表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツンデレ治療師は軽やかに弟子と踊る(タイトル詐欺)~周りは二人をくっつけたい~   作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/76

それは、つかの間の休憩でした

 食堂に行くと、オグウェノとベレンが席に座っていた。イディは二人の背後に立っている。

 オグウェノは立ち上がり、笑顔でカイを迎えた。


「ようこそ、ケリーマ王国の王都へ。本来なら女王が挨拶をするべきなのだが、なにぶん忙しくてな」


「仕方ない。世界レベルでの異変だからな」


 クリスがカイを睨む。


「知らないと、言ってなかったか?」


「ほとんどって言っただろ? 神の加護が必要な魔法が使えなくなった、というのは聞いた。だが、何故使えなくなったのか、とかは知らないぞ」


「……そうか」


 クリスが近くの席に座る。


「金獅子殿は、こちらへ」


「あぁ」


 カイが席に座ると、使用人たちが料理を運んできた。


「で、これからどうする予定だ? いつ出立する?」


「第三皇子からは、即連れて帰って来いって言われてるからな。この後、すぐにでも出発したいのだが……」


 カイがクリスに確認すると、平然と頷いた。


「私はいつでも出発できる」


「あ、あの、一つお聞きしたいのですが……」


 緊張した様子のベレンに、カイが笑顔で応える。


「どうかしたか?」


「セルシティは、私について何か言っていましたか? 戻って来いとか、来なくていいとか……」


「いや、特には何も聞いてない」


「そう……ですか」


 ベレンが横目でイディに視線を向ける。それだけで二人の関係をカイは見抜いた。意地悪くニヤリと笑う。


「姫さんは残るか? 第三皇子には上手く言っとくぞ」


「えっ!? でも、その……」


 ベレンが恥ずかしそうに頬を染めて軽く俯く。クリスが容赦なく言った。


「帰るぞ」


「えっ?」


「国の緊急事態だ。ここにいても迷惑になる」


「そう……ですよね」


 ベレンが目に見えて沈む。クリスが平然と言葉を続けた。


「オグウェノ、イディには一緒に来てもらう」


「「「「「はっ!?」」」」」


 その場にいた全員が驚きの声を上げる。


「女王から許可は得ている」


「ど、どういうことだ!?」


 驚くオグウェノにクリスが説明をする。


「ケリーマ王国は、神の加護が必要な魔法が使えなくなっても、女王の手腕で安定している。だが、こちらは違う。混乱は必須だ。だが、セルティはその混乱に乗じて、改革を行うだろう。その時、ケリーマ王国や他国の政治を参考にするだろうが、情報が少ない。だから、オグウェノに手助けを頼みたい。イディはオグウェノの護衛だ」


 全員がポカンとした顔でクリスに注目する。


「いつの間に、そんな話を……」


「昨日、女王と話した時にな。女王は賛成してくれた。そもそも、こちらの国で内乱や、戦が起きれば、ケリーマ王国にも影響が出る。なるべく余計な争いは、起こしたくないのだろう」


