第22話 空白の一年間3
今回はセレス視点に戻ります
《セレス視点。ヨメナ視点もあり》
そんなことがあってから一ヶ月が経った。
この一ヶ月の間、私は食べ物の知恵は元からたくさん持っていたので、なんとか成り行きでやってこれた。 だけど今はどこなのか、そして街はどこにあるのかわからない。
「ぐぅうぅ〜」
とりあえず私は、お腹が空いたので近くの森で何か食べれるものを探すことにした。
森の道を歩く。足元はそこそこよく、自分が履いている靴でも困ったりはしない。
しばらくすると、きのみがなっている木を見つけた。私はそれを食べれることを知っていたので、木に寄り添って、きのみを口に入れた。
甘酸っぱい。
そんな時だった。
「グキャーー!」
私の前に五体のゴブリンが現れた。
私は自分で闘うすべを持っていない。
まずい…
死んだゴブリンは幾度なく見てきたが、生きているゴブリンは見たことがなかった。
こわい。
それだけが感情にあふれている。
そんなことを考えている間にもゴブリンは、こっちのことを気にせずに欲望のままに近づいてくる。
もうダメだ!
目を瞑り、私は死を覚悟した。
その刹那。
「ライトニング!」
魔法を放つ声、音がした。
私が恐る恐る顔を上げて、目の前の状況を確認しようとすると……目の前には焼かれて泡を吹いて倒れているゴブリンたちの姿があった。
「あなた、大丈夫?」
どこからとなく、そんな声が聞こえてその声の主が姿を現した。
女性だった。私の村にはこんなに美人な人はいなかった。いや、たぶんこの世界でもそう簡単にこんな美人はいないだろう。そう簡単にいては、凡人がかわいそうだ。私みたいな。でもその女性の顔は、気持ちやつれていた。何かあったのだろうか?
その女性は私の反応に困惑している。
私は慌てて返事を返した。
「あっありがとうございます。おかげで助かりました!」
「えっ、ええ、良かったわ。」
「で、では、私はこれで失礼しますっ!」
「ええ、気をつけてね」
笑顔で返してくれる。
それを聞いて私はこの場から立ち去ろうとした。
「ぐぅうぅ〜」
恥ずかしながらも私のお腹が鳴ってしまった。
もう、私のお腹のバカ〜!
私は恥ずかしさのあまり顔を赤くする。
その女性はその音、お腹の音に気づいたのか、私に言ってくれた。
「お腹が鳴っているようだけど…お腹が空いたの?」
その質問に私は答える。
「…はい…村がドラゴンに襲われてしまって、お母さんとお父さんがそれで死んじゃってしまって…村から出たことがなかったので、適当に歩いて旅をしようと…それでどこか街を見つけたらそこで働いて暮らそうかと…」
その女性はそれを聞いて辛そうな顔をしていた。
私のことを思っている節もあるとは思うが、他にも何かあるような気がする。だけどとりあえず。
「じゃあ、行くところがないのね?そうね…じゃあ、私の家でご飯を食べましょう?私の家だったらたぶんご飯をすぐ用意出来るだろうから…」
「いいんですか!?」
「え、ええ、うちで良ければ…」
「ありがとうございます…」
「じゃあ、私依頼受けてるから申し訳無いけど、依頼達成の報告をしてから私の家に行きましょう」
そして私は森から出て、親切な女性の家でご飯を食べることになった。
しばらく、その女性と喋りながら街に向かう。
その会話から得られた情報は、これから行く街がストックという街ということ、この方は、ヨメナさんということ。それとヨメナさんの家には娘さん、シアさんとメイドのオシエさんが一緒に暮らしているということだった。
でも、ヨメナさんは、お父さんのこと、夫のことについて話はしなかった。その意味は、未熟な私でも分かった。だからあえて触れないことにした。
ヨメナさんは娘のシアさんのことを話す時とても楽しそうに話すのだが、その話の最中に時折悲しそうな顔をしていた。その理由は私にも分からなかった。
話をしているとあっという間に街にたどり着いた。
街に入るには自分のことを証明できるものが必要らしいが、ヨメナさんの顔パスおかげで、なくてもすんなりと入ることが出来た。
可愛いは正義!
そう思った。
そして私たちは冒険者ギルドにたどり着いた。私たちは中に入っていく。
「あっ、ヨメナ様お疲れ様です!」
受付嬢の人が話しかけてくる。
「カティア、ただいま、報告に来たわ」
「はい、確認いたします……はい、確認おわりました…ありがとうございます!……?ところでヨメナ様が連れている後ろの女性の方は?」
「?ああ、森でお腹を空かしていたから私の家でご飯を一緒に食べることにしたの。そういえば、セレスは自分のことを証明するものを持っていなかったわね?ギルドカード作っておけば?作るの無料だし身分の証明にもなるし…この先必要だと思うの。」
私は考える。まあ損はないし、どっちかというと得だと思う。結局私はギルドカード、冒険者カードを作っておくことにした。
登録はただ水晶に手をかざすだけだった。
「はい、登録完了しました!ギルドカードは、無くしてしまうと再発行するのにお金が必要なので気をつけてください。」
「はい、ありがとうございました」
私はカティアさんに頭を下げて、ヨメナさんと冒険者ギルドを出てヨメナさんの家へと一緒に向かった。
広い広場に出て木々の間の道を突き進んでいく。
しばらくすると、一つの家が見えてきた。たぶんこれがヨメナさんの家だろう。周りにはたくさんの花が植えられている。
それよりも…こんな大きな家は初めて見ました…
私たちはその家の中に入っていく。
「オシエ、今戻ったわ」
オシエは、呼ばれるとすぐにやってきた。
「おかえりなさいませ、ヨメナ様?後ろの方は?」
「森でお腹を空かせてたから食べさせてあげようかと思って…シアのことは私に任せて、オシエは食事を用意してくれないかしら。」
「分かりました、すぐにご用意致します。」
そう言ってオシエは、食事の準備に取りかかっていった。
そして私とヨメナさんは、一つの部屋のドアを開けて入る。その部屋のベッドには、寝ている女の子がいた。ヨメナさんに似ている。
「娘さんですか?」
「ええ、そうよ」
そう言いながらも、ヨメナさんは、シアさんの頭を愛おしそうに撫でていた。それでもシアさんは、一向に起きようとしない。
不思議そうに思った私に気づいたのか、ヨメナさんはそれについて話し出した。
シアさんのことについて聞いた私は、とてもショックを受けていた。
ヨメナさんの娘シアさん、シトレアさんは、ドラゴンに襲われてしまい、それから一ヶ月意識が戻ってないようだ。
それでヨメナさんとオシエさんは少しやつれていたのか。これで謎が解けた。ヨメナさんが、娘、シアさんのことを話している時に時折悲しそうな顔を見せていたことも納得できる。
私も何か出来ることがあるならば、助けてあげたいと思った。そうして一つのことを考えて決めた。
「私を…ヨメナさんたちのメイドとして雇ってくれませんか!?」
それを聞いたヨメナさんは、驚きの顔を見せていた。
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そこから私はいろいろなことを経験し、体験し、色々なことを積み重ねてきた。それはあの時、ヨメナ様が私のことをメイドとして、うんん、森で助けてくれたからあったことだと思う。私は、運命的な出会いの日のこと、あの日のことを一生忘れないだろう。
そこでちょうど、寝ているシトレアたち三人は目を覚ました。
やっと過去編は終わりました
次からストーリーがやっと進みます
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