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ルミナスの所見 †

 こうしてエイブラムのゴーレムとクロムの勝負が決まった。

 弟子であるルミナスはため息を漏らす。

 まったく、師匠はいつまで経っても子供だ。


「しないもん」


 って、いったい、何歳児なのだ、と説教したくなった。

 そんなことを考えながら、師がテーブルに置いたエクスカリバーを手に取る。


 ルミナスは前言したとおり武具に興味はない。ただなにげなく、聖剣とはどんなものなのか、あるいはそれを持ち主に返そうと持っただけなのだが、驚愕することになる。


「お、重い……」


 ルミナスは聖剣を持ち上げることさえできなかった。

 まるでテーブルに張り付いているかのように聖剣はぴたりと付着していた。

 否、それは違う。

 ルミナスは聖剣についての伝承を思い出す。

 聖剣エクスカリバー。

 その剣は最低でも能力値がオールA以上ないと装備できないという。

 あの伝承は本当だったのか。


 クロム少年のステータスは知っていた。さほど高くはない。しかし、【なんでも装備可能】というスキルはここまでチートなのか。


 改めてその固有スキルのすごさに気がついた。

 もしかしたら、クロム少年は本当に選ばれしものなのかもしれない。

 ルミナスは再確認した。

 それと同時に――

 好々爺を絵に描いたような師匠を見つめる。

 荒野の大賢者とうたわれるエイブラム。

 彼はなんなく、とは言わないまでも軽々と聖剣を持ち上げていた。


 もしかしたら我が師匠のステータスはとんでもなく高いのでは、そんな疑念が湧いた。


「お師匠様は、かつて冒険者としても一流だった、という話は真実だったのか」


 ルミナスは大学時代に聞いた噂を思い出す。ただ、それも過去のものだった。


 我が師が大学を去って数十年、彼はずっとこのギルドに引きこもっており、その実力を発揮する機会は一度もなかった。


 しかし、今回はどうだろう。


 もしも少年が、クロムがその聖剣を使いこなし、ゴーレムを駆逐すれば師の心に火を付けられるかもしれない。


 荒野の大賢者とうたわれた師匠の本気が見られるかもしれない。

 そう思ったルミナスは不覚にも興奮した。

 鼻息で眼鏡が曇ってしまった。

 ルミナスは眼鏡を拭くと、クロム少年を見つめた。


「まったく、ドラゴンを倒すだけでなく、我が師匠にも見いだされるとは、底が知れない少年ね」


 そう思った。

 おひいさまは彼を英雄の卵と称していたが、ルミナスも似たような感想を抱く。


「小さな勇者」


 そんな自分だけの二つ名を刻むと、彼の名を呼んだ。


「クロム、お師匠様と戦うにはこの聖剣が必要でしょう」


 彼はそう言うと聖剣を取りにやってくる。


 そのとき、注意深く観察したが、彼は初めて会ったときよりもたくましくなっているような気がした。


 男子三日会わざれば刮目(かつもく)して見よ、そんなことわざを思い出した。

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