第一話 プロローグ
何を血迷ったか初執筆?初投稿?します?
暇つぶしになれば幸いです?
「たっだいまー!!」
「おかえり~~」
あ゛~、疲れた~。
急いで玄関から自分の部屋に入り、予約していたRPG[ケイン・ナイカ]を鞄から取りだした。
帰宅中にどれだけ心が躍ったことか。
今の時代に通販を使わずダウンロード版にしなかったのは、この気持ちを味わえるからだ。くたびれた三十のおっさんが、今、この時だけは少年に戻れる。
はやる気持ちを抑えて本体を起動。
ディスクを入れゲームスタート!
さあ、
冒険の始まりだ!!!
……
テレビにインストール画面が表示された。
「なんでさッ!!」
まったく、最近のゲームはすぐにゲームを始められないとは、昔は良かった――。
なーんて、思うか! 昔は昔、今は今の楽しみがある。焦らされている間も期待が高まるというもの。インストール中に風呂に入ってプレイ時間を稼ぐ。当初の予定通りだ。
部屋を出て台所へ向かうと、母さんがイスに座って呑気に漫画を読んでいた。
「お風呂沸かしてくれた?」
帰り際に連絡しておいたので、一応の確認のために聞く。
「沸かしてるけど、●●●今日食事当番なの忘れていない?」
「忘れてない、よっっと!」
追いだきボタンを押して、風呂場に行こうとしたら――。
「次の巻はー?」
漫画をひらひらさせ俺に当て付けてくる。
「……たしか~、えーっと? 明日発売で、そうそう、▲▲▲が通販していたはず。だから明日中には届くんじゃないかな?」
母さんが読んでいた[レセンディ=リプス物語]は、俺と▲▲▲が共同で買っている少女漫画だ。妹に勧められるまま読んだら、すっかりハマってしまい。まんまと貶められ代金の半分を払わされた。
でも今日買った[ケイン・ナイカ]は、クリアしたら▲▲▲に遊ばさせるのを条件に、半分支払わせているので、お互い様だけどな。
……
風呂から出て自室に戻った。
が、まだインスト-ル中――正確にはバグパッチの分が延長されていた。いい加減、詐欺のような%表示は無くしてほしいものだ。100%の次が0%になるのは、おかしいと思わないかい?
仕方がないので、今の俺は晩ご飯を作っている。
オムライスにサラダ、そしてスープと手短にできるメニューだ。
スープ用の水に火をかけて、サラダを作るために適当な野菜を刻む。食べ辛い部分はスープの具材へ。パパッと盛り付けたら、オムライスに入れる玉ねぎと鶏肉を切る。水が沸騰してきたので、主婦の強い味方――。
「「ミックスベジタブル~」」
母さんがいつものようにハモってきて、どこからか効果音が聞こえそうなやり取りをした。
まあ、適当に流して、冷凍されたミックスベジタブルと具を入れ、冷凍ご飯を電子レンジでチン。フライパンを火にかけ、油をひき、鶏肉、玉ねぎ、ミックスベジタブルの順で炒める。
頃合いなのでコショウを少々、具材だけで絡ませる。こうすることで具材とご飯の差が出る我が家のポイントの一つだ。スープの方も良さそうなので、コンソメの素を入れて出来上がり。
炒めた具材を半分、皿に移して、チンしたご飯といっしょにかき混ぜる。ケチャップとコンソメの素少々、ソースをふたまわしで味見。んーこんなもんかな? 同じ要領で炊飯器のご飯を使い大量のチキンライスを作った。
「●●●ー、お母さんの卵の量、多めにしといてー」
「へいへ~い~――」
「……はぁ~、たっっだいまーー!」
「「おかえり~」」
ドタドタと足音を立てながら▲▲▲が帰ってきたようだ。
扉が勢いよく開く。
「お兄ちゃん!! これを見るかなッ!!!」
▲▲▲がスマホを見せてくる。そこには、期間限定の最高レアキャラが映っていた。
「課金した……のか? 一体いくらつぎ込んだ!?」
「……ふっふっふっ、宵越しの銭は持たない主義だからかな(キリ!!)」
「ッフ! ▲▲▲よぉ。相変わらず運がないなあ。――見よおぉぉ!!」
ズボンからスマホを取りだし、ソシャゲを起動させた。
「……まさか……当てたのかな……?」
「無課金でーすぅー」
どこかのご隠居の印籠よろしく、最大限界突破済みのキャラを見せ、▲▲▲を控えさせる。
「その無駄な運を▲▲▲にも、っ分けるかな~!!」
控えるどころか逆上して首を絞めてきた。しかし、そこは勝者の余裕。ここぞとばかりに敗者をあざ笑う。
