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商店街

「ほら、着て見ろよ」


「……」


 簡単に言うが、服を着るのとは訳が違うだろう。

グニャグニャになった先輩の体をつまんで持ち上げる。


(……やるしかないか)


 俺は、手袋をはめるみたいにして先輩の体の中に自分の魂を突っ込んだ。

右手、左手、右足、左足。


(ウェットスーツを着るのと大差ないな)


 若干タバコ臭いものの、それ以外、特別違和感はない。

が、起きあがると前後が逆だ。

要するに、服を後ろ前反対に着ているのと同じで、俺はその場で回転して前後を合わせた。

これで良し。

辺りを見回し、洗面所へと向かう。


(……驚いたな)


 鏡の前に立つと、さっきまで目の前にいた男がそこにいる。

俺は、蓄えたあごひげをさすった。


(清潔感ゼロだな)


 俺はシェービングクリームを手に取り、泡を顔に塗りたくる。

今度はひげ剃りを手にして、刃をあごにあてがった。

そのまま、スライドして金に染め上げられたひげを剃ると、洗面台にひげの塊がボトと落ちる。


「てめっ!」


 先輩が叫んで手首を押さえようとするも、すり抜ける。

ひげをすべて剃り終えると、少しは見てくれがマシになったか。


(髪の色は今は仕方ないか。 ……髪も短めがいいな)


 俺は、部屋からハサミを拝借して、その場でザクザクと切り始めた。


「おい、いい加減にしろって!」


 そんな先輩のセリフを聞き流し、頭を短髪に仕上げる。

クローゼットを開け、趣味の悪い服を押しのけると、奥の方にスーツを見つけた。

幸い、クリーニングに出してから一度も着ていないらしく、俺は着ている服を脱ぎ捨て、それを着込む。

ネクタイを締めると、俺は外へと出た。









 アパートの階段を降りて、見慣れぬ町を適当に進むと、駅前と思しき場所にやって来た。


「この商店街のどこかですよね」


「……」


 俺が勝手にイメチェンしたことに腹を立てたのか、先輩はほとんど口を聞かない。

だが、この商店街のどこかにカリッカリーがあるのは確かだろう。

ところが、商店街は閑散としていて、ほとんどの店がシャッターを下ろしていた。

震災の影響か、ウイルスの影響か、もしくは両方。

商店街を進み、「カリッカリー」の看板を探す。


「先輩、見当たらないですけど」


「アレだよ」


 さっきから、不貞腐れて喋らなくなった先輩が、指を差した。

その先にあるのは九十九つくもカレー、と書かれた看板。


「……そ、そういうことか」


 木の看板はひび割れ、元々はカリッカリー、と書かれた文字に何本か線が入ってしまっている。

俺は、九十九カレーもとい、カリッカリーの店内へと足を踏み入れた。


 

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