試作品
家に帰ってくると、俺は調理の続きを始めた。
「先輩、この先、ちょっとエグいんで見ない方がいいかもです」
「……マジでやんの?」
俺は、首を絞めて息絶えたハトを取り出し、包丁で切れ目を入れた。
そこに人差し指を入れ、皮を剥ぎ取る。
ツルツルになったむき出しの肉を手際よく捌き、もも肉、胸肉、ささみ、せせりと部位ごとにバラす。
綺麗に骨と肉とに分かれると、次にそれらをシルバーのボウルに入れ、ヨーグルトを加える。
ヨーグルトには臭みを抑える効果がある。
それをしばらく放置して馴染ませると、次にフライパンを取り出し、タマネギのみじん切り、カレー粉、ガラムマサラ、グローブなどを加え、パイナップルを入れる。
「パイナップル?」
先輩が不思議そうに覗き込む。
「普通はトマトですけど、甘みと酸味を出したいので」
これはフードプロセッサーで筋が残らないよう粉々にする。
バターを引いたフライパンに説明した食材を投入し、牛乳を入れてじっくり炒める。
途中、水を加えて更に味を濃縮させ、良い感じの所で鶏肉を入れる。
それにしても、やはりインドカレーというものは手前がかかる料理だ。
(これを毎日提供するとなると、これからやる一手間が大事だ)
カレーの水分が飛び、旨みを全て閉じ込めたルーが残れば完成だが、まだもう一工程残っている。
俺は、冷蔵庫から更に乗せたパンの生地を取り出し、完成したルーを包み込んだ。
「おまっ、それって……」
「そうです。 カレーパン、です」
インドカレーは先ほど言った通り、非常に手間がかかる。
もし売り切る事が出来なければ一気に赤字に陥る為、何としてでも売り切る必要がある。
そこで俺は、カレーをパンに包んでカレーパンにし、店にわざわざ来なくても、届けられるように工夫した。
「コロナで店に来れないのなら、届ければいい。 名付けて、幸せを包むカレーパンお届け大作戦だ」
「作戦名なが~」
作ったばかりのカレーパンを手に、俺はカリッカリーにやって来た。
店には相変わらず人はいない。
代わりに店長がスマホをいじってテーブルに突っ伏している。
「また来ましたよ」
「……あん?」