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第65話 サリードの研究

「所でマスター・サリード様は何を研究されているのでしょうか?マスター・エノッシュ様は種の進化をご研究でした。」


 ハッシュが聞いた。やめてくれハッシュ、カノーの時の二の舞だ!


「よく聞いてくれた、私の研究は…

 ……キュルキュル…………………キュルキュル……………

 

 ◇


 という訳だ。」


 メイドが10杯目のコーヒーを俺の所へ持って来た時にやっと話が終わった。長い、長すぎる。


「ざっくりと説明したけど伝わったかな?」


「ええ、よく理解出来ました。」「私分かんなかった。」「…ゲップ、失礼」


 要約すると獣人国のシステムは全て彼の研究による。


 遺伝子検査による犯罪予見。隔離政策。子作り許可制度。etc


 王政は残したのは政策を強力に進める為にその方が都合が良かったかららしい。安定した政治が続けばその内王は形式的な物にしていくと言う。


 「俺たちが検査を受けたら如何なるんですか?」


 「検査してあげるよ。直ぐに分かる。」


  ◇


  「ガブ君とハッシュ君だったか?お姉ちゃんの方は実際に遺伝子的なつながりがあるね。アローケス君は重犯罪予見率70%、ガブ君とハッシュ君も50%。もちろんこれだけで人生が決まる訳では無いが、この国だと隔離されて週一の検査を義務つけられるレベルだね。」


 話を聞いていて俺は何だか嫌な予感がした。


 「最初はこの国もその犯罪遺伝子ってのが沢山いたと思うんですけど、如何したんですか?それに制度が根づくまでに生まれたそういう不遇な子供達は?」


 「魔物の子として全て虐殺した。勿論苦しまない様には配慮したが...。そういう意味で私や歴代の王が一番の重い罪を背負っているとも言える。しかし其れを自然の篩いに任せていては何時まで経っても混ざり合ったままなのだ。」


 「それが自然だからじゃあ無いんですか?」


 「自然が好きならエルフの国がいいぞ?奴隷にされるのが落ちだが。」


 俺はサリードを睨みつけた。


 「一体貴方達は俺たちの大陸で何を実験しているんですか?!」


 その答えは俺の斜め上を行くものだった。


 ◇


 サリードはシガレットをもう1本取り出すと火を付けると旨そうに吸った。


 「ふぅー、ガブ君訂正しよう。君達の大陸では無い、私達の大陸だ。この大陸の亜人、魔物全てが我々の創造物であり、子供達だ。」


 俺はハンマーで頭を殴られた様な衝撃を受けた。


 まあ、実際俺を殴ったハンマーが居たら柄の方曲った事だろうが。


 「…人は人を作る事等できない。それは神の領域だ。」絞る様に反論するがスラスラと返事が来る。


 「ならば人と亜人と魔物達を作り出した私たちは神だ。実際コーヤは女神と崇められている。しかし実際の所は唯の不老者だ。首を刎ねられれば死ぬし、死んだ者を蘇らすことは出来ない。我々は神でない。…詰まり特別な人は人を作れる。そういう事だ。 


 それから如何やってサリードの所から馬車に戻ったかはよく覚えていない。


 とにかく腹が立った。ハッシュが頻りに俺の背中を摩って落ち着かせてくれた。恐らく魔力を暴発させる瀬戸際まで興奮していたのだろう。アローケスはハッシュと遺伝子的繋がりが薄いと言われてから何時も以上にハッシュに甘えている。ハッシュに纏わりついて仕方が無いので困ったハッシュは屋敷のドアを出ると行き成り戦闘モードに変身すると俺とアローケスを肩に抱えて馬車まで歩いた。


 勿論来ていた服はビリビリに破け、下着はこういう時の為に探し求めた超伸縮タイプだったので良かったが、とにかくパッツンパッツンのパンツ一丁姿をした筋肉巨人が来た時、馬車の中のフォウさんとカゴはパニックに陥った。


 命だけは助けて下さいと懇願する二人にハッシュは俺とアローケスを馬車に放り投げると元の少女サイズに戻ると前も隠さずに二人に言った。


 「服、貸して頂けるかしら?」


 ◇


 その後、海岸線を東に向かいフォウさんの実家がある村を訪ね、無事家族と再会すると1泊し、ハニーランドでの住所を渡してフォウさんは帰路に就く。


 この国は魔物が少ない。


 サリードの言った魔物も亜人も人も彼ら不老者が作ったと言うのが本当なら、なぜサリードはこの国に魔物を作らなかったのだろう?


 コーヤに接する深い国境の谷


 ここまでくると空を飛ぶ魔物が谷を越えてやってくる。


 国境警備隊が大きな機械式の槍投げ機で魔物退治をしている所へ頻繁に遭遇した。


 立ち寄る村々は善人に溢れ、どこの田舎村にも一人はいるであろう力自慢で粗野な旅人に喧嘩を売ってくるような輩が居なかった。


 それはホッとする様で寂しくもあった。


 コーヤとの国境大橋は一旦スルーして、俺たちはフォウさんを南にあるハニーランドとの国境大橋まで送っていった。


 驚いた事にそこにはマタロンが居た。お前、国の仕事は如何したんだ?クックが俺を突いて偉そうにふんぞり返る。お前の鳩を使ったのか?


 マタロンはフォウさんと強く抱き合うとその豊富な毛並みを撫でまわしている。


 おいおいそう言うのは二人っきりの室内でやれっていうの。


 「ガブさん有難うございます。妻がお世話になりました。」


 へっ?妻? あれっ?まだお付き合いしているだけじゃ無かったの?


 「お前って国の重鎮になったんじゃ無かったのか?周りの評判とか子供が苦労するとか考えなかったのか?知ってるか?獣人国じゃあ結婚にも免許がいるんだぞ。そんな考え無しじゃあ失格だな!」


 フォウさんが申し訳なさそうな顔でマタロンを見ている。マタロンは怯まなかった。


 「ガブさんご忠告有難うございます。私はガブさんに助けて頂かなけば死んでいた身です。そしてこの身はイシュア姫の為にありますが残りの人生はフォウさんに捧げる事にしました。皆さんと違い一介の人間に過ぎない私には一生懸命生きるしか出来ませんが貴方に頂いた人生を悔いの無いように生きようと思っています。」


 相変わらず生真面目な奴だ。そんな真っすぐな目で見ないでくれ何だが恥ずかしくなる。


 「子供が出来たら教えてくれ。抱っこさせて貰いに行くから。」


 フォウさんの表情に明るさが戻る。


 「はい!妻には1ダースお願いしている所です!」


 そりゃあ二人っ子政策の獣人国じゃあ果たせない夢だわ。ははは。

読んで頂き有難うございます。

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