「あんた達、本当に仲がいいわねぇ……」
「そうか?」「そうかな♪」
「卵を包むから放せ。あと弁当箱は出しとけよっっぉぉと。うむ!!!」
上出来だ。半熟オムライス一丁っと。
「▲▲▲も卵多めの、ライスは少なめでお願いかなー」
「へいへい」
「それー! おもしろかったかな?」
やはりおまえが勧めていたか! 母さんは大変ご満悦のようで、良きに計らえといった感じ。▲▲▲はイスに座って母さんと雑談を始めた。
……
晩御飯を作ったので、部屋に戻った。無慈悲な当日二回目のバグパッチ中、プレイできるのかコレ。オンラインマニュアルを読んで予習だな。
帰ったぞ~と父さんの声が聞こえた。台所に行くと母さん達が準備をしていたので、俺も参加する。
……
みんなで、いただきますをして食事を始める。
「長期休暇中、おまえ達は何をするんだ?」
「ゲーム」「予定は無いかな」
「まるで華がないな、恋人でも作って旅行に行ってもいいんだぞ」
父さんは呆れ顔。
「彼女とか居ないし……」
「彼氏とかできないかなぁー」
「お母さんもはやく孫が見たいのに。どうしてうちの子には三十や二十五にもなって、浮ついた話の一つもないのかしらねえ?」
「ゴクッ!? 俺、ブサイクだし……」
自虐気味に言った。
「ブサイクだなんて!? こんなに可愛く産んであげたのにっ!!」
「そうだ●●●はブサイクじゃない!!」
親はみんなそう言うんだ。
でも、運動も勉強もそこそこ、これといって優れている点が無かった俺。とうぜん学生時代にモテた事なんてない。むしろ二回フラれた。代わりに友達とは毎日遊びまわる青春を送った。
――男しか居なかったけどな!!!
そして現在は中小の平で、基本コミュ障の俺に浮ついた話なんて無い。
「お、お兄ちゃんはブサイクで、チビで、キモイ、ダメ人間かな!!」
これが世間での認識。ちょっと酷過ぎだが親フィルターがなければこんなものだ。あとスプーンで人を指すのはやめなさい。母さん達が猛反論しているが虚しいだけだ。
それに比べ、▲▲▲は才色兼備。化粧や服装で大人のように見えるが、すっぴんだと高校生にしか見えない。下手したら小学生に見えるくらいに童顔だ。
大学時代に発表した論文は界隈では有名で。スポーツはそこらの男性選手より優れ、オファーが殺到していた。
今現在勤めている大企業も自宅から近いが就職理由。それに、ムカついた上司を飛ばして新しい上司にさせた、とケラケラ笑いながら話していた。上司を飛ばす? まったく意味がわからんぞ。
そして――、
「▲▲▲に相応しい男がいないだけかなぁー」
選り好みのせいだ。
ラブレターの束をこれ見よがしに、ひけらかされたこともあったし、誰々に告白されたなど、いちいち俺に報告しにも来ていた。
俺の友達をかってに品定めして「お兄ちゃんの方が、この中ならまだマシかな」発言した事もあったな。その時は友達を侮辱されたと思って怒ったら、涙をポロポロ流して謝っていたっけ。って、話がそれたな。
昔どんな人が理想か聞いたら、国を統べる人だったり、一人で国と渡り合える武力を持っていたり、神様を殺したことがある人など、ちょっと頭がお花畑な発言でドン引きした記憶がある。背が低くて年上ぐらいしかまともな条件は無かったな――。
バカと天才は紙一重とはよく言ったものだ!!
「お兄ちゃ~ん~~? 今もの凄く失礼な事を、考えなかったかな~? かなかな~? ……も、もしもお兄ちゃんが、一生独り身なら。そ、その、▲、▲▲▲が養ってあげてもいいかな~、なんてねッッ?」
「だいじょうぶ! ●●●ちゃんなら、きっと良い人を見つけられる!!」
「母さん!? ちゃん付けはやめてくれ! もう俺、三十のおっさんだから!!」
……
みんなの食事も終わり、後片付けを済ませ、自室へ向かう。
父さんが部屋の前で待機していたので、アイコンタクトをして先に入ってもらう。俺は注意深く誰も視ていない事を確認してそっとドアを閉めた。
「例の物は?」
「こちらに」
父さんから物を受け取る。
「なかなかに良い物を、そちも悪よのう」
パラパラとページをめくったが、なんと尊いことか、ゲームに疲れたら読もう。
「●●●様ほどでは……」
どこぞの商人みたいな笑みを浮かべ、手をこすり合わせている。
「ふっふっ」「はっはっ」
「「はぁーはっはっは!」」
ドン!
