第二話 転生
これは夢か?
夢なんて何年も見ていないのに珍しい。そう思いながら不思議な透明空間を見渡した。
……?
その必要が無い……?
なんだコレ!? 体がおかしい!!
俺は一瞬、体を強張らすことが、できなかった……?
『こっち~!! こっち~!!』
誰かが呼んでるのか? 声ではないけど、呼ばれた方を向く。
そこには――、
そこには――、
和紙に“神”と達筆な字で書かれた、物体ぃ!?
頭が頭痛で痛くなる思いでそいつに話しかけた。
{ここは、どこだ?}
あれ、声が出ない!?
『ここ~? ここはね~、神の部屋だよ~。君は死んじゃったんだ~』
通じたんだ。しかしなんだ、この人をバカにした態度は……。
いや待て俺! なぜわかった? 伝わってくる言葉は声ではなく文字なのに。丸文字でまだ書き慣れていない子供の字。和紙が宙に浮いているだけ。それに――。
{死んだ!? そんなっ、嘘っだろ~?}
『突然死で~す~w』
草生やしやがった。ふはは、このやろう、こいつバカにしているな。ムカつく!
{突然死ってなんだよ! 夢だけど、ふざけんな!!}
『こう~、心臓がキュッと止まるかんじ~。それに~』
くしゃくしゃに丸まって心臓を再現しようとしている。独りでに紙が動くのは、なんとも不気味だ。
『この場所が現実だって~、本当は判っているんでしょ~?』
{…………}
滲んだ墨のような文字が俺の中に入ってくる。と、同時に背筋が凍る思いが込み上げてくる。
冷や汗をかきそうなほどの動揺が心の中を支配する。しかし肉体はその恐怖に答えない。歪な感覚をムシして俺は叫べない体で叫んだ。
{――知るかッ!!! 俺は健康な三十だ! 急に心臓が止まる生活なんてしてない。そんな簡単に、死ぬ訳ないだろ!!!}
『じゃあさあ~、コレ見てね~』
紙の下に突如として音声付きの映像が映し出される。
俺の部屋、現実と寸分違わぬ映像。これを見ている時だけは体が在るような感覚。ほんとうにこれが夢なら、出来過ぎているかもな。
ブサイクでチビの俺が、静かに布団の中で眠っていた。寒いのか体を小さく丸めた直後、体をビクンとさせ、呼吸が停止、以後動かなくなった。
『ご臨終で~す~』
ガチャ
下手くそな字が送られ紙が一回転すると、天冠――死人の額につける三角の布――が描き足されていた。
{……え!! 今、死んだの? へッ!? あんな簡単に? 俺が?}
『よかったね~! わたしに選ばれて~、宝くじの一等が当たるよりすっごいよ~www』
人が死んでいるのに喜ぶこいつの神経。俺の怒りも、もう限界だ! このふざけた紙野郎を殴るために全力で足に力を込めた。
{ふざ――}
すると、上下が三回転した……。
{ふあ~!?}
『はあ~、君は魂だけだから危ない事をしないでね~』
……うん、わかってたさ。自分が魂だけの状態って……な……。
紙が鏡代わりになり、非現実な現実を突き付けてくる。そこには俺の動きと連動している人魂が、ゆらゆらと浮かんでいた。
視覚が360度な時点でおかしいと思っていた……。
言葉も心の奥底から出ている、そんな違和感があった……!
体の感覚が、人の形をしていないのも気づいていた…………!!
……
でも、すごくない? 俺超常現象♪
{あ~! まだ[ケイン・ナイカ]終わってないのに~!}
とても悲しい。
俺の人生、ゲーム、漫画、アニメが九割他一割な極端な人間である。恋が実らなかったので他が増えなかったともいう。
今日買った[ケイン・ナイカ]は、ずっと心待ちにしていてクリアするまで絶対に死ねない!!と、思ってたのに。ああ、死んだ事より悲しい、――続きやりたい。
……待てよ? 今のこの状態、これはもしかしてテンプレ的展開では、都合よく今やっていたゲームに異世界転移する――みたいな?
『君はえらく楽観的だね~。あと~、人が死んで喜んだりしないからね~? 誤解無きよう~に~!!』
そうなのか?
