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第64話 絶海の屋敷

 今俺たちは王都を離れ南西へ向かっている。


 マスター・サリードは海辺の田舎町シャーンに居ると言う。俺はナミツ王から許可証を貰いシャーンを目指す。


 久しぶりの馬車に尻が痛いとハッシュが尻を擦る。


 摩ってやろうかとは冗談でも口にしない。怒って戦闘モードにでもなられた日にはこんな馬車など簡単に粉々に壊されてしまうから。


ガタゴト、ガタゴト馬車が行く


 現在の御者はクック、助手席にはフォウさんが座って居る。フォウさん女性なんだから中で良いって言うのに「クックさんが退屈でしょうから」と言って横に座ってずーとおしゃべりしてくれている。

 最もクックは何を聞いても「クッポウ」としか言わないが。


 「時にカゴ、もうそろそろお前を誘拐した犯人の事を喋っても良いんじゃないのか?」


 「えっえーと...。目隠しされていました。...」


 「いいか?戻って来たお前を抱きしめた時にちっとも臭わなかった。そしてお前もその夜までシャワーを浴びなかった。つまり監禁先で浴びていたと言う事だ。もしかして裸に目隠して洗って貰っていたとでもいう心算か?」


 「ちっ違います!ガブ様以外の前で裸になったりしません!」


 俺はニヤニヤしながら言う。


 「俺もそう思う。つまり少なくともその時は目隠しを解かれていた訳だ。若しかするとずーと目隠しを解かれて居たかもしれん。」


 「うぅー。ガブ様あの人達可哀そうなんです。小さい頃に親や兄妹を他国で攫われて。国が捜索を打ち切ろうとするからそれに反対する為にって。私がガブ様に助けられた時の事を話したら皆涙を流して同情してくれて、でも私と会うときは皆マスクしてましたから顔を見て居ないのは嘘を言って居ません。」


 まあそんな所だろうと思った。


 ギルドで喧嘩を売って来たあの若い獣人が怪しいな。


 まあこの国に居るのも後1週間くらいでしかも地方回りだ。もう会う事も無いだろうし不問にするか?


 「カゴ、ガブも私達も心配したのよ? その男達とどっちが大事なの?」


 「ハッシュさん...ごめんなさい、心配かけて。」


 抱き付いたカゴをハッシュが抱きしめる。珍しい。自分の居場所を取られたアローケスが俺に八つ当たりをしてくる。痛い、痛いってお前は人一倍力が強いんだから少しは自覚しろ。


 ◇


波の音が聞こえる絶壁上の館。


灯台代わりの高い塔を持つ奇妙な館。


フォウさんとカゴには念のため馬車で待機して貰った。護衛にはクックを待機させた。


俺たちはマスター・サリードの館に着くと門番に許可証を提示した。


家の玄関はやはり転送陣、恐らく許可証を持たない奴は海の中にでも飛ばされるんだろう。


 ◇


違った。俺たちが海の中に飛ばされた。


不思議な透明な膜につつまれた其処は日の光が届く比較的浅い海の底だった。


「膜を破って出て行かない方がいい、遠浅だが陸まで20kmはある。それにこの辺りは強力な海の魔物が巣くう海域だ、陸ではいくら強くても水中では身動きが取れまい。」


「マスター・サリードですか?」


「如何にも、ようこそわが海中邸宅へ。」


サリードは爽やかなイケメン青年だった。


「マスター・サリード、あなた方は年を取らないのですよね?」 念の為聞いて見る。


「如何にも。そんな事を聞きに来たのかねエノッシュの息子達。素晴らしい、素晴らしいエネルギー密度だ。」


サリードは手に持った四角い板を見つめながら言った。


「それで力が分かるの?」 アローケスが聞いた。


「そうともお嬢さん、距離も分かる。ガブ君とお嬢さんの丁度中間くらいのエネルギーがコーヤの王城から北に1kmの所に二つあるね。エノッシュだろう。困った弟だ。」 


  

「エノッシュ様と兄弟なんですか?」ハッシュが目を輝かせて聞く。


「なぜガブ君の名前を知っているかは聞かないんだな? まあいい、エノッシュとは義兄弟で同じ師匠に師事していた。あいつは夢中になると周りが見えない、管理エリア外での研究活動は協定違反だ。彼の事は我々に任せなさい。」


「そうも行きません。俺は彼奴の所為で化け物になった友人を治療させるんです。」


その話を聞いたサリードはシガレットを1本取り火を付けると紫色の煙をふーと吐いた。


 アローケスが煙たがっている。サリードが傍らのコントロールパネルを操作すると風が吹き煙は飛ばされて行った。


「失礼お嬢さん。ニコチンは入って居ないので許して欲しい。さて僕の専門は遺伝子工学だが恐らくその件に関してはエノッシュ本人を捕まえた方が早いだろう。奴を捕まえたら君に連絡するのでその化け物になったお友達を連れてくるといい。何処に居るんだい?」


 俺は言葉に詰まった。あの日ラヘルは背中から羽が生えて飛んで行った。北だ。


「北の方に...。」


「では近くに連れて来ておくことだ。連絡用のブレスレットを渡そう。誰が付ける?」


「わー、奇麗。ハッシュお姉さま、私が貰って良い?」


いや、お前はいざとなったらエノッシュに寝返る可能性が...。まあいっか?なんかすげー喜んでいるし。


アローケスは貰ったブレスレットを細腕に付けて貰うと嬉しそうにクルクルと回った。


こうやって見ていると普通の鎧を着た女の子なんだけどなあ。

読んで頂き有難うございます。

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