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凡人ギルド員です

凡人ギルド員です、はい 2

作者: ひちみ







「あのー、ハルジオン様?」


「様はいらねぇし喋り方も戻せ」


「いや、でも、あのー」


「うっぜぇ!俺がいいって言ってんだから言う事聞きゃあいいんだよ!」


「う、じゃあ、ハル君。そろそろ私をギルドに帰して貰えないかなー?」




どうも、凡人ギルド員ことコハク=ルテリアです、はい。

あの婚約破棄騒動からまだ数時間ほどしか経過していないのだが、私はまだ学園内にいた。

いや、実際には高まっていると言った方が正しいだろう、この暴君ハルジオン=ウェルアム伯爵令息改めハル君に。


パーティー内に来ていた人たちは一旦自宅に帰ることとなり学生は寮へと戻ることとなった。

当事者達はそれぞれ城へ連行されたが沙汰は追ってとのことだった。


そして私はギルド員として現場の片付け班で残る事となっていたのだが、急にハル君が参上。

近くにいた他のギルド員に金を握らせて私を自分の部屋まで連れて来たのだ。


ここでハル君について簡単に説明しておこう。

ウェルアム伯爵家第四子であり伯爵家が三男である彼は私とは5歳差の15歳。

そしてこれはさっき知った事だがこの王立グレンジア学園中等部最高学年で、今年の春からは高等部に進学するそうだ。


彼との出会いはまさしく私が5歳、彼が0歳の赤ちゃんの時で、私の母が伯爵家で働いていたこともあり、私が彼の遊び相手として抜擢された。

そこからは私と彼はともに成長していったのだが、彼が中等部入学する歳、10歳で彼は全寮制のこの学園に入ったそうで、その時私も地方の高等部に進学。

お互い長期休暇が合わず、時たま顔を合わせても大きな話が出来ずに早5年の月日が流れていたのだ。


ハル君自体は私が地方の高等部を卒業してから就職を決めたのは知ってたようだがギルド員になったとは知らなかったらしい。

私もハル君が何処ぞの優秀な学園の中等部に入ったのは知っていたがまさか王立だとは知らなかった。




「あー?まだダメに決まってんだろ。それにシロちゃんよぉ、何勝手に就職先決めてんだよ、ああん?」




まさに不良そのものである。

野獣のような凶悪な顔で凄まれると流石にビビります。


因みにシロとは私のことである。

『コハク』から『小さな白』という意味でシロな、と昔言い出したのは彼だ。

あの頃は可愛かった。

彼は私より魔力も高く知力もあったので年下ながらも私の前に立っては

『シロは俺よりちっちゃいんだからな!俺が守ってやる!』

なーんて言っていたのは遠い昔の記憶だ。


そもそも、彼が言っているのも可笑しな事である。

何故彼に就職の相談を彼にしなければならないのか殆疑問だ。


大体お前は昔から、とハル君のお説教と言う名の小言が始まろうとした時、私の連絡用魔導端末が鳴った。




「はい、もしもし…って、ハル君!?」


「誰だテメェ!シロに何の用だ!?」




強引に私の手から端末を奪い取るとそれに向かって怒鳴る彼。

相手が誰かも分かってなかったのにいきなりそんな事をされるとは思わなかった。

私は顔をサッと青くさせてまた端末を奪い取る。




「ちょっとハル君何すんのさ!す、すいません。コハク=ルテリアです」


『コハクちゃん?さっきなんか怒鳴り声が…』


「マスター!すいません、ちょっと知り合いの男の子が悪戯半分で私から奪い取っちゃって」


「シロ!男か!?男と電話してんのか!?変われ!」


「上司だから!ちょっと待ってて!…すいません、すいません。後ろが煩くて。で、マスターどうしました?」


『どうしたじゃないよー。他のギルドのマスターから君の依頼が大変だって聞いて慌てて連絡したんだ。大丈夫?怪我とかしてないかい?』


「外でももう結構な騒ぎなんですね。心配かけてすいません、大丈夫です」


『ん、無事みたいで安心したよ。そろそろそっちの現場も終わると思うから片付いたら報告に帰ってきてね』




それじゃ、と軽い声で端末を切られる。

かのギルドマスターは結構な実力者であるのだが戦闘以外となるとかなり適当な人だ。


小さく溜息をついて端末をポケットにしまうが横からすごい熱視線を感じる。




「えと、ハル君、なにかな?」


「上司って男か?」


「そうだけど。あ、ハル君も知ってるんじゃないかな?黒猫の根城亭って私のギルドなんだけどさ、そこのギルドマスター。去年の魔導祭でカッコよく戦ってたでしょ?」


「カッコいいぃ?!ハン!そんなの見てねぇよ!俺の目に適ってないってことは大したことねェなァ!!!」




何処が気に障ったのか分からないが何故か凄まれた。

うちのギルドは大きくはないもののギルドマスターを筆頭に結構な実力者揃いの筈なんだが、若しかしたらハル君は昨年の魔導祭には参加しなかったのかもしれない。


一人納得してると急に彼が片手を私に差し出してきた。


ん?なんだ?握手?


よく分からなかったので取り敢えず手を握ってみると彼はボンッと顔を真っ赤にして「ちげぇ!」と叫んで手を払った。




「魔導端末持ってんだろ。よこせ」


「え、やだ」




瞬間、ポケットにしまったそれを無理矢理奪われた。

取り返そうと手を伸ばすが私に背を向けて何やら操作を始めており取り返すことが叶わない。


ものの数分で操作は終わったのか端末を軽く投げて返された。

まだ起動したままの端末の画面には『オレ』と書かれた文字が表示されており、その下には見知らぬ番号。



「俺の番号入れてやった、有り難く思えよ。あと、俺の連絡には3コール以内に出やがれ。いいな」




フンッと鼻を鳴らして彼は言い放つ。

正直、3コールはなかなか難しいと思う。


そんな私の心情なんぞ気にも止めず、この俺様何様幼馴染様はズバリ私に言う。




「俺に黙って勝手な事(就職)したんだ。これから大人しく過ごせると思うなよ」




彼はニヤリと獰猛な笑みを見せて紅い舌で唇を舐めとる。


仕草自体は中等部生のまだ少年という表現が正しい彼にしては大人びて何処か色気を含んだ動作で私がまだ彼と同期であるとか彼に対して元々恋慕の想いでもあったのならキュンとしている動作であっただろう。


しかし、その言動は私を殆不安にさせる要素しかなく、私はまだ見える我が未来に少しの不安と寒気を感じたのだった。

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