もう一人の誰か
【―― 貪欲な闇 ――】
心の奥に闇を飼っている
最もおぞましく いかがわしい闇
壊し 殺し 喰らい尽くす
欲望のカタマリ
表で良き人を演じれば
裏ではつばを吐き嘲笑う
最初からそうであったかのように
当たり前のように現れ
すっかり心の奥深く巣喰う
そしていつも 闇は吠えるのだ
欲望のままに
――1990/11/09
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【―― ささやき ――】
声がする 声が聞こえる
耳をふさいでも頭の中で囁き続ける
一番知っている 知らない声
過去のつぶやきか妄想か
得体の知れない声は繰り返すよ
ふくらむ不安に押しつぶされて
返事をして振り向けば誰も居ない
窓辺で 道端で ビルの屋上で
声は 声は 囁き続ける
声がする 声が聞こえる
耳をふさいでも頭の中で囁き続ける
一番知っている 知らない声
――1992/01/22
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【―― 寝ても醒めても ――】
寝ても醒めても 見る夢はいつも同じ
繰り返し 繰り返し 頭の中で響く
嫌になるほど 情けなく
腹立たしいほど もどかしく
出口の見えない迷路の中
渦を巻き荒れ狂う その感情
寝ても醒めても 見る夢はいつも同じ
繰り返し 繰り返し 頭の中で響く
見た事もない表情で
鏡の奥 キミが嗤う
さし示す指を辿れば
空っぽの部屋 雨音がこだまする
――1997/11/06
2017/10/07
制作年月日を追記。




