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知らぬが仏見ぬが秘事  作者: 紀士
1/2

何が怖いのか?(1)

「キミキミ、怖いっていうのは、知らないって状態からくる、ただの錯覚だと何度言えば分かるのかね。何年僕の親友やってるんだい?いい加減学習したまえ」


そんな大学教授が不出来な生徒に諭すような言い方で、僕は十年来の幼馴染を煽った

相変わらず、「怖い怖い」だの、「やばいめちゃくちゃ寒気がする」だの繰り返しているので、恐らく聞こえていないのだろう。


今、僕こと伊藤 見弥(いとう けんや)は幼馴染の冷牟田 悠斗(ひやむた ゆうと)とともに、市境で()()と有名なトンネルに来ている。


「大丈夫さ まだ何も()()()()()から」と僕がいうと、


「見えてからじゃ遅いだろ!」と悠斗が怒鳴る


「ははっ、どっちにしろ見えないのなら、変わらないじゃないか」


「だから俺は怖いんだ!」


なんだ、ちゃんと聞こえてるじゃないか。


「そうだよ、『待つのが祭り』なんてことわざがあるように、祭りの最中より、準備期間のほうが楽しかったりするしね。人間、期待や不安は、実際の物事よりも大きく想定することが多いんだ」


深夜2時、"修行"と称した罰ゲームが行われていた。

新学期の小テストで、悠斗が「勉強はちゃんとしてるのか」などと、母親のようなことをしつこく聞いてくるで、面倒臭くなり、

「じゃあどっちが点数がいいか賭けをしようか」とふっかけた。僕が勝てば"修行"、悠斗が勝てば食べ放題ではない焼肉を奢ることとなった。

ちなみに、二人の学力の差は大差があるわけではない。


「人っていうのはおおよそ2タイプに分けることができると思うんだ」

と僕は歩道の街灯の下で指を二本立てる。


「一つは知らないものを想像で保管して、勝手に恐れたり、崇めたり、期待したりするタイプ。もう一つは、知らないものを知りたくてたまらなくなり、実際に体感体験するタイプ」

と人差し指と中指をプルプルさせながら、ニヤニヤする。


「日本人は前者が多そうだな」


「そうだね、そしてこの二つには大きな特徴がそれぞれある、

前者は盲目的で視野狭窄に陥りやすく、価値観が常識の域を出ない、

反して後者は価値観の変動が激しく、精神熟成が早い、

日本の教育は基本的には前者寄りで、好奇心よりも常識を優先って感じかな」


「へいへい 俺は頭のお固い平凡人間ですよ」

とプライドの高い悠斗は、少しカチンと来たように言う。


「だったら修業しないとね」

僕はニコニコ顔で言う。


「修行って具体的には何をするんですかねぇ大先生?」

「希望では()()()ようになって欲しいけど、まずは意識改革からですね」


暗い林に挟まれた、片側二車線の車道の端を、僕たちはゆっくり歩きだす。

まだ、寒さも残る4月の夜の外出も修行ではあるが目的はそこではない。

目的地のトンネルは隣の北九州市と僕たちの住む『真中市(まなかし)』をつなぐトンネル。北九州から真中市に通ずる県道で、深夜でも車は一分に一台は通る。


「今日行くのは旧真中トンネルなんだろ? 入って大丈夫なのかよ、補導されて内申に響くのはごめんだぜ」


「この時間なら何もしてなくても、怪しまれれば補導だけどね」


「俺は老け顔だから大丈夫だ」


「僕の方は危ないかな」


僕の親友をやっていて、内申点を気にするところが悠斗らしいと笑いそうになる。

僕はあるゲームで見た、「最低単位修得で卒業を狙うという画期的アイデア」を実行中であり、学校からすれば迷惑な奴で、あまり評判も良くない。

変わって悠斗は成績優秀で教師陣の信頼も厚い、そんな腐れ縁の僕と悠斗ともう一人幼馴染で連んでいるが、今日は二人だけだ。


「大丈夫だよ 今日行くのは新トンネルのほうだから」


「え? 旧じゃなくてか?」


「そだよ〜、まあまあ、、ついて来なされ」

ぶつぶつ文句を言う悠斗をなだめながら、僕は言う。


すると間もなく、山に半円の穴を二つあけるたようなトンネルが見えてくる。

トンネルの前には貸しコンテナ倉庫があり、その裏の脇道を行くと、使われていない旧真中トンネルがある。


「こっちが旧トンネルに続く道か、暗いな」


「ほら先に行くよ」


脇道から少し行くと、現在使われている真中トンネルある。

僕たちは北九州市側からくる右車線側にいる。

夜なので暗いが、街灯も明るい。

トンネル内もところどころ電気が消えているが、別段普通のトンネルと変わらない。



「それで、何をするんだ?」


「前に教えた見えるようになる方法って覚えてる?」


「ああ、あの自分の家をできるだけ細かく想像して、歩き回るてやつか?」


「そうそう、それそれ 『マインドパレス』っていう記憶方法らしいんだけれど、この前海外の探偵ドラマで見てて、感覚が近いって気がしたんだよね」


「じゃあ俺はここで、城でもイメージすればいいのか?」


「違う違う、イメージするのはここだよ」

と言いながら僕は歩き出す。


「このトンネルをか?」


「そうだよ。これから向こうまで通るから、想像しやすいように細かく観察するんだよ」


二人で深夜のトンネルの中に入る

トンネル内は薄暗く、ゴミや落ち葉が所々落ちており、お世辞にも綺麗とは言えない。


「これなんて書いてあるんだろうな」


「チーム名とかじゃない?こういう落書きって同じの描けなさそうだよね」

などと、美術2の僕は言う。


「この目みたいな、二重丸に棒が刺さった落書きはなんなんだ?」


「え?知らないの?」


そうこうしていると反対側についた。

話をしていると、3分くらいの時間でトンネルの反対側についてしまう。

北九州側の出口には、工事で使うような大きな重機置き場があり、その陰に隠れて旧トンネルの出口が見える。


「では引き返しましょう!」

そう言って二人で引き返す。


真中市側につくと悠人が、

「うわ!なんだこれ、来た時は気付かんかったぞ」

とトンネルを出た時、左の方を見て言った。


「最初からあったじゃないか。よっぽど悠斗の目は不気味な物を見たくないようだね」

そこにあるのは、岩の様な地蔵で『ごんろく地蔵』と木の看板に書いてある。


「昔々、このトンネルを掘ってる時に人骨が出てきたとさ、その時に供養のために立てたのがこのお地蔵様なんだって」


「うわぁ~、怖いな」


「また言ってる。悠斗はさ、何が怖いの?」

と僕は悠斗に不思議そうに聞いた。

初めての投稿です。

ゆっくり更新して以降と思いますので、気長にお待ちを~


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