『……こほん~! 君には転生してわたし達の世界を救って欲しいんだ~』
テンプレ展開きたーー! 死んでたら異世界転移はできないか。そうだよね~。
先立つ不幸をごめんね、母さん達。うちの家族仲は普通だし、兄と違って優秀な妹が居る。俺が死んで悲しんでも、きっと妹が何とかしてくれるだろう。あのまま生きていても、孫を見せられる確率は無いからな。
でもこれで、残念ブサイクな人生とおさらばできる。そして、こんにちはイケメン主人公バラ色人生!! 俺的には幼馴染のメインヒロインや、サブヒロインの刀剣使いより、ロリが良いから他のヒロインのフラグをバキバキにしないとな~。
なんて考えていたら――。
『君は魔法使いなので特典もりもりで転生する権利があります~』
{……魔法使いですか?}
不吉な事が、無い頭を駆け巡る。
『童{わぁーわぁーぎゃーー!!!}』
ハア! ハア!! 世の哀しみ溢れる男性への文字を心からかき消す。職業の魔法使いじゃなくてあっちの魔法使いか!? すぐに話を変えねば!
{あ~もすも? て、転生が断っとらどうなるんでしゅおうけ?}
もの凄く混乱して、何を伝えたいかちょっとわかんない。俺のメンタル、豆腐すぎ!!
『魂が“輪廻”するだけだよ~』
一応通じたのか? さすが神様?だ。神様なのかな、この紙は? “”を律儀に送って、俺に質問させたいのか?
{“輪廻”とは何ですか?}
『魂を“浄化”して何処かの世界に出荷することだよ~』
{“浄化”とは何ですか?}
『ん~? 今の人格や記憶をなくして、キレイキレイにすることだね~{あ、転生します、ハイ}』
この妙な体にも慣れてきたので、すかさず言葉を発して返事をする。転生以外の選択肢を消す巧妙な手口。これは誘導されたのか?
『わかった~!! えっと~、次の項目はっと~』
紙がクルッと一回転した。
『通常特典として一つ、何でも願いを叶えてあげちゃう~』
嬉しいのか、文字の前に太陽が、後ろに猫のような生物が足されている。何だろうこの気持ちは……幼女?
{たしか[ケイン・ナイカ]は六人パーティ。主人公じゃなくて、魔法使いのおっさんが転生先になるのか? うわ~、あんまり強くなかったよな、死にまくっていたし。もし俺だけが転生者なら結構大へ『一人じゃないよ~』}
{え!?}
『一人だけじゃないよ~』
俺以外にも居るのか!? 六人全員が転生者?
『全員で十二人~、転生してもらうんだぁ~』
{十二人? みんなチート持ち? 世界なんて楽に救えますね!!}
待って? あれぇー? あれれ?
『《運命の子》としてがんばってもらうよ~』
……?
[ケイン・ナイカ]に《運命の子》なんて設定無かったぞ。それにパーティ人数と転生者の数が合わない。もしかして今までのは、俺のムダな勘違い? なにまたバカやった?
でも――、
《運命の子》か。……子供の時はそういうのに憧れたな~。時が経ってオタクなおっさんになっちまったけど、でもあの憧れになれるのか。
それに子! 子ォッ!!
{《運命の子》ということは、みんな子供ですか? 女の子もいますか?}
『女の子はいっぱいいるよ~』
{ウォッシャーーアーー!!}
めっちゃやる気が出てきたー!!! ロリコンの俺にとって最高じゃないか。三十歳までこじらせて無事、魔法使いになっちまったけど。いや~、神様は実に素晴らしいお方!!
神様を見ると“神”の文字が滲んで、泣き出しそうな雰囲気になっている。どうしたのだろうか?
まあ、細かい事はいいかな~。さ~て、どんなチートにするか。
神様が挙動不審に彷徨って、こちらをチラチラ見ている。
……何かあるのか? そういえば▲▲▲が説明を聞けとか、情報収集で失敗して、交配をミスしていたな。
{転生のご説明をお願い致します}
初めての転生だしな、まずはこれから聞いておこう。
『え!?』
『え~と――パラパラ――質問には必ず答えること――パラパラ――禁則事項以外はっと~、ヨシッ~!』
紙がくるくる回転して、今度はラメ入り文字が送られてくる。
『えっとね~♪ “輪廻”して~、“生まれるはずのない命”とこう~、コネコネ吸収合体して~』
子供が一生懸命にクレヨンで書いたような、やたら嬉しそうな字が送られてきた。
{ちょっ待っ! “輪廻”?}
それって今の俺が消えるんじゃあぁぁ……。
{それ転生じゃねぇーじゃん! おまえ、本当は詐欺師か悪魔じゃないだろうなッ!!}
『違う違うよ~、新転生システムになったから~、しかたないもん~。どうしようもないもん~。ぷんぷん~』
可愛く怒っている謎生物の挿絵を挟んで何がしたいんだあ? さきほどと打って変わって“神”の文字がやたら元気。
『“輪廻”か“転生”か~、選択肢はこれ以外にないんだよ~』
俺に何かを望んでいるのか? 期待のこもった眼差しを向けてきた。…………目が無いのに眼差しって、毒されてんのか俺?
