裏切りの本当の意味
この世界には「はぐれメタル」なる群れからはぐれたスライムが居るらしい。
だが、今の俺の方がはぐれている自信がある。なんてったって、人間にも受け入れられず、魔物にすら勘当されているのだから。少し長いが、生まれたばかりのどろにんぎょうが最底辺に堕ちた顛末を聞いてくれ。
事の発端は、俺が人間の言語を理解できることが原因だった。
俺はどろにんぎょうと呼ばれる雑魚モンスターだ。俺みたいな雑魚モンスターは、一人で戦っても瞬殺されるのがオチだ。だから、雑魚モンスターは雑魚モンスター同士でパーティを組む。
その時も、俺は先輩スライムと同期のゴブリンでパーティを組んで、雑魚モンスターらしく初心者を探していた。
運よくLv1の冒険者一行を見つけたので戦闘を仕掛けた。そこが俺の不幸の始まりだった。
戦闘を仕掛けると、戦士のような男が
「勇者様、こんな奴ら俺がやっちゃいましょうか?」
と言うのが聞こえた。もちろんスライムとゴブリンは青年の言葉など理解できておらず、今にも攻撃しようとしている。俺は咄嗟に
「だめだ、あいつらは他のと違う」
と叫んだ。しかし、スライムとゴブリンは俺がビビっているのだと思い、笑いながら勇者を攻撃した。すると、勇者様と言われていた青年は
「いいや、こんなのでも経験値になる。みんなでやろう。」
と言いながら、攻撃した二人を瞬殺した。
殺されると悟った俺は、必死で逃げた。とにかく逃げた。すると、いつの間にか地元の村に帰っていた。村長のゴーレムが、
「帰ったか。初めての戦闘はどうだった。スライムとゴブリンはどうした?」
と聞くので、パニックになっていた俺は
「勇者が現れて、二人とも死んじゃったから、俺逃げてきて」
と早口で言うと、村長は怒り
「何!!お前だけ逃げてきたのか。勇者など居るはずがないだろ!!自分の失敗を誤魔化すのではない!!」
と言い村から追い出された。そう、今や勇者は伝説の存在だったのだ。
バカな俺は、みんなに勇者がいると信じてもらうために証拠を取ってくる、という無謀な作戦を立てた。顔をローブで隠し、王都に潜入した。本当にバカだったのだ。
以外にも人型のどろにんぎょうは王都に馴染み大通りまで行くことができた。そして、大通りで拾った新聞には
「勇者様が出陣。必ずや魔王の首を取ってきてくださるだろう!!」
と書かれていた。証拠を見つけたと気分が高ぶった俺は、新聞を握りしめ門へ向かって走った。しかし周りを見ずに必死に走った結果、帰り道で人とぶつかる。
ぶつかった衝撃で深くかぶったローブが解け、魔物の顔があらわになる。そして俺の目の前には、スライムとゴブリンを殺した勇者の姿が。俺が絶望の淵に落ちるのに1秒もいらなかった。
「俺はここで死ぬのか」
などと考えていると、勇者はニヤリと笑い俺のローブを直す。耳元で
「俺についてこい。さもなくば殺す。」
と呟いた。