第59話 コールガール
その後幾つか町を訪れたが皆最初の町と同じだった。
即ち町は活気にあふれ町長達は経済成長率と低犯罪率を誇らしげに語り、最後にさらっとハッシュを口説く。曰く「どうです?後で私と種付けなど?」
ハッシュも慣れたのかニッコリ笑って「テストを受けて居ないので出来なんです。残念ですわ、ほほほほ」と杓子定規な受け答えをマスターしていた。
どの町の人もいい人達だった。町中もカナンほどでは無いが進んでいて清潔だ。
「ダメだ、俺だんだんこの国のシステムが正しく思えて来た。早く用事を済ませて此処から出よう。」
ホテルでベットにうつ伏せながら俺が悲鳴を上げる。
カゴが背中に乗って来てマッサージをしてくれる。
「ガブ様は道行く獣人の女性に言わないんですね?種付けどうですかって?」
言える筈も無い、俺が種付けした所為でラヘルが化け物に進化してしまった過去からするとこの国の基準だと俺は独房入りの大犯罪者かも知れない。いや若しかすると俺は犯罪予備群として隔離された方が世の中の為なのかもしれない…。まてまて、あれはエノッシュの策略だから諦めるのはまだ早い、奴ならラヘルも俺も治せるに違いない。
「カゴ、種付けは大事な人以外とはしちゃダメなんだよ?」
「でもこの国基準の大事な人って優秀な遺伝子を持っていて社会的地位や権力を持っている事って定義に成っちゃうんだけどね。」
其れを言うと見も蓋も無いぞ、アローケス。
あとね、ハッシュもアローケスも着替える時は俺の目の届かない処で脱げ。俺が欲情して襲い掛かったらどうする気だ?
「…って感じの事を考えているんでしょう? ガブは最近欲求不満なの?ハッシュ姉さまは私の物だからあげないけど私が相手してあげようか?」
アローケスめ。そう言っておいて俺が近づいたら急に筋肉達磨に変身して萎えた俺をあざ笑う気だろう?その手は食わん。
「ガブ様がお望みなら私でも…」
カゴまで止めて!本当にムラムラするから止めて!
「ちょっと下のバーでクックと飲んで来る。お前たちは先に風呂に入って寝ててくれ。」
◇
「バーボン。それと此奴にはエール。」
「旦那、外国の人だね?獣人は基本的にアルコールがダメな種が多いから濃いのは置いてないんですよ。少しのアルコールでぶっ倒れる人が多いもんでね、両方エールで良いですかね?」
トカゲ亜人のバーテンが舌をチロチロ出しながら言った。
そう言えばクックも酒は弱い。エール半分で徘徊しだす…はずだった。
クックはグイッとエールをあおるとしゃっくりを始めた。シャックリの度に胸が膨らんで来る。マジか又かクック、お前折角男に戻って居たのに…。
俺はフニャフニャになったボインなクックを急いで担ぐと急いで部屋に戻った。
部屋に戻ると風呂上りの3人がトランプで遊んでいた。ベットを二つ寄せて仲良くキャッキャ遊んでいるが部屋着の脇が緩くてチラチラ見える。
俺はクッ子をベットに押し込むと隣のベットへ潜り込む。そして暗闇の中で欲望に打ち勝てるようにカノーの特別経済講義を思い出し反芻する。
『実態経済は合理性を求めるが経済を支えるルールは経済的強者による恣意性に満ち必然的に資産は集約する傾向にある。古代小国家型ではその再配分は国家の再構築と言う形で行われ、多国連合体という形態に落ち着いた後は…』
◇
いつの間にか眠ったらしい。
暑いと思ったら隣にカゴと背中側にハッシュが寝ていた。くっ!人の気も知らないで。
俺はそっと一人づつ抱きかかえて空きのベッドに帰すと一人座ってため息を付く。
深夜だというのにホテルのバーには未だ灯りが有った。
中にはあからさまにコールガールの様な女たちが手持ちぶたさな様子で座って居る。
カクテルを一杯注文した俺に一人の女が歩み寄って来る。
「お兄さん。私と種付けしない?」
◇
俺はその女の頭の先からつま先までを見る。
見た目は普通の人間だが喋る時に見えた舌先は二股だった。蛇かトカゲの亜人だろうか?
容姿は美しい。色白でスタイルもいい。何でこんな場所で娼婦まがいの事を?
俺はバーテンに女性の飲み物を1杯頼むと座る様に進めた。
バーの高い椅子に座る超ミニな赤いスカートからは閉じていても露わな太ももがの白さが艶めかしく俺の視線を縛る。
「正直な所ぜひ種付けをお願いしたい所なんだけど生憎俺は許可を持っていない旅人なんだ。それに俺とヤルと病気になって酷い目に遭うみたいでお勧め出来ない。」
諦めて帰ってくれると思ったのだがどっこい彼女は強かだった。
「避妊具つければ大丈夫よ。この国は子造りに関して制限はしていても行為自体に規制はないの。御代は避妊具込みで銀貨3枚、ホテル代は出してね。」
さんざん溜まっていた事と酒が入っていた事も有り彼女の大丈夫という言葉で一つで軽く理性が吹き飛んだ。
そのまま彼女の手を引くと別の部屋にしけこんだ。
「貴方よっぽど溜まってたのね。くすくす、オス猿みたいだったわ。」
翌朝形のよいヒップを隠そうともせずベットから起き上がった彼女が振り返り様言った。
俺は少しの満足感と喪失感、大きな敗北感の入り混じった複雑な心境で金を払うとシャワーを浴びた。
シャワーの中でラヘルとの事を思い出す。あの時も道徳的には決して褒められた状況では無かったが、少なくとも翌朝は二人共幸せに包まれていた。お互いの希望が叶った事を心底喜べたのだ。
今朝は当然と言うか残念ながらそう言うのは無い。興奮と快楽を楽しんだ後にこういう事を言うのもおこがましいが、薬でラリって天国にいたのが現実に引き戻された感じだ。
もうこういうのは止めよう、しかし我慢できるのだろうか?とブツブツ言っていると突然閃いた。
急いでシャワーからでると着替え中の彼女に詰め寄る。
「悪いんだけど、その避妊具有るだけ売ってくれない?」
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