「「すんません」」
俺と父さんの二次ロリ本(健全本)が並んでいる本棚に漫画をしまう。
「どれ読む?」
「今日はやめておく。母さんにマッサージを頼んでいるからな」
あらためて思うが、うちの夫婦仲はかなり良い。父さんはロリコンで、母さんは年を取っているが、キレイよりカワイイが似合う人物である。ちなみに妹の部屋には、母オススメの厳選に厳選を重ねたショタ本が隠されているが、聖域は不干渉が暗黙のルール、お互いに知らないフリだ。
そんな二人が結ばれるのは運命、俺がロリコンになるのも必然、チビなのも当然の結果という訳だ。
「ゲームもほどほどにな」
「善処します」
俺の頭をポンポンしてきたので振り払うと、父さんが部屋から出ていく。
遂に、ついに、[ケイン・ナイカ]ができるぞ!
コントローラーを持ちながらOPが流れるのを待機。公式サイトで何回も見たけど、歌が無いのが最高に良いセンスだった。
画面が切り替わる。待ちに待った時がきたー!!
さあどんどん進めるぞ。
……
{敵がきたぞ}
{燃えあがる爆炎≪イグニート≫}
{まあ、準備運動にはなった}
テレビには、アニメ調のキャラが勝利のポーズを決めている。
はやく進めたい気持ちがあるが、これはちょっと我慢できないな、お茶を飲み過ぎたか? キリもいいし、ついでに歯も磨きにいこうかな。
…………
……
「……お兄ちゃん?」
トイレに行く途中、元気のない▲▲▲に出会う。風呂から出てきたばかりみたいで、バスタオルで髪の水気を取りながら歩いていた。
「今日が、何の日か……憶えているかな?」
「[ケイン・ナイカ]の発売日?」
「……憶えてる訳ないかな……ううん! なんでもないかなっ!!」
暗い表情から無理に作り笑いをして、自室の方へ。しかし通り過ぎ間に――。
「お兄ちゃんっ!!! 説明はちゃんと聞かないとダメかなっ!!! ▲▲▲との約束かなっ♪」
指をバシッと決め、帰っていった?
あっ、我が妹が部屋へ入る間際に、か~な~っ!?と奇妙な鳴き声が聞こえた、気がしたような、そうでもないような――。
それにしても意味がわからない。何だったんだあ?
……
{囲まれちゃった!? どうしよ~お~}
{きえちゃえ≪バニッシュメントデストロイ≫}
{まけないよ~≪ソプラノ・コロラトゥーラ≫}
{まえうしろよ~し~}
ふひひ、やっぱりロリが最高!
喉が渇いたな。もう二十二時半か、そろそろ寝なきゃな。
……
月の光を頼りに廊下を歩いて台所へ。扉を開き、手探りで照明を点けた。
「うわああっ!!」
▲▲▲がイスに座っている!? 泣いていたのか、すぐに目を擦って、歪な笑顔をこちらへ向けた。
「……お兄ちゃんかな……どうしたの……かな?」
「おまえこそ灯りも点けずに、何していたんだ?」
「ちょっと、ボーッとしていただけかな」
あまりにも判りやすい嘘だ。オマケに手の震えを隠そうとしている。
「悩みがあるのか?会社関係か?わかったーっ! ガチャで爆死したのか~~!!」
「え!? いやあーー、今月お金がピンチになっちゃったかなーー……」
我ながら的外れなのに、話を合わせてくる。
「……兄ちゃんには言えない話なのか?」
…………
……
さっき説明がどうのこうのって、――まさか!
「騙されたのかッ!!」
「はあ……!? ……ううん、そうかな? そうかも! ずっと騙されてっ!! 振り回されてッ!!!……実らなかったのかな…………」
俺を見つめる眼から、涙が零れ落ちていく。
「だい、だいじょうぶかっあ!?」
近場にあったタオルを持って駆け寄る。
「もう、解決したことだから心配いらないかな。でも――」
抱きつかれ、さらに泣き出した。
「あとちょっとだけ――今だけは――このままでいさせて欲しい、かなぁぁ……」
少女漫画とかでよく見る、胸を貸すシーンか!? 兄として、男として、妹と身長が変わらない残念な自分に対し、つま先立ちをしてプライドを保つ。
……ん?
そうかわかったぞ!!
▲▲▲の趣味、観葉植物の話だな。
間違った情報で交配が失敗して落ち込んでいるのだろう。たぶん。
思い出すは俺と▲▲▲がまだ小さかった頃、初めて二人で育てた花が枯れた時も、こんな風に一人落ち込んでいたのを慰めたっけ。でも種が落ちていたので「また植えたら育つよ」と教えたら、それからは毎年花を庭先で綺麗に咲かせるようになったあー。
夜の寝る前に時々、観葉植物に対して愛の言葉を送っているのを、実は知っているだ俺。妹のプライドのために知らんフリをしていたが。
それほど観葉植物への情熱がスゴイのだ。今回の失敗は大ショックだったろうが、これをバネに次は必ず成功するはずだ。
背中をさすって、▲▲▲が落ち着くまで待つことにした。
おまえならやれる! 兄ちゃんも陰ながら応援するからな!!
