第49話 エリナのこと
エリナは悩んでいた。
後一年経ってしまえば、自分の歳は六歳になってしまう。そうなれば、学園に通う年齢になるため、どこかの学園へ入学することとなる。エリナは、その学園をどこにするのかを悩んでいた。
シアは、王都の学園へ入学すると言っていたが、王都の学園は、実力主義なところもあって少し厳しいと聞く。
本当はシアと、大好きな友達と同じ学園に行きたい。でも、今の私の実力では入学ができるかは正直怪しい。
そんなふうに悩んでいたある日のこと。
私はいつもだと午前中、お母さんのお手伝いをしていたが、「今日はお客さんがあまりこないから遊びに行っていいわよ」とお母さんに言われたため、今日は丸一日休みの日となった。
いつもはお店のお手伝いをしていたがために、丸一日休めるというものは嬉しい。
どうしようかと迷った私は、シアの家に遊びに行くことにした。
十五分ほどすると、シアの家が森からちょこんと顔を出した。
相変わらず家はでかいし、庭園の花はきれい。私たちの家との貧富の差をとても思い知らされる。
そして庭園には、ヨメナさん、シアのお母さんと、シアの家のメイド、オシエさんがお花のお世話をしながら二人で話していた。
その途中で自分たちのところに向かってくる私に気づいたのか、作業をやめて二人はこっちに手を振ってくれた。
私は、ヨメナさんとオシエさんにシアのいる場所を教えてもらうことにした。
「すみません、シアと遊びに来たんですけど…」
「うん?シアのこと?それならこの家の裏に庭があるからそこで武器を扱う練習をしていると思うわよ?もし観に行くなら、シアは少し身体が弱いから、私の代わりにしっかり見張ってあげてほしいわ」
「はいっ、ありがとうございます!」
そう言ってから私は、裏にある庭へと走って向かうのだった。
そして、裏にあるであろう庭に向かっている途中、その音は聞こえた。
「はぁっ!」
「シア?」
そして私が裏庭に出た時、シアが誰かと剣の撃ちあいをしているのを目にした。そして、その二人の剣が交わるたびに金属音が空気をたどって周りに伝わっていく。
そしてそれと同じくして放たれる声。それが進むとともに、次第に強く加速していった。
そして私は急ぎ足でその音の聞こえる方へ走った。
私が見たものは一瞬だった。
シアが相手にに真正面からの向かったところを、相手が間一髪で避けてシアの首のところまで剣を運んだ。どうやらそれで決着がついたらしい。
「ありがとうございました」
だけど私は、ただ単純にすごいと思った。
これを目指せばきっとシアとも…
そう思うと私の身体は自然にシアに向かって動き出した。そしてシアに言った。
「シア、私もやってみたい!」
「へっ?エリナ?」
その時のシトレアは、いきなりエリナが現れて戸惑っていたが、エリナはそれにさえ気づいていなかった。
そして私が初めて武器の練習に参加した日の夕方のこと。
エリナは、家に帰ってすぐお母さんの場所まで急いだ。
「あれ?エリナおかえりなさい」
「お母さん、私、シアと同じ学園に行く!」
「えっ?」
この時から始まった。
エリナの物語が。