「と、いうことは……」


 ベレンが嬉しそうにイディを見る。イディもこっそりと視線をベレンに向けた。


 クリスがオグウェノに訊ねる。


「来てもらえるか?」


「行かないと、イディとお姫さんに恨まれそうだ」


 イディとベレンが同時に声を上げる。


「王子っ!」


「そんなことっ!」


 そんな二人にクリスが微笑む。


「では、決まりだな。急で悪いが、昼から出発できるか?」


「女王からいつでも旅立てるようにしとけ、と言われていたからな。大丈夫だ」


「聞いてなかったのか?」


「詳しいことは言わないのが女王だ」


「母親なのに、か?」


「そこは、あまり関係ないな」


「そうか。苦労してそうだな」


「まあな」


 カイが言葉を挟む。


「昼食の後、カリストとセスナのチェックをする。それが終わったら即出発するとしよう」


「わかった」


 こうして昼食を終えると、それぞれ移動のために荷物を運んだ。




 真昼間の炎天下。

 地元の民は昼休憩の時間帯で、屋内か涼しい木陰で休んでいる。だがクリスたちは、河川にあるセスナに荷物を搬入していた。その隣には飛空艇がある。


 カイは荷物の山を前にして唸った。


「そもそも予定より二人増えているからな。重量を考えると荷物は最低限にしてくれ」


「せっかく買いましたのに、置いていかないといけませんの?」


「いや、買いすぎだろ。何を買ったんだ?」


 ベレンの背後には、山積みになった大小の箱がある。


「ケリーマ王国の香や布や宝石ですわ。他にも……」


「却下」


「どうしてですの!?」


「必要じゃないだろ!」


「私には必要です!」


 カイとベレンが睨み合う。荷物を運んでいたイディが、二人の間で巨体をオロオロさせている。

 飛空艇側で指示を出していたオグウェノが声をかけた。


「あとから飛空艇で荷物を運ぶ。すぐに必要な物以外は、飛空艇(こっち)に乗せろ」


「なら、全部飛空艇に乗せてくださいな」


「やっぱり必要じゃねぇだろ!」


「そんなことありませんわ!」


 カイとベレンの言い争いが続く中、イディがいそいそと箱を飛空艇の方へ移動させる。


 クリスも荷物の内容についてラミラと話していた。


「いつの間にこんなに買ったんだ? これは何が入っている?」


「こちらには香辛料が入っています。こちらは茶葉です。あとは……」


「いや、そんなにいらないだろ」


「何を言いますか!? これはオークニーでは滅多に手に入らない品物ばかりです! 見かけても、高額でなかなか買えません。この布も、これで服を仕立てたら夏が過ごしやすくなります。あとは屋敷の者たちに……」


「あぁ、子どもたちへの菓子も忘れずにな」


「はい。ちゃんと買っております」


「それなら……」


 クリスの足元がふらつく。


「クリス様!?」


「うっ……」


 クリスが頭を押さえて倒れかける。背後からルドの腕が伸びて抱きとめた。


「師匠? どうしました?」


「だっ、大丈夫だ。なんでもない」


 耳元で声をかけられ、クリスが慌てる。急いで立ち上がろうとするが、力が入らない。ルドがクリスの額に手を当てる。


 冷たい……気持ちいい……


 ぼんやりとそんなことを考えていると、ルドの表情が険しくなった。


「熱がたまってますね。師匠を少し休ませますので、あとはお願いします」


「わかりました。お任せください」


 ラミラが良い笑顔で返事をする。ルドはクリスを横抱きにすると歩きだした。


「は? へ!? おい! 私は大丈夫だ!」


「大丈夫ではありませんよ。軽い熱中症になりかけています」


「いや、だが……おい! 勝手に移動するな!」


 暴れるクリスをもろともせず、ルドが日陰へと移動する。建物の影で人通りもない。吹き抜ける少し湿った風が心地いい。


 ルドはクリスを抱えたまま腰を下ろした。そして、クリスを地面に寝かせると、真っ直ぐ伸ばした左足の太ももの上に、クリスの頭を置いた。いわゆる膝枕状態だ。

 右足は膝を曲げて、いざという時はすぐに動ける姿勢になる。


「ちょっ、まっ、私は問題な……」


「はい、はい」


 ルドが取り出した布を、魔法で出した水で濡らし、クリスの額に置いた。次に茶が入った筒を出す。


「飲めそうですか?」


「……あぁ」


 ルドが茶をコップに移してクリスに渡す。クリスは体を起こそうとするが、うまく力が入らない。ルドに支えられ、少しだけ体を起こして、茶を飲んだ。


「……はぁ。まさか、こんなに動けなくなっていたとは……情けないな」


「軽い熱中症と、疲れがたまっているんですよ。出発まで休んでください」


「だが……」


 ごねるクリスにルドが険しい顔をする。


「体調管理も大切です。動けなければ、自分が抱えて移動しますので、それはそれでいいですが」


「休む」


「はい、お休みください」


 ルドがゆっくりとクリスの頭を撫でる。一撫でごとに体の力が抜けていく。

 クリスはいつの間にか眠っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