第138話 何もできない
おまたせいたしました。
俺は、セレスの温かさを堪能させてもらった後、涙を拭って急いで自分の試合へと向かった。
決してセレスの胸を堪能してたわけじゃないからな!?まあ、気持ち良かったけど…
それよりもだ。あの部屋にいた時に、俺とセレス以外の視線を一つ感じた。外から様子を伺っているという感じの視線だった。
少し警戒はしていたが、俺がいるときは何も起きなかったから、あえて放っといた。あとでおおごとにならなきゃいいけど。
「さてと、どうしようかな」
俺は、ウンティーを調理してやるか考えながら足の動きを速めた。この選択が後々大きな出来事を起こしてしまうことも知らずに。
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セレスは、シトレアがこの部屋から去った後も、部屋に残ってサラの看病をしていた。
理由は単純である。セレスの雇い主の娘のシトレアに、サラのことを頼まれたからである。
そしてセレスはサラの看病をしている最中、目の前にいるサラの様子をたまに伺いつつ、さっきまでいた、シトレアとのことを考えていた。
「シア様が、初めて私の前で泣いてくれた…」
それがセレスは嬉しかった。なぜならセレスは、シトレアのことを、ほぼ完璧なエルフだと思っていた。弱点らしい弱点がほぼ見つからないからだ。
だけどそれは違ったのだ。
どんなに誰がある人を完璧に思っていても、そのある人には必ず弱点があるのだ。
人間だから当然だ。そのことにセレスは改めて気づけたのである。そんなセレスの身体には、まだシトレアの温もりがしっかりと残っていた。
だが、セレスは気づくことができなかった。自分とサラ以外にも、この部屋にあと一人いるということを。
「ずいぶんと、熱心ねぇ」
その声を聞いて、セレスはすぐさま後ろを振り返った。
セレスの目に移ったのは…人間ではなかった。
いや、少し違う。人間の形をしているはしているが、全身に威圧感を出していて、まるで敵対視しているかのよう。その目が、人間離れしているのだ。
強すぎる!
セレスは全身で危険を悟った。そしてすぐに自分の防御を強めた。
だが、いつになっても腕に衝撃が来ることはなかった。
「貴方に興味は無いの。興味があるのはそこで寝ている子なの」
その言葉を聞いた途端、セレスはなぜか身体を動かさなくさせられてしまった。
動かそうとしても、身体がうんともすんともいわないのだ。
その間にも、目の前の人間では無いもの、ここでは敵と言い換えるとして、その敵は、どんどんサラの近くまで寄っていく。
とうとう敵は、サラのところまでたどり着いた。
敵は、サラに対して何か魔法を唱えている。
「よし、これで終わりね」
敵は、サラかけた魔法を唱え終えたのか、次はセレスの方に歩いてきた。
「貴方も眠っててもらうわ」
セレスは、何もな抵抗ができずに、魔法によって眠らされてしまった。
「ふふふっ、これで作戦の準備は終わったわ。どのように楽しませてくれるか楽しみにしていますわねぇ?」
その気味の悪い笑い声をした敵は、他の人に姿を見られないように、窓から外に出て、どこかへ行ってしまった。
シトレアたちと違う場所で、新たな事件が起ころうとしていた。
次回は、シトレアがご存知の通り、ウンティーと戦います