第8話 鉱山
「この先1kmに人が沢山いるッポ」
「はははは、何時もながらクックは凄いね。この鶏冠で感じてるの?」
オマイがクックの鶏冠を撫でるがクックは目を閉じてなされるままである。俺が触ろうとすると怒るくせに…。
「奴隷の人達かしら?」
「はははは、多分、奴隷を監視している兵達でしょう。爆裂魔法撃ち込んじゃいましょうか?」
「ちょっと待て、オマイ。それで大半をやっつけたとして、もし奴らが証拠隠滅の為に鉱山を爆破して、奴隷達を生き埋めにでもするとかそういうとんでもない暴挙に走ったらどうする気だ?」
「はははは、皆死んじゃうかもねー。どうしよう?アンナに治療して貰う?」
「ちょっと!何人いるか分からないのに、私の魔力だって限度があるのよ?それに死人や重傷者が出たら手におえないわ。」
マリアムさんの方を見るといつの間にか飛竜を降りてクックの後ろに立っていた。
良く見ると、さり気なくオマイと一緒にクックの鶏冠を撫でているでは無いか。
くっ!ならばと俺もにじり寄りクックの鶏冠に手を伸ばす…
するとクックは突如目を開き、首をあり得ない角度でスウェイバックさせた。
「おい、クック。お前気配とかで周り全部見えてるんだろ?特技を生かして、敵に見つからない様に探ってきてくれよ?」
悔しかったので背中の小さな羽を撫でながらそう言うと快く了承してくれた。良い奴だ。
暫くするとクックが帰ってくる。
「おかえり、クックどう?敵は何人いたの?」
マリアムさんが早速鶏冠を撫でながら話しかけると、クックは気持ちよさそうに眼を半開きにしながら教えてくれた。
鉱山の入口に5人、武器を持って簡単な鎧を身に纏った男達が見張っているそうだ。入口には柵があり、柵の外には櫓も組まれている。小屋が幾つかあり、それが敵の住処だとすると想定される敵の数は最大で30人未満。
「あれ?だから30人以上って書いてあったのかな?場所もそうだし、ここまで分かっていて何で騎士団が直接乗り込まないんだ?」
俺が当然の疑問を口に出すが、マリアムさんは不思議でも何でもないって風で返す。
「それだけここの所有者が国の中枢に近いって事ですよ、騎士団でさえ正面切って踏み込めない程にね。さあ、ここの奴隷には不正を知る者も混ざっているかも知れません。奴隷達は必ず生きて救出して下さいね?誰一人怪我の無い様にお願いします。」
無茶な依頼だが仕方が無い。作戦を立てよう。
まず、俺が鉱山の中に侵入する。
そして中の監視人を倒した後、坑道側から柵を破る。
すると、敵は出口を固めるだろうから、纏まった所で背後からオマイが魔法で攻撃して殲滅する。
どうでしょうか?
「異論は受け付けないぞ? アンナは後方から支援、クックは遊撃隊だ。兎にかく1列には成るんじゃないぞ?」
「なんで?」
ふふふ、そうだろう、知りたいだろう?
「これを我がPTのトライアングルフォーメーションと命名するからだ!」
「ふうーん。」
みんな反応薄いよっ。
◇ ◇
ぼろ布を被うと言い出しっぺの俺は、鉱山の入口がある斜面を上からヤモリの様にへばり付きながら降りて行った。
布にはアンナがかけた迷彩魔法が宿っていて、20分くらいは見つかりにくい...筈である。
「おい、こんなボロイ布被るのか?アンナのマントと変えてくれよ。」
「いっ良いわよ。でも余り匂い嗅いだりしないでね?」
嗅ぐなと言われると気になる。胸の辺りを重点的にクンクンする。水仙かな?良い匂だ。
”ガンッ” マリアムさんがいつの間にか取り出したレイピアの鞘で俺の頭を叩いた。何故マリアムさんが怒るのか皆目見当が付かない。
「やっぱり恥ずかしいから、ダメ!こっちのボロいので我慢して!」とアンナ。
これが失敗だった。
鉱山の入口から忍び込んだ俺は、点在する薄明りを頼りに奥へ、奥へと進んで行く。
途中に敵が居た。一人だけだったが、恐らく近くにもう一人交代要員がいる筈だ。
そこを過ぎると竪穴をロープを伝って降りる。ロープの先には鉱石を引き上げる桶が付いて居た。底まで辿り着くと右の横穴の先に明るい場所がある。俺はぼろ布を被りなおして進む。
そこは、大きな空洞だった。見上げる天上には四角い穴が幾つも有り、穴は遥か山頂まで何本も立通っていた。其処からは外の光が差し込んでいたて、その中央に耳の長い少女が居た。髪の毛が肩まで届くか届かないかと言った所だが、少女っぽく見えた。遠目にも健康そうだ、特別な奴隷か?だとすると何か情報を知っているかもしれない。
おっと、やせ細った少年が手に光る奇妙な石を持ってフラフラとこっちへ向かって来る。俺は立ち止まり息を潜めた。
”ズブッ”
真横に来た子供に見つからない様に完全に息を止めたにも拘わらず、突然横腹に痛みを感じた。どういう事だ!?なぜ分かった?それよりも鈍らな槍くらいではビクともしないこの体になぜ子供の力で突き刺さった?
横を見ると奴隷らしき少年は血の付いた光り輝く石の欠片を握りしめ、立ちながら震えている。
石をよく見て見る。形はガラスの破片の様だが、虹色に光を放っていて見た事もない物だった。
奴隷の子供が誰かを呼んだ。
「ピュレーン、こっちに来て!」
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