」


 と言って片手で受け取った。


「先生、こういうのって両手で受け取るんですよ」


 と当時、礼儀にうるさかった私が注意をするとめんどくさそうに


「はい、ごめんなさい」


 と謝罪した。


 ・・・まあ、Z先生だから許せるけど。


 夏期講習の申込書をざっと見つめるZ先生。


「へえー国語も受けることにしたんだ」


「え?受けないって思ったんですか?」


 と私が尋ねると、申込用紙から目を離さないまま、


「いや、別に」


 とだけ返された。まったくよくわからない先生である。


 そしてしばらく何かを確認しているようだったが、そのまま立ち去ってしまった。




 

 Z先生に夏期講習の申込書を渡して早二週間。

 夏期講習の日程表が渡された。


 「はい、これ」


といきなりぺらぺらの紙が渡された。


「ありがとうございます」


と言って恐る恐るそのぺらぺらの紙を受け取ると、そこには夏期講習の日程が書かれていた。


「夏期講習の日程。都合が悪くなったらいつでも言ってね」


 この先生、春期講習の時も同じことを言っていた様な・・・。


 夏期講習の日程がずっと気になっていた私は早速目を通してみた。


 あれ?意外と少ないんだな、夏期講習にしては。

 授業数は確かに春期講習の2倍はありそうな数だったが、夏期講習の期間は同様に春期講習の2倍以上の日数がある。

 ひょっとして、春期講習よりも余裕?


「国語の先生はまだ確定じゃないから後で決めようね」


 あ。言われてみれば、夏期講習では国語も受けるんだった。

 国語の存在を完全に忘れていた私。新しく国語の先生に出会うんだなと思うとぞくぞくと緊張が襲ってきた。


 ここに書いてあるのは数学の授業だけ・・・。


 ってことは・・・



 え?


 春期講習もっと忙しくなっちゃうってこと!?

 嬉しいけど、でもZ先生じゃないのかあ。


 春期講習の時と同じ様にZ先生と一緒にいることができる時間が増えるのは歓迎だったが、国語は別の先生になる予定だったので少しがっかりしていた。



「明後日から夏期講習だから、そこんとこよろしく」


「明後日!?」


 Z先生の言葉に私は驚愕した。

 いや、そんなはずはない。このタイミングで日程表を渡したのだからあと1、2週間は余裕があるでしょ。


「先生、冗談ですよね?」


「いや、冗談じゃないよ。日程表見てみ」



「今日って何日ですか?」


「7月13日」


 すぐに日程表を見直す。


「で、最初の授業は15日、と。っっっっっっってええええええ!?本当だ!」


 Z先生の言っていることは本当だった。

 時計は13日を指し、日程表には最初の授業の日程は15日と記載されていた。


「でしょ?冗談じゃないじゃん」


 「ほらあ」と言わんばかりに疑った私のことを責めるZ先生。



「い、いや先生!それにしても出すの遅くないですか?」


「いや、遅くないから。これ普通」


「どうかしてますよ!」


「そっちもね!」


「うるさいです!」


 ちょっとした小言でまた私たちは言い合いを始めた。



 夏期講習が始まったら、また他の生徒がきてZ先生と楽しく話せなくなっちゃうんだろうなあ。そう思うとしばらく通常授業でなくなってしまうことが寂しくなった。


 

 ずっと私とZ先生、2人だけで授業を受けていたいのに。


 


 明後日から始まる夏期講習。

 

 この夏は「受験生」として戦いの夏になりそうだ。

 

 私もお姉ちゃんと同じ様に毎日弁当持って自習室にいかなくちゃなあ。


 受験は戦いだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