第55話 スパイ・スパイ
爆発口の中へと倒壊した建物の瓦礫が所処燻っている。
常人離れした少女達、即ち女神の3姉妹とエノッシュの2姉妹は直ぐに瓦礫の中から飛び出して来た。俺はアローケスに抱きかかえられたカサムを見てホッとする。
その後ドッコイセンさんが気配を探って皆で瓦礫を掘り起こすとルシ夫が瓦礫の下でアンナとオマイが重なる様に倒れている上で踏ん張っていた。
皆が口々にルシ夫の検討を称える。
俺もルシ夫に感謝を伝えた。
傍らではドッコイセンさんがネックレスとイヤリングで誰かと通信している。女神か?
「女神と通話できるのか?」
「はい、ガブさん。セネセデを名乗るエノッシュの手下が攻め込んできて母上とカノー様は転送陣で避難されたそうです。」
「4女さんは?」
「分かりません、クックさんが助太刀してくれたようですが形勢は悪かったと。」
急いで戻るとアジトはも瓦礫の山と化していた。
倒れている4女さんは未だ息があったが、力を一切感じなかった。3女さんが機械のパワーを入れると見る見る回復していったのでパワー源が壊されて力を失っていたのだろう。
埋まっているクックを見つけたのは意外にもオマイだった。
虫の息のクックをアンナとドッコイセンさん二人掛かりで治療する。
4女さんの話では建物のパワー源を落とされ絶対絶命の時に敵はいきなり居なくなったとこの事。恐らく俺たちが屋敷をぶち壊したのでエノッシュの所に戻ったのだろう。
その後コーヤたちの転送先でルシ夫達パーティーは再会を喜び、コーヤはエノッシュが首都に潜伏した事を俺たちに告げた。そして人が多すぎて場所の特定までは出来ないという事も。
「これから如何する?」
アンナが訪ねて来たので俺は戦いの中考えていた案を口にする。
エノッシュがここに留まっている間に西の獣人国へ行き奴の野望を止める交渉をする。先回りするのだ。
「その間コーヤの内政はリノ達と協力してカサムとルシ夫で監視して欲しいのだが?」
この案には置いてきぼりを食らったカサムが少しほっぺを膨らました以外特に異論がなかった。ドッコイセンさん達も女神を守るために集まって居た方がいいだろう。4女さん一人では負けたが4人いればどんな化け物が来ても勝てるだろうし。
「じゃあ出発は明後日。出発までに獣人を一人雇う。オマイお前が探して来い。」
「はははは、私が?」
「ヨエ、お前も行って来い。」
「何で僕が?」
「良いから明日一番で良い獣人さんを一人探して来い!」
◇
翌朝
「はははは、行って来ますー。」
「僕はカナンで絵を描いて居たかったのに。折角パトロンになってくれそうな人がブツブツ」
さて二人は出かけた。そしてカサムとルシ夫達も首都コーヤに戻った。
俺はコーヤに断り一室を借りると、残った者を集めると見渡した。
「さて、何の話があるのかしら?ガブ」
「私達を残したという事はマスター・エノッシュに関係ある事でしょう?」
「クッポウ」
「その通り!」
現在俺はエノッシュの野望を阻止する方向で動いている。阻止する為に捕まえると。
実際はラヘルを元に戻させるために捕まえたいのだがこれは未だ仲間にも秘密である。
「俺が今日話したいのはこの黒体に関してである。やつは之を集めるが為に戦争を起そうとしている。そうだな?アローケス。」
「ええそうよ。でも別に戦争が無くても時間を掛ければ収集できるとも仰っていたわ。」
「奴はこれを集めてどうしたいんだ?ハッシュ?」
「さあ。多分それを私達に与えて何処まで強く成るか見たかったのでは無いでしょうか?」
「強さ!奴が関心があるのは強さだけか?」
「確か進化馬鹿ってあんたは呼んでたわね?」
「そう、奴が興味があるのは進化だ!そうだなアローケス?」
「そうだけど、それが何か?」
俺の話はこうだ。俺たちが黒体を集めれば其れを欲しがる奴と交渉が出来る。そして奴に黒体を集めさせない事も重要だ。
「コーヤは4姉妹とルシ夫を見ればお分かりの通り黒体の技術を持っている!彼女に奴よりも早く黒体を集めて貰う。そして俺たちはコーコーヤ内で黒体集めを諦めたエノッシュが獣人国に入った所で囲んで交渉する。つまり金ならぬ黒体で奴を買収するのだ!」
ハッシュとアローケスは一二もなく賛成した。クックは最初から無効票である。
「えーっと危険人物を雇って研究をさせるのも