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第70話 離脱

 その頃コーコーヤでは女神コーヤの元に各国から終結した不老者達が集まっていた。


 最初から身を寄せていたカナン国のカノーを筆頭に獣人国のサリード、巨人国のヘカテス、エルフ国のフルシュ、そしてエノッシュとネカマが最後に遅れて入って来た。


「あなたコツヤに似ているわ。息子さん?コツヤはどうしたの?」


「女神コーヤ様、父は死にました。毒蛇に噛まれたのです。」


「不老者たる者がなんてこと。良いわ貴方が後継者、そういう訳ね?」


「私を不老者にして頂けるのですか?」


「ええ勿論!誰か代わりが必要ですから。次のステージに入った時点で不老化を行いましょう。でもこれからは気を付けてね?我々の直接介入はルール違反。その時点で実験は終了し新しいステージからやり直さなくてはいけないの。でもそれはとても労力を必要とするのよ。」


「次のステージ?早すぎる!折角前回から改良を施したラヘルが上手く進化し新しい生命を生み出そうとしているのに、断固反対する!」


エノッシュが興奮してコーヤに反論した。


「いいえ駄目よエノッシュ、ルールは曲げられないの。全部リセットするわ。」


エルフ国のフルシュがそう言ってエノッシュを睨みつけた。


若くて美しい彼女も不老者として何千年も生きて来たのであろうか?


「嫌だ!折角初めてガブリエルと適合する個体へと調整できたのに!次のスペアは未調整だ上手く行くとは限らない、いや絶対上手く行かない! 一体何回こんな事を繰り返すんだ?もう良いだろう終わりにしよう私達の息子を開放してやってくれ。」


エノッシュが喚き散らすが大柄なヘカテスがエノッシュの肩にがっしりと手を置くと椅子に座らせる。


「ダメよ。まだ満足する結果では無いわ。幸いな事に次のステージの準備もほぼ完了している。今からこのステージを破棄しガブリエルを次のステージに連行します。エノッシュ?ガブリエルの連行はラヘルの役目よ、直ぐに彼女に指示しなさい。各人護衛は1人まで、さあ始めますよ。」


暴れるエノッシュを奥から現れたドッコイセンが押さえつける。


彼女の目には涙が浮かんでいた。今彼女の心はルシフーへの思いで一杯だった。


『ルシ夫。私の可愛いルシ夫。子供の頃からずっと私が育てたのに。』


獣人国のサリードが側近達に命令する。


「お前たちはカナンと獣人国の港を襲い船を全て破壊しろ。」


「その後我らはどうなるのでしょうか?」


「心配するな、後で助けを寄越す。」


他の者達も同じように護衛一人を除いて出動させる。



「さて今回のステージは残念だったけど又次があるわ。気を落とさないで頑張りましょう。」


そう言ってコーヤを先頭に一行が転送門に入る。出た先には陸の上にも拘わらず巨大な潜水艦があった。


「潜水開始。」


カノーが詰まらなそうに宣言するとハニーランドを中心とする6つの国が徐々に沈み始める。


人々は未だ気が付かない。しかし明日の朝には港や標高の低い土地では大騒ぎになるだろう。


大陸はゆっくりとしかし確実に沈み始めていた。



「あれは!?」


俺たちの乗ったゴンドラはクックが操竜する8匹の竜に引かれグングンとハニーランド上空を南東へ下っていたのだが、朝方に北の方角より飛来物を視認した。


竜では無い。羽ばたく翼の速さがブンブンという羽音となってここまで伝わって来る。大きさは小型竜くらい。黄色と黒に彩られたその姿は正に巨大な女王蜂であった。


「何あれ?初めて見るモンスターね。」


アンナが首を傾げる。


「...あれは...ラヘルだ。済まないが少しだけラヘルと話をさせてくれ。」


驚くメンバー達。クックは竜たちをゆっくりと減速させると静かにゴンドラをコーコーヤ国境近くの平原に降ろした。


サラは何も言わないが目を吊り上げて女王蜂を睨んでいる。


俺は一人ゴンドラを降りると女王蜂との距離を半分程歩くが自然に膝が下がり跪いてしまった。


女王蜂はゴンドラから20m程の距離で着地すると例のギシャギシャという俺だけに理解できる不思議な声で話し始めた。


『迎えにきたの、ガブ。この大陸はもう終わるわ、私が貴方を次のステージに連れて行く。』


「大陸が終わるとはどういう意味だ?次のステージって?他の人は如何する?」


『マスターとその側近以外皆沈むのよ。貴方は実験の鍵だから別の大陸に連れて行くけど又記憶は消さして貰うわ。』


「又?まるで俺の記憶を消したことがある見たいな言い方だな?」


『そう、貴方は覚えていないだけで何度も消したわ。でも私が貴方の記憶を消すのは之が最後。進化した私をコーヤ様は不十分と見なし抹殺する積り。そうでなければ実験は完了で次のステージなど必要ないもの。』


「いったいコーヤは何の実験をしているんだ?」


『さあ?エノッシュ様は私がガブに選ばれて進化した暁には実験は完了するって仰っていたのに。残念だわ。』


「ラヘル、お前もしかしてエノッシュの手先だったのか?」


ゴンドラ内に動揺が走った。


サラが俺の元に走りよると女王蜂に向かって叫ぶ。


「ラヘル!友達だと思って居たのに!」


”ブン”


羽から衝撃波が飛びサラをゴンドラまで吹き飛ばす。


ハッシュがサラをゴンドラに引き戻すが次の瞬間ゴンドラが浮かんだ。


”ブン・ブン・ブン”


衝撃波は飛竜達の体に当たり驚いた飛竜たちがクックの制止を振り切って我先に羽ばたいたのだ。


ラヘルが俺に近づく。俺は動けない。細胞が女王蜂を畏敬して脳からの司令を受け付けないのだ。


まるで見えない首輪をされたかのように崩れ落ちた俺をラヘルは6本の腕で抱えると大きく羽ばたき空へと舞い上がった。


「クック!追うのよ。」


 アンナの叫び声が遠くで聞こえた。

読んで頂き有難うございます。

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