第58話 猫さん秘書講座
獣人国で初めに訪れた町。活気あるその町の町長さんとの会談中に紳士そうなゴリラ亜人の町長さんから信じられない一言が。彼はハッシュに対してとてもにこやかにそして爽やかに言った。
「所で、そこの聡明そうなお嬢さん方はかなりのお力をお持ちの様です。良ければ私と種付けなど如何ですか?」
全員その場で固まった、フォウまで固まっている事を見るとこのオッサンが変態なだけだろうか?
その様子を見た猫亜人の秘書さんが「皆さん未だ説明受けていませんでした?」と聞きながら説明をしてくれた。
「皆さんの国とこの獣人国は幾つか異なるルールが存在します。」
「まあそうでしょうね。」
「簡単にご説明させて頂きますね。この国は一夫一妻制では在りません。」
「あれでしょう?町長みたいに権力のある人はハーレムを作るんでしょう?一夫多妻制っていうんでしたっけ?」
チラリと横目でクックを見ると早くも居眠りを始めている。こいつは少し難しい話になるといつもこうである。
「はい、古くからの慣習で経済的に余裕のある人にはそれも認めていますがそちらは寧ろ特例で認定制となっていまして今は共同体としての乱婚制を取っています。」
「乱婚?なんですかその恐ろしい響きは?」 ハッシュが眉を顰めると猫秘書さんは笑いながら言った。
「響きは良くないですが大丈夫です。もちろん行為には勿論相手との合意が必要ですよ?合意なき行為は違法で重犯罪ですから。なので先ほどの町長を思い出して頂くとお分かりの様に直接本人に伺う訳です。そして出来た子供はコミュニティーで共同で育てます。この国は二人っ子政策を取っていますから生まれた子供はコミュニティー内で大事に育てられます。」
なるほどこの国ではそういう風な物なのか?すると行く先々で”種付け”如何ですか?って聞かれるのか?カゴは勿論ハッシュやアローケスにも少し厳しいかもしれんな。
「でも...でもその体で種付けと言われても…ちょっと怖いなあ。」
少女バージョンのアローケスがモゴモゴ言う。お前今すぐマッチョに変身しろ、そしたらゴリラ町長の方が泣いて逃げ出すやもしれん。
「大丈夫です雄ゴリラは体に比べて生殖器が極端に小さいですから。大きいのは馬亜人と一部の小柄な猿亜人ですから気を付けて下さいね。それに最初にOKしても無理そうなら断れますからそんなに心配しないで。」
猫秘書さんは性のインストラクターさんでしょうか?
「あのー町長さんのが小さいとか言い切っちゃって大丈夫なんですか?後で怒られたりしないんです?」
気になったの聞いて見た。
「ええそんな小さな事誰も気にしませんから。大事なのは優秀な遺伝子を効率よく残す事、それがこの国の発展に繋がります。」
「それって優秀じゃない人は如何なるんですか?」
カゴがオズオズと聞く。
「15歳で遺伝子検査をして結婚や子造りに不利とされる遺伝子やその兆候が在ると住民カードにその旨が記載されて固定婚及び乱婚の禁止や不妊治療が為されます。また犯罪遺伝子が見つかった場合はサンドロという町に送られ監視下で隔離されます。」
俺たちは一瞬で静かになった。
「ちょっと人権、いや獣人権的にはどうなんでしょうか?」
「別に隔離されると言っても虐待や強制労働と言った目に会う事では無く監視下で普通に暮らせますから。逆に周りが犯罪予備群だらけなので多少いざこざを起しても大目に見て貰えて反って暮らしやすいみたいですよ?」と猫秘書さんは平然と言う。
随分システムが異なるのだな。最後に俺は気になった事を聞いて見る。
「そのシステムを作ったのって黒いローブを被った不老者では無いですよね?」
「えっ?なぜその事をご存知なのですか?大昔の獣人国は粗野がまかり通る野蛮な国でした。この地を訪れたマスター・サリード様が太古の王に千匹分の黄金に値する国策をお与えになったのです。」
エノッシュじゃないのか?一体何人の不老者が居るんだ?
「貴方達の国にケチを付ける積りはありませんが遺伝子による選民ってちょっと危険な感じがしませんか?」
「いいえ全然? 私達からすれば潜在的に犯罪率が高いと分かっている人たちを野放しにしている人間諸国の方が余程恐ろしいですね。街を安心して歩くことも出来ないでしょう? 実際犯罪率及び再犯率には雲泥の差が出ています。」
率で話されるとぐうの音しか出なかった。
「ぐうぅ。例えば俺がこの国で子造りをしたかったら?その子造りテストとやらに合格する必要が?」
「そうですね、遺伝子テストだけでなく筆記もありますので可成り勉強しないと駄目ですよ?重要な試験なので可成り難しい免許なのです。」
「じゃあテストを受けていない私達が町長さんと子造りしていたら如何なっていたんですか?」
ハッシュが聞く。そりゃあ法律違反で町長諸共捕まっていたんだろうよ。
「大丈夫です。事に及ぶ前に町長が資格を確認しますので、その時点でその話は無かった事に。」
成程ね。
俺たちは丁重に礼を言って町役場を後にするが皆カルチャーショックに呆然としている。
「私テストを受けて見ようかなあ。」
アローケスがポツリと言った。
止めてくれ!有害遺伝子有とかでたら国から隔離されるんだぞ? お前戦闘モードの時とか120%レッドゲージブッチぎってアウトだし!国家敵に隔離されたら流石の俺でも助けるのが骨だからね?
「ガブ様、マスター・エノッシュの戦争計画を防止する為にこの国に入った訳ですがこの国は大丈夫では?」
「ハッシュ俺もそう思った。でもまあ王には会おう、そして対エノッシュで協力を要請する。出来ればマスター・サリードというのにも会って見たいな。」
読んで頂き有難うございます。




