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第71話 そして沈没

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叫ぶアンナ。がしかしクックは8頭の飛竜を落ち着かせるのに精一杯で逆にドンドン離れて行ってしまう。


やっと竜達を落ち着かせて後を追いかけた頃には視認できないまでに距離が離れてしまっていた。


「仕方が無いわ。コーヤ様の所へ戻って心当たりを聞きましょう」


オマイニーの言葉にサラ以外の皆が頷くが進路を南東に戻して暫くすると丁度国境を超えた上空で前方から飛竜の小隊が飛んで来た。


「クック!高度を下げて」


直後前方から飛来した火炎球によりゴンドラに繋がれた竜の1匹がやられ墜落する。


ハッシュが重しとなった飛竜をつながるロープを切断して難を逃れるが火炎球は容赦なく襲ってくる。


オマイニーの反撃で1匹撃墜したが搭乗兵は背中から翼を延ばし滑空して逃れる。


「何あれ?反則ー!」


地面に着地した一行はゴンドラを離れ近くの岩陰に避難する。


敵兵も降りて来たが真っ先に飛竜をやられてしまった。


「何で帝国の最上級兵がこんな所をウロウロしてるのさー?」


ヨエがブウブウ言うが敵は追撃の手を緩めない。しかし帝国兵に取って地面に降りたのは悪手だった。


戦闘体形を取ったハッシュとアローケスが小山のような筋肉弾丸となって帝国兵に襲い掛かる。


「うわあ信じられない。ハッシュさん達と渡り合っているよ黒い兵隊たち。」


そう、最盛期のパワーは無いとは言え常人を超越した力を持つハッシュ姉妹。マスターエノッシュの力作でもある彼女達と互角に渡り合う黒い帝国兵達もまた人外の者達だった。


アンナ、オマイニーの支援もあって何とか敵を鎮圧するが敵の一人が最後を悟り自分たちの飛竜を切り殺して行く。


「どうしても足止めしたいみたいね?誰の命令?」


アローケスが最後の一人となった帝国兵から剣を奪い尋問するが答えは無い。


「えっへん。こんな時便利なマジックペイント!頭の中の思い描いている像をスケッチブックに瞬間コピーぺイント。例えばオマイニーの好きな人は?」


「「えっ?」」


「じゃーん、この通りガブの横顔がって!?どういう事ー!!!」


「ヨエ、あんたそれを私にやったら殺すからね?」


ハッシュの恫喝にヨエは冷汗を掻きながら愛想笑いをする。


「アンタたちの目的は?黒幕はだれ?!」


脳筋なアローケスが質問を2つ重ねるとスケッチブックには壊された船。殺された飛竜。女性と男達が巨大な細長い箱に乗る様が描かれていた。


「これってコーヤ様に似てない?この端っこのはエノッシュ様?!」



帝国兵は舌を噛み切って自害しようとしたがアンナの回復魔法で生きながらえた。今は舌を噛めない様に口にナイフの鞘を噛まされ両手両足を縛って転がされている。


しかし尋問を再開する事は叶わなかった。ヨエが吐いたのだ。


「大丈夫よ、病気でも悪阻でもないわ。ヨエのは典型的な魔力切れね。」


「うー、スペシャル魔法を使うと何時もこうなる。」


「仕方が無いからクックにおぶって貰いなさい。アローケスさん、申し訳ないけどその帝国兵を運んで頂けないかしら?」


一行は徒歩でコーヤのアジトを目指そうとするがサラが動かなった。


「ごめんなさい。私の体力じゃあ皆に付いて行けない。皆先に行って。」


「こんな所に置いて行ける訳ないじゃないですか」


オマイニーが言うとサラは自傷気味に微笑む。


「私が居ない方がガブが自由になれて皆ハッピーかもよ?」


”パシッ”


意外な事にサラの頬を平手打ちしたのはアンナでもオマイニーでも無くハッシュだった。


「そんな事ガブ様は望んで居ないからツベコベ言わずに私の背に乗りなさい!全員をガブ様と合流させてみせる。」



「海が競り上がって来る!」


翌日海岸線の街や村では大騒ぎになっていた。


気の早い物は荷物を纏めて標高の高い地域を目指す。早い所では海没した漁村で小舟に乗った村人が海竜の餌食になった。


「海竜だ!海竜が出たぞ!」


この四方を海で囲まれた大陸で海洋業や海運業が発達しなかった原因は彼ら海竜の群れであった。


陸の物より何十倍も巨大に成長する海の猛者共は人類の進出を長い間に渡り頑なに跳ね返して来た。


そして辛うじて海を航行できる数少ない木造大型船達は飛竜に乗った謎の集団からの襲撃を受けて炎上中である。



「国境の谷には海水が流れ込みハニー中央の沼地にも海水が流れ込んでいる。このまま行けばこの大陸は数週間もせずに海に沈む。俺たち皆死ぬんだ。」



「ルシ夫、そんな詰まらない事を伝える為に雁首揃えて来たの?コーヤ様はどこ?ドッコイセンさんは?三女、その剣を降ろしなさい!」


コーヤのアジトまでもう少しという所でルシ夫とその姉妹達に出くわした。


「母様は俺たちの事を不要だと言った...上の姉さんだけを連れて不老者達と共に脱出した。」


「なら追うわよ、協力しなさい。」


ルシ夫はわなわなと肩を震わせた。


「無理なんだ、飛竜じゃあ疲れてたどり着けない距離なんだ。船は帝国の人造兵達が全て壊して回った。俺達は見捨てられたんだよ。」




俺はラヘルに抱かれボンヤリと地上を見降ろしていた。


ラヘルは高度をドンドン上げると雲より高くまで舞い上がった。雲の上からは霊峰がポツンと顔を覗かせるだけで後は雲海とその下に広がる大陸、その先には青い海しか見えなかった。


やがてラヘルは大陸を離れると海上を延々と飛行した。ラヘルは夜も休まずに飛び続け日が2回登り3日目の夕方にハニーランドそっくりな六角形が規則だたしく並んだ大陸が見えて来た。


大陸の中央で俺を降ろすとラヘルは言った。


『いい?今から貴方の記憶をリセットするから。こんな姿でもきっと上手くやるから心配しないで今度は新しい私が貴方を助けにくるわ。私?私は山に隠れる、失敗作は見つかったら殺されちゃうから。ガブは実験頑張ってね?』


「実験ってなんだ?止めろ!」


ラヘルは弱った俺の体に圧し掛かると大きな牙で俺の頭を挟み込みと電流の様な何かを頭の中に流し込んで来る。


「止めろ!」


腰のナイフを抜いて弱々しく抵抗するがラヘルを攻撃しようとすると途端に体が動かなくなる。


「止めてくれ...」


激しい頭痛に薄れる意識の中で俺は最後までナイフを握りしめ抗い続けたのだった。

読んで頂き有難うございます。

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