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第62話 失踪

昼前に起きるとカゴが今朝から行方不明だという。


 「うーん、ここいらは治安も良いし犯罪者らしき犯罪者も居ない。とりあえずそのパン屋さんとやらに行って見ようか?」


 フォウの話を頼りに1km程先の細い路地沿いにあるパン屋を訪ねる。


 「あのー、今朝人間の女の子がパンを買いに来ませんでしたか?このくらいの背で黒髪なんですけど。」


 「ああ、覚えているよ。人間なんて珍しいからね。彼女ハチミツを探していたからその先を行った所にある食料品店を教えてあげたんだ。」


 食料品店でもカゴの事を覚えていた。小さなハチミツの瓶を一つ買って行ったらしい。


 手がかりは其処までだった。


 「戻ってきているかも知れないし一旦ホテルに戻ろうか?」


 ホテルに戻るがカゴは帰って来ていない。


 念のためにホテルから警察へと通報して貰う。


 「それで、その子の行ったと思われる先には行ってみたがその後の足取りは不明と?」


 「はい。」


 真面目そうな犬の警察官さんの質問に答える。


 「失礼ですが誰かに恨まれているなんて事は?」


 「王都には3日前に来たばかりでして。その間大きな揉め事はありませんでしたのでちょっと分からないです...。」


 「分かりました、では捜索願いと言う事で聞き込みを始めます。似顔絵を作成しますので彼方で絵師に特徴と伝えて下さい。」


 妙な仮面を被った絵師だった。


 「暑く無いですか?」


 「…」 無言で首を振る絵師。


 しかし流石は警察で絵師をしているだけの事はある。特徴を伝えるとサラサラと特徴を捉えた見事な似顔絵をカラーで書いてくれた。


 俺は出来上がった似顔絵をちょっと拝借して端の方を指で擦ってみる。


 「滲まない…貴様マジックペインターだな!」


 ガタン、椅子を倒して絵師が立ち上がる如何やら図星だったようだ。


 「仮面を取って正体を見せやがれ!ヨエ!!」


 「きゃあ!」


 無理やり仮面を剥ぐと中から出て来たのは…


 「ヨエ…じゃない?」


 涙目の女性は赤毛で良く似ているがヨエとは別人だった。


 「行き成り何をするんですか!」


 怒る女性に平謝りで説明した。知り合いにマジックペインターが居て酷い悪戯をされた事、そいつが先回りして居たと勘違いした事。


 「大体この仕事は長い信頼が無いと受けさせては貰えませんから!」


 マスクを被って居たのは獣人によっては人間が似顔絵を描こうとすると妙な先入観からか結果に誤差が出るからだとか。


 「お詫びにぜひ夕食をご馳走させてください。ぜひ!」


 頭を低くしてお願いすると、仕方が無いと言って詫びを受け入れてくれた。


 ◇


 という訳で、マジックペインターの女性と夕食に行って来る。


 ハッシュがジト目で見ていたが視線を振り切った。


 食事場所はホテルから近い王都でも人気のレストランである。


 「むぐむぐ。悪いわね、こんな高い所ご馳走に成っちゃって。」


 確かに一人銀貨3枚はちょっと高かった。


 「気にしないで下さい、ラツーアさん。それより此処は長いんですか?」


 「ええ、エルフ国を1年程旅して此処に来たのが3年前、丁度二十歳の時だったわ。私色々な所を見て絵が描きたかったの。ここに落ち着いたのは治安が良くて人の顔が幸せそうだからよ。今は画家の傍ら警察の似顔絵を手伝ってるの、だってマジックペイントって落ちないでしょう?張り紙するにしても便利なのよね。」


 同じ赤毛なので聞いて見たがヨエの事は知らないらしい。


 「赤毛って珍しくないですかね?」


 ラツーアさんの故郷はハニーの北西部に位置するジョア帝国、その北部地域で放牧が盛んな所らしいが其処では割合赤毛も多いらしい。


 「こういう職業をしていると色々な人を見るけど貴方変わっているわね。例えるなら背中から見えない炎が湧きたつ感じ? 良く王様とか将軍とかあるんだけどね、あっあと強い戦士なんかにもいる。」


  オーラが出ているのだろうか? それならクックにも出ていてそうだが?


 ん?クック?クックの幻が見える。何時も銅貨3枚しか持っていない奴にこんな高級レストラン入れるはずが無いのだが?


 ははぁーあれだ、そっくりさんだ。ヨエのそっくりさんが居たくらいだからクックのだって居て不思議はない。


 目の前を台車が通り過ぎて行く。丸い銀のカバーの中身は肉かフォアグラか?


 給仕はそれをクックそっくりの男の席に置くとそれは分厚いステーキだった。


 「ガブ君食べないの?このフォアグラ凄く柔らかくて美味しいわよ。」


 「あっああ。頂こう。」


 意識を目の前に戻すと食事と会話に集中する。


 「ジョア帝国は言った事無いんだがどんな所なんだい?」


 「うーん悪い所じゃあ無いとは思うんだけど。競争社会って言うか縦社会と言うか、芸術家にはちょっと窮屈な国だったかなあ。」


 「成程それでエルフの国へ。エルフ国も行ったことが無いが平和な国と聞いた事がある。」


 「あそこは他所者には冷たい国よ。エルフ至上主義って言うのかしら。魔法が文化が発達しているらしくて自然環境と生活の調和みたいなのがスローガンらしいんだけど、村とかに行っても入らせてくれなかったり。良く子供のエルフを捕まえては似顔絵を書いてあげてお礼の果物で飢えを凌いでいたわ。ふふふふ、いつもお腹を空かせていた印象が強くてねえ。貴方は何処に行った事があるの?」


 俺はハニーランドの煙山の事、カナンの進んだ街並み、コーコーヤの魔物達の話をするとラツーアさんは目を輝かせて聞き入っていた。


 楽しい食事の帰り際には小箱にお菓子を一箱づつ貰いレストランを後にするとホテルではハッシュが仁王立ちで待っていた。


 「犯人から小包が届いたわ。中身は体の一部よ。」


 意外な事に俺の体を支配したのは怒りではなかった。


 他愛も無く力が抜け目の前が真っ暗になり意識が遠のいて行くのを俺は感じた。


読んで頂き有難うございます。

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