エンディング
現れたのはガタイのいい自衛隊員。
みんなで陰で「シュワちゃん」、と呼んでいた男だ。
シュワちゃんは腕を後ろに組み、辺りを見回し、言った。
「まだ眠りについているものもいるだろうが、じきに目を覚ますだろう。 今起きているものが伝えるようにしてくれ。 これから3時間後、11時にこのホテルを下った駐屯地の事務所にて夢に見た内容をレポートに書いて提出してもらう」
俺はそのセリフを聞きながらぼんやりと、やはりこっちが現実なのか、と思い始めていた。
「レポートを書き終えた者から解散とする。 とにかく、みんな、ご苦労だった」
イカツイ体が90℃に折れ曲がり、俺たちに向かって礼をした。
それから俺、武蔵さん、後から目を覚ました豚さんの3人は山を下りた。
他にも男女が2人いたハズだが、彼らはシュミレーターを途中でリタイアしたとの事だ。
山を下りる途中、俺たち3人は夢の話に文字通り夢中だった。
武蔵さんは序盤でまさかの死体となり、魂で漂う羽目になったという。
その状態で俺たちの後を追い、まさかの豚さんに食べられる、という結末を迎えた。
「あそこで豚さんに食べられるとは…… だから、説教してやりましたよ」
武蔵さんはその後、豚さんの中に現れて、何故俺を助けなかったのかと説教したらしい。
豚さんは背中を丸めて、すみません…… と申し訳無さそうにしていた。
事務所についてから、俺たちは長机で横並びになり、隊員から受け取った用紙に夢の内容を書き綴っていた。
が、そこでようやく、あの出来事が夢だったのだと思い知らされた。
(……断片的にしか思い出せないな)
その時はリアルに感じていた出来事が、モヤがかかったように思い出せない。
しかし、それが逆に安堵させる。
あれは間違い無く、夢だった。
AIが作り出した最悪の未来だったんだ。
よくよく考えてみれば、そうだ。
魂が動き回ったり、普通に考えれば分かることだが、夢の中ではその出来事を信じてしまう。
だが、少し引っかかる部分がある。
(夢で死んだ場合、魂はその場に残る。 武蔵さんはそう言っていた。 だが、俺は……)
俺の魂は狩野先輩によって呼び出された。
狩野先輩はIT企業に勤めていた。
もしかしたら、AIの悪夢の続きを俺に体験させるため、わざわざシュミレーターにハッキングして、魂になった俺を復活させたのだろうか。
(インスタグ○ムのフォロワーに先輩が紛れていれば、出来なくはないな)
俺が自衛隊の訓練に参加することはそれを見れば分かる。
確か、仕事の時に教えてもらった番号がまだスマホに残っているハズだ。
……今度、気が向いたら連絡してみるか。
レポートを書き終えると、外には武蔵さんと豚さんが俺のことを待っていてくれた。
「これからご飯でも行きませんか」
「……いいですね!」
訓練を最後まで終えた俺たち3人の間には、見えない強い絆のようなものが芽生えている、そんな気がした。
シュミレーター結果報告 氏名、堀ノ内猿彦
シミュレーションの内容が夢だと分かり、私は心底安堵した。
夢の中で何度、過去に戻れたら、と思ったことか。
手遅れになってしまった未来。
あの時、ああしていれば、と誰もが思うだろう。
もし仮に、そんな未来が訪れようとした場合、私は私にこう言う。
「本当に最悪な未来になる前に、今から行動しろ」、と。
おわり
ここまで読んで下さった方がいたら、ありがとうございました!