{“転生”なら願いを叶えてくれるんだよなあ!}
『そうだよ~!!』
人懐っこい子供のように、俺に纏わりつく。ちょっとだけ、かわいいと思った自分が腹立たしい!
…………
……
俺のない頭で考えた結果。
{転生で――! 俺の今の人格とすべての記憶の保持}
……ちょっと待て俺。もしかして他の奴らも俺のように騙されているのでは?
{いや、転生者全員の今の人格とすべての記憶の保持で!!!}
パンパカパーン!!
『やったー!!! 本当~!!! 助かった~♪』
よほど嬉しいのか、識別不能なほど躍った字が、はなまるマークでデコレーションされ送られてきた。さらに紙の後ろからどこからともなく、クラッカーが鳴らされ、紙吹雪が舞う。まったく何を喜んでいるのか、俺にはサッパリだ。
『え~、コホン! もう時間なので続きはまた後で~。バイバイ~』
{え? 急にちょっと、待って……ふざぁ…………!?}
意識が遠くなっていく、それとは別に不思議な映像が入ってきた。
……十二人……子供……様々な種族…………あっっ! この子、超ドストライク………………
…………
……
『ふぅ~、何とかうまくいった~』
紙が誰も居ない空間を漂っている。
『ギリギリだったな』
そこに“GOD”と書かれた洋紙が現れる。
『あなたの担当が、あの願いを無事にしてくれてよかったです』
その他にも多種多様な言語で書かれたさまざまな媒体が出現した。
『だいたい、この新転生システムとは、どこの誰が決めたのじゃ? これじゃあ転生なんて本当に名ばかりじゃのぉ』
石碑が呆れたように奇妙な動きをする。
『まあまあ、こうでもしないと《転生者》だらけになりますよ。それに決めたのは第一位神様ですよ? 私、ボケたフリですか』
羊皮紙が角を石碑に向けた。
『ふぉふぉふぉ』
石碑が小刻みに揺れる。
『でも、これで私達の勝ちかな?』『当然だな』
十二枚の媒体が集まり――。
紙束となった。
『次の仕事をしないとね~』
そう言い残して紙束は、神の部屋を後にする。
イベントクリア報酬
ゲットスキル
【勘違い】
よく勘違いするバカな奴
補正 HP+1 運+10%UP
【フラグバキバキ】
フラグは折るものバキバキポキポキ
補正 クリティカル率+5%UP
【変に前向き】
なんでそこで前向きになる?
補正 HP+1
secret
【キモイ】
もしかして……幼女? この気持ちは――
補正 きもい
【ろりこんEX】
呪い Yesろり~た!! Noタッチ!!
補正 器用さ+10%UP ロリと認めた者に対して様々恩恵を与えれる!!
《魔法使い》
割とどこにでもいる
補正 MP+100 魔法系に大きな補正が入る
《運命の子》
神に選ばれし使命を担った者 ロマンの塊だね
補正 全能力+1%UP 成長に対して多大な補正
《転生者》
前世の記憶を保持している者
補正 初期ステータス最大化 スキル習得に大きな補正が入る
ケイン・ナイカ⇒カンケイナイ
レセンディ=リプス⇒プリンセスレディのアナグラムです。
未来日記:前書き後書きにぐだぐだ書かない。
なろうあるあるだと思います。
初めての作品、初めての小説を投稿する作者は不安で、心配な気持ちがあるはずです。
それを少しでも和らげるために、初投稿等の言葉でハードルを下げたいと前書き、あらすじに書きます。
また、後書きに言い訳がましく自分は初心者などぐちぐち書いてしまいます。
読者の気持ちになったらわかることですが、その情報いる?
なろうが素人作品に溢れているなんて、利用している人ならほぼ知っています。
ましてや、評価が全く入っていない作品を読もうなんて、それこそ百も承知の方のはず。
もしあなたの作品がとても優秀だとなおさらです。
例えば、某作品の最後で、母親が巨人にムシャムシャされた後に、読者はえー!? どうなるの? 続きは!!と思い読み進めて後書きに、
初めての僕の小説どうだったー? おもしろい? おもしろくない? 初めてだからわっかんねー♪ 実はこの作品某エロゲーを元にして書いたんだよ~☆
まあ、ヤバイ情報まで含んでいますが言いたいことは伝わったと思います。その情報いる?
え? なんでおまえは後書きにぐちぐち書いてるかって? ……この日記は『完結』の際に封印予定だから良いのです。『理由』が明確にあれば書いたほうがいいですから。
『理由』? 自分のためと初心者の不安を取り除くのが目的だからね。初めて書いたらわかるけど、小説の内容より、作者の考えの方がスゴク気になるからね。初心者の方、わかるぅー?