第66話 コーコーヤ?
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リノがカサムの隣に笑いながら座った。
「お帰りガブ、獣人国はどうだった?」
「獣人国は市民管理システムが進みすぎていて驚いた。」率直な感想である。
昨日カサムは実家に戻ったので彼女とは1日ぶりである。カゴは仕事に戻っていない。ハッシュ姉妹は宿に置いて俺とクック二人でここへ来た。
俺の獣人国賛美に対してリノは面白く無さそうだ。
「俺が思うにあのシステムは優れているかもしれないが倫理的に問題がある。俺はこの国の方が優れていると思っている。」
コーコーヤは女神コーヤを信仰する国教と政治が一体となった国で温厚な自然と安い税金が特徴である。経済の国カナンが機織機や印刷機などを特産とするのに対し、コーコーヤの特産は農作物や酪農加工品である。
そして今、俺とクックはこの国の第3王子であるリノとその従妹カサムに連れられ大司教の元を訪れている。
何のために?
大司教は言う。
「その昔女神コーヤ様はこう仰られました。『生き物に優劣は有りません。』平等な愛こそが真実を照らす光なのです。しかし何故神は獣人達の蛮行をお許しになるんでしょうか?彼らは遺伝子検査と称して犯罪を犯していない人をも連れ去ります。許されない事です。」
どこからがコーヤの台詞でどこからが私見なのかはよく分からなかった。
因みにこの大司教さん、名前はヨハネホルンと仰る。小柄で品の良い白髪のおじいさんである。
教義に精通し話も深みが有って上手だ。つい話に引き込まれそうになる。
しかし本題に入る前の話が意味不明だった。
「そんなのコーヤに直接聞けば分かりますよね?」
俺の無礼な言葉遣いに怒ることも無く彼は温和に微笑む。
「何でも感でもお伺いを立てると言うのはその人が自分を許してくれるという存在である事を疑うだけで無く、自分の信仰をも信じられないという事の裏返しでもあります。神もその様な愚か者の問いには決して答えを与えないでしょう。」
そんなものか?俺には全く理解できない。
「悪いが俺には信仰と言うのが理解できない。否定をしているんじゃないが俺には解からない。」
ヨハネホルン卿はそれでも微笑みながら言った。
「良いのですよ、私達に取っては神でも貴方に取ってはそうでは無い。それも神が定めた事です。」
「コーヤ教は一神教では無いのか?」
「一神教ですよ?」
「意味が分からん。普通一神教なら自分の所の神様を進めてくるだろう。信仰しない者は悪魔だとか言いがかりをつけるかも知れない。」
「そうですね、人が行う事ですから間違えも冒すでしょう。」
「??」
「神は間違えません。ですから不幸な事が起こってもそれは必然なのです。」
段々イライラしてきた。俺はリノとカサムを睨むと少し語気を強めて言う。
「もう帰っていいか?」
「…」
二人が目を見合わせて黙っているとヨハネホルン卿は胸元から布でくるまれた何かを取り出すとテーブルの上に置いた。包みを解くとそこからは小瓶が出て来た。白磁に金と赤の模様が付いた美しい小瓶だった。
「この中に万物の病気を治す薬が入っています。これをジュア皇帝の所にまで届けて頂きたいのです。」
唐突な話でついて行けなかった。何故薬なのだ?
「俺からも頼む。」
リノはこの大司教を心から信用している様だ。破天荒に見えて信仰心は厚かったに見える。
「ちなみに断ると如何なるのですか?」
「ふはははは、全ては必然ですよ。」
”ガンッ”
俺は勢いよく席を立つと小瓶を搔っ攫い乱暴に言った。
「良く分からんが断るのも臆した様で気に入らん。だから届けてやる!」
勢いよく飛び出した俺の後をクックがフワフワと付いて来る。
カサムとリノは追って来ない。
その夜に旅立ちの準備をしている俺の元へとカゴが飛び込んで来た。
「リノ様から聞きました。帝国へ行くのは止めて下さい!帝国はエルフの国へ攻め込んだそうです。戦争中です。」
◇
「という訳で、不本意ながら帝国の不老者とコンタクトを取りたい。もちろんそいつに間に入って貰うためだ。居るんだろう?」
俺はイライラしながら何故こうなったかを反芻していた。
きっかけは獣人国からの帰りの何気ない会話からだった。
『エルフの国はジュア帝国にもコネを作って於きたいな。』
俺がボソッと呟くとカサムが此方を振り向いた。
『えっと私の先生がジュア皇帝を教えた時期が有ったらしくて、実は届け物をお願いされて居たの。ゴタゴタしていてそれっきりになっっちゃってたけど。』
それが世もや大司教殿とはしかも何故お届け物の中身は薬である。
視線を上げるとコーヤはお茶を入れながら澄まし顔で4女に紙を持って来るように言いつけるとサラサラと書簡を書いてくれた。
「コツヤという老人よ。貴方が会いに行くには未だ早いと思うけど私が貴方を引き留める事は禁止されているわ。いってらっしゃい。」
くそっ最初から黒幕に会えるなら其れだけで事が足りたじゃないか、俺の馬鹿。
俺は仲間達に置手紙をするとその足でクックだけを連れてジュア帝国へ向けて旅立った。
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