異世界転生論
こういう青春したみたいひとー
はーい!
「 異世界に転生したいんだけどどうすればいいと思う?」
「 死ねば?」
「 ヒュー、手厳しい!」
イラッとした。すごいイラッとした。でも我慢する。こんなので怒っていたら憤死するから。
「 それで急にどうしてそんなこと言い始めたの?」
「 クールだけど何だかんだ相談に乗ってくれる親友、やっさしい!」
手が出そう。すごい手が出そう。でも我慢する。親友だから。
「 いいから早く言って。」
「 またまたー、照れちゃって。ん?ん?恥ずかちぃのかな〜?ん?んんんん~~グふっ!?」
あ、殴っちゃった。でもいいや、親友だし。
「 けふっ、何か言うことは?」
「 仏の顔は三度まで。」
「 そんな慈悲深くないよねぇ!」
「 うるさい。」
「 あ、はい。」
なんだか悲しそうな顔をしている。少し言い過ぎたかな?相談に乗るからチャラでいいよね?
「 それでなんで異世界転生したいの?」
「 あ、聞いてくれるんだ。」
「 いいから早く、読者がこのやり取りに飽きてしまうから。」
「 おっと、メタイ話は無しにしようぜ、親友。」
「?わかった。」
「 か、かわえぇ……!」
よくわかんない。読者の気持ちを代弁するのはいけないことなのだろうか?でも親友がそう言うなら従う。
「 コホン、それで俺が異世界に転生したい理由だが、ひとえに俺tueee!したり美少女ハーレムを作りたいからだ!これは全国の男子中学生に共通する夢だと思う。」
「 そんなカミングアウト聞きたくなかった……!」
まさか親友がこんな邪な欲望を抱いているとは……!いや、親友に限らず男子中学生ならみんなそうだと言っていた。彼らはケダモノか何かだろうか?カルチャーショックならぬジェンダーショックを受ける。
「 いや、そんな衝撃を受けなくても……。そもそも皆んなが皆んなそういうわけじゃないし。」
「 乙女の純情を弄んだ、最低、鬼畜、ケダモノ。」
「 そこまで言う!?」
危うく男子中学生には近寄らないという決意をしてしまうところだった。
「 女子にいるだろ!?イケメン逆ハーしたいって言ってる欲望に正直な女の子が!」
「 いるかも」
「 だろ?」
「 それでもケダモノ。」
「 ノー!!」
親友が叫ぶ。うるさい。でも我慢。悲しそうにするから。
「 でも、少し考えてみる。」
「 あ、考えてくれるんだ。」
親友の頼みだから。ラノベを参考にしてみる。
「 まずヒキニートになる。」
「 初手からレベルたけー。」
「 なんで?何もしなくていいんだよ?」
「家族からの軽蔑しきった言動に耐えられそうにない。そもそも兵糧攻めされたら死ねる。」
「 そうなの?」
「 たぶん。」
どうやら気に入らないようだ。仕方がないから他の策にする。
「 ボッチになる。」
「 さっきと大して変わんねぇー。」
「 大丈夫、親友とヒロイン枠はノーカン。」
「 少しはマシかな?」
「 そしてトラックに轢かれそうになっている女の子を助ける代わりに轢き殺される。」
「 物理的にも心理的にも不可能くせぇー。」
「?女の子はワザと轢かれそうになればいい。」
自然発生なんか待ってたら一生そんな機会こない。きたとしても男の人だったら駄目だし。
「 自演かぁ……。でもトラックに跳ね飛ばされて死ぬ勇気はないなぁ。」
「 親友はわがまま。」
「 え、おれ悪いの?」
親友が納得いかないって顔している。ちょっとかわいい。
「 人生に絶望して自殺する。」
「いやだよ!」
「 いままでの中で一番お手軽だよ?」
「 一番酷いけどな!」
「 自殺だから好きな死に方できるよ?」
親友が辛い目にあうのは私も辛い。でもこれも親友が夢を叶えるため。どれだけ不純な夢でも叶えてみせる。
「 俺は死にたくないんだよ……。」
「 転生できなくない?」
「 そうだけどさぁ!そうじゃないんだよ!」
親友が無茶振りしてきた。ここで諦めるのも負けた気がして嫌だ。
「 ウパニシャッド哲学と仏教どっちがいい?」
「 え、怖い。急にどうしたの?」
「 輪廻転生思想のある宗教で修行を積めばワンチャン。」
「 宗教はちょっと……。」
親友は非神秘主義者のようだ。異世界の存在は信じているのにおかしなことだ。いや、異世界は理論上存在するんだっけ?
「 異世界転移は?」
「 あれはただの確率になってしまうから。しかも極めてゼロに近い。」
「 無理じゃん。」
まず異世界が私たちを召喚しているかも怪しい。もししていたとしても必ず自分が選ばれるわけでもない。自分の上に隕石とミサイルが同時に落ちてくるような確率だ。一番望みがないかもしれない。
「 ……。」
「 おーい、おーい。」
そもそもいままでの提案も望みが薄いものばかりだ。私は無為に親友を殺したいわけではないのだ。
「 私がんばる。」
「 え、うん、頑張れ。」
その日は相談に乗ったお礼にプリンを貰った。美味しかった。
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜
「 親友、やっと完成した。」
「 え、何が?」
「 え?」
「 え?」
親友が急に何か言い始めた。でもあんまり気にしない。
一言でいうなら親友は大天才だ、凡人では理解できない思考をしているのでときたま突拍子も無いことをする。
あととても純粋だ。この前もふざけて異世界に行きたいと言ったら真剣に考えてくれた。かわいい。親友はいちいち仕草がかわいい。甘い物を食べている時の至福の表情がマジでかわいいからついつい貢いでしまう。
「 このまえ異世界に行きたいって言ってた。」
「 そうだね。」
そんな話ししたね。どうしたの?
「 だから、行く方法を作った。」
「 え、どこに?」
「 異世界 」
「 …… 」
これはあれだろうか?からかわれているのだろうか?うーん基本的に無表情だからわかんねぇや。とりあえず話しを合わせるべきだろうか?
「 すげぇ!マジで!すげぇぇー!」
くっ、自分のボキャブラリーの少なさが恨めしい。すごいワザとらしくなってしまった。流石の親友もこれには気づいてしまうかもしれない。
「 むふー。」
……か、かわいい!じゃなくて杞憂だった。すごいドヤ顏して胸を張ってる。かわいい。
「 今から異世界に行くから私の部屋に来て。」
「 え?」
ガチなの?もしかしてガチなの?いや、流石にそれはないだろう。いくら親友が人類史上最高の天才といえど異世界転移は……
ガチだった。おれ、異世界なう。親友すげー。
人気でたら続編出します。
あと、悪役令嬢で忌み子という人生ベリーハードモードもぜひ見てください。ただコメディではないのでご注意を。
最後に閲覧ありがとうございました。