……
「――おかげで元気が出たかな♪」
いつもの笑顔が戻ったようだ。
「お、お兄ちゃん!!!」
冷静さを取り戻し、顔を真っ赤に染めて居たたまれない様子。
「だ、大好きかな!!!」
「そうかそうか、兄ちゃんも好きだぞ。よしよし」
恥ずかしさを茶化すために悪ふざけをしているみたいだ。俺もそれに乗っかって子供をあやすように、背中をポンポンと叩く。妙な所が子供っぽいよな。
「こんなにがんばったのに、はあ~、普通は気づくかな~?」
「気づくって、もちろん観葉植物の事だろ?」
「……どんかん……!」
「えっ、どんかんって?」
「……今度こそ絶対に実らせる……かなーッーー!!」
▲▲▲はバカみたいな力で、ミシミシと抱き死めてくる。しまった!? 俺とした事が、庭先の花の方だったか!!
……
癇癪が収まり、解放してくれた。だが、すかさず脛を蹴り入れ逃げいく。
「が、がんばれよぅ!」
痛む腰に手を当て、じんじんする弁慶の泣き所に耐え、エールを送った。兄ってなんてツライ!
「成功させるかなっ!!」
捨てゼリフを吐くような感じで指をバシッと決めている。
そのまま元気よく走り、急に両手を後ろにして振り向いた。
「絶対あきらめないかな♪」
そうか、がんばれよ!
お茶を冷蔵庫からだし、注ぐ。
ゴン!!
……上から、また、かなぁ!!!っと奇妙な鳴き声が聞こえた気がしたような、そうでもないような――。
騒々しい奴だ。お茶うめぇ~。
……
{つよそうなのがきちゃったよぉ~!?}
{おしりにふまれちゃえ≪ヘカトンプレッシャー≫}
{どんどんのびろ~≪デモンハンズ・アビス≫}
{ここほれワンワン!≪ケルベロスディグディグ≫}
{ランラ~♪≪ソプラノ・リリコ・レッジェーロ≫}
「はぁ!?」
おっさん死に過ぎ。HPがロリより低いって、歳か? 歳のせいか? おっさんに人権はないのですか?
ロリからおっさんに操作キャラを変えた。
{助かった! 燃え上がる爆炎≪イグニート≫≪焔≫}
おっ、ゲージが溜まった。
ピキーン
{みんなの願いここで繋ぐ! まかせた!!}
{明日への希望は渡さない! おねがい!!}
{過去を忘れない今を創る! たのんだぜ!!}
{貴様の呪縛解き放つ! きめろよ!!}
{みんなをえがおに! いっけ~!!}
{すべてが報われるために! おわりです!!}
{{{{{{ブレイクデスティニー}}}}}テニ}
――!? これが超必殺技か実に素晴らしい。パーティが全員いないと発動できないだけはあるな。すごいダメージ量だ。それにしても発音が一人おかしかったような?
{よくも、よくも、貴様らぁああ!!}
{やったー!!!}
……
「ふぁ~、これで三人目のボスを倒したか」
日付が変わりそうだ。もう俺も若くないし、まだまだ休みはこれからだ。体調を崩したら元も子もない。
セーブして、電源落として、明日に備えていつものように布団に入る。
どこまで進めるか、先の物語がどのような展開になるのか、まるで小学校の遠足前の気持ちを胸に。歳には勝てないこの体を少し呪いながら眠りについた。
…………
……
っん?
……ここは、どこだ?
辺り一面が透明?
創作日記:自分で創作するのが、こんなに楽しいなんて思わなかった。
こんな小説読むより、自分で小説書く方がたのしいよ。
未来日記:この未来日記は、第一回全改稿時の作者が色々追記するものです。
過去の自分に対してツッコんだり、約八ヶ月小説を書いて学んだことを伝えたり、毒を吐き散らかす予定のものかな?
最初に『初心忘るべからず』
俺の『初志』は『自分にとって最高の作品』が欲しいです。
ここに書いておけば、未来の俺が読んで忘れることはないはず。
あと本当の意味の方も忘れないように。忘れたらググれ。
もしもこの拙作を読んで小説を書こうとしたあなた。必ず『初心』を保存するのをオススメします。黒歴史と思って捨てないで。
作者歴の長い方、あなたの『初心』はどの段階? 読者の方、さあ、一緒に創作沼に入らないかい? 睡眠時間がガリガリ削られるほどたのしいよ。