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縁側にて  作者: 新庄知慧
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星空

「星空」などと軽くいうが、本当の星空を、みんな知っているだろうか?少なくとも僕は全く知らなかった。その、十四歳のときまで。その後も、あんな星空は見たことがない。あれにくらべたら、世の中の、ほかの何も、リアリティはない。


星空のドライブ、星空のマリオネット、星空の、ナントカ・・・


色々なところで、星空と、軽くいってるんだが、あの、本当の星空というのは、まったく違うものだ。プラネタリウムというのもあるけど、あんなもんじゃない。凄まじい?凄い?広い?深い?


いやあ・・・


どういっても違う。知っている人は知っているはずなのだが、知らない人には言葉でいっても無理である。


満天の、泡立つ渦潮の水滴みたいな無限の数の光の粒子、その、ひとつひとつが輝く恒星だ。ぼんやり白濁した帯状のものが天の川で、これも星々の集団、かなり頻繁に流れ星も見えて、あっと驚く。


星たちはそれぞれが、何千年も何万年も前に放った光をいまごろ地球に届けている、満天の星空は、さまざまな、気の遠くなる時間と歴史の向うから光っているのだ、無限の空間、無数の時間、それらが無数に組み合わさって、見上げる満天を充たしている。


うわあ・・・!


宇宙体験?自分が地球人であり宇宙人であり、宇宙とか世界を知り、はてしなく恐ろしくなる感じ。


本当の星空は星空なんでいうものではなく、空ではない宇宙で、あらゆる世界と意味が満天に数限りなく存在する、恐怖の無限だ、見上げていたら、あらゆる空想にかきたてられて卒倒しそうになる、戦慄する、どうしたらいいかわからない・・・


そんなことを思い出した。ある日、急に。


静寂の縁側の昼と夜をくりかえすうち、宇宙の静寂を思い出し、そんな星空を思い出した。


いつか僕も星になる?などという意味だったのだろうか?そういう悟りだったのか。なんとも変だった。死んだ僕の存在が、何とも変だった。


それは変化の兆しかとも見えたのだ。だがしかし、現実の死んだ僕は、やはり縁側から動くことはなかった。


つづく・・・



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