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第61話 観光の後で

 昼飯の後は広場で劇があると言うので鑑賞中である。


 クックはフォウさんに寄りかかって早速お昼寝中であるが俺は割と興味深く見ている。


 それは獣人の王が魔物を倒し王女を助けて結婚するといったおとぎ話であった。


 獣人王:『誰だ貴様は!』


 黒ローブの男:『私は七人の大魔法使いの一人サリー、お前に王の知恵を授けよう』


 サリーとは一瞬ハニーランドのサリーを思い出してドキッとしたが、冷静に考えればマスター・サリードの事だろう。

 

 そして劇中で大魔法使いの数は七人。これは六角形をした国々がハニーランドを中心に7個集まったこの大陸の形と完全に合致する。俺は思わず腕組みをして考え込んでしまった。

 

 ◇


 「ガブ様早く!」


 もう直ぐ日が傾く。夕方になり辺りが薄暗くなるとここは閉園するのだがカゴは最後に一つだけと俺の手を一生懸命引っ張る。


 それはスライム掬いだった。


 レンズの無い虫眼鏡に薄い紙を張り付けた形のホイと呼ばれる道具をメダル1枚で借りると水の中に浮かんでいるスライムを掬う。取ったスライムは持って帰れるが紙が破れれば終了の遊びだ。俺は金色のスライムを狙ったが比重が重すぎて全然無理だった。俺の腕の所為では無い、水にぬれた紙は脆くて本当にこれ取れるのか?というレベルだった。


 「わーい、ピンクスライムちゃんが取れました。」


 緑はチョークスライム、水色はウオータースライム、ピンクは...忘れた。


 「良かったな、毎日ちゃんと餌をやるんだぞ?」


 「お客さん、スライムに沢山餌をあげすぎると分裂して増えちゃうから気を付けてね。」


 チワワみたいに気が弱そうな犬人さんキャストが教えてくれた。


 あれ?犬人。獣人国に入ってから初めて見たかも。珍しいのかな?


 その日の遊びはそれで終了し俺たちは宿へ戻った。


 大変満足な一日であった。


 その頃コーコーヤでは。


◇ ◇


 

 「アンナちゃん、これ3番さんの持ち込み査定。サイン貰って来てくる?」「はいー!」


 「オマイニーさん、明日の掲示準備終わりました?じゃあ、これさっき追加で来た分お願いします。」


 「はいー!」


 アンナ達はフラフラに成りながら働いていました。


 

 翌日からはフォウさんにお財布を渡して女性陣には観光を続けて貰った。


 俺とクックは?


 ふふふふ、アルバイトである。


 まだ大丈夫なのだが備えあれば憂いなし。俺たちは冒険者ギルドへ入って行く。しかしここは他国の冒険者ギルドと交流の無い独立組織なのでコーコーヤでのランク証は役に立たない。


 『新規登録ですね?』


 水槽を頭から被ったエラ呼吸な魚人?さんが対応してくれた。


 陸上じゃ生活し辛いだろうに? とお節介な事を思いながら登録費用である銅貨50枚を払う。


 冒険者証の表示は勿論F。


 掲示板を覗いてみると思った通り薬草採取しかない。


 他のランクも討伐系が見当たらず採取系だ。報酬も軒並み低めだ。


 「珍しいね、人間の冒険者なんてこの国では初めてみたよ。そっちの鳥人は此処でも珍しい。」


 声を掛けて来たのはフォウさんと同じ虎亜人。俺より頭二つ背が高いその亜人は妙齢な美しい女性だった。


 「王様に会いに来たんだ。許可待ちで少しでも実入りを確保しようかと。」

 

 虎人さんは名前を「メロウ」さんと言った。


 メロウさんは此処にファイターを探しに来たと言う。ファイター協会は軍に雇われていて慰問の為に試合を披露するという。ファイトマネーは1試合銀貨10枚~。いい試合をすれば又斡旋があり、勝てばファイトマネーも上がるらしい。


 「乗った!」


 正に俺とクック向きの仕事である。


 さっそくメロウさんに引き連れられて王城に隣接する軍の駐屯地へ入る。


 そこには大きなコロシアムが有った。


 ◇


 「犬・犬・犬・狼・ワニ・豹・虎・犬・犬・犬」


 犬を数えて居たらメロウさんが笑った。


 「犬族は軍隊や警察の任に付く者が多いのですよ」


 試合相手は狂暴な獣人達。すなわち法律で隔離された犯罪者や犯罪者予備軍の中で身体的に優れた荒くれ達であった。皆恐ろしい顔つきをしている。しかし試合では必要以上に怪我をさせたりましてや殺したりしたら逮捕されてしまう、あくまで慰問のファイターとして戦うだけである。強制ではないが彼らも自分の特性に合ったこずかい稼ぎが出来る訳なのであろう。


 俺の試合で種族が人間だと紹介されるとスタジアムには割れんばかりの歓声が巻き起こった。


 「期待されている様だから、すこし沸かせてやるか?」


 試合相手は顔つきの怖いブルドック亜人、噛みつかれたら痛そうだ。


 開始から暫くは業と攻撃を受けて吹き飛んでやる。


 ブルドック野郎は調子に乗って観客に自分の強さをアピールまでしている。


 そろそろ良いかな?


 パンチ2発で前かがみにさせると、そのまま両手で持ち上げリングに叩きつける。


 一応受け身の練習はしていた様だがまだまだ甘い。2~3回投げてやると相手はギブアップした。


 『!!!!!』


 割れんばかりの歓声に俺は酔いしれた。男しか居ない空間だがこういうのもいい。とよく見たら軍人さんの中に女性も少数ながら交じっていた。髪の毛が短くて遠目に分かりにくかったのだ。


 その日俺とクックは5試合ずつ行い全勝で報酬も弾んで貰い金貨2枚づつ貰って帰った。


 「あんた達さぞ名のある冒険者なんだろう?よかったら又頼むよ。」


 メロウさん良いファイターを連れて来たと上司に褒められたと言って大喜びだった。


 その後メロウさんが奢ってくれると言うのでギルド本部で早い夕食をご馳走になった。


 エールも少し手伝って段々俺は饒舌になってくる。


 「ふうん、ガブたちは王様に会いにコーコーヤから来たのか。王様に会って如何するんだい?」


 「悪い奴が居て、そいつの事を警告するんだ。」


 「悪いのは何時も人間族だ。そうだろう?」


 突然話に割り込んで来たのは犬族っぽい若い冒険者だった。


 「ベイロス、及びじゃないよ!この人たちは私の所のファイターだ。お前の兄妹を攫ったのとは別人なんだからあっち行っておくれ!」


 そしてメロウさんが俺にエールのお代わりを頼んでくれた。


 「気を悪くさせてしまったね、まあ飲んで忘れて!家族を誘拐されたとかで人間族を毛嫌いしている者も中にはいてねえ。」


 「いえ、大事な人が攫われたのなら無理もない事です。」


 クックが居眠りを始めたのでそろそろお暇をと思っているとギルド本部間までカゴ達が迎えに来てくれた。翌日は休養日としてゆっくり昼間で寝ていたのだが...。



 昼前に起き上がり隣の部屋に顔を出すとフォウとハッシュ達が顔を見合わせて真剣に話をしている。


 「えっ?カゴが朝から居ない?」


 「朝は昨日見つけたパン屋さんに行くと言ってホテルを出たんですけど帰って来なくて、警察に行った方がいいのかどうしようかと。」

読んで頂き有難うございます。

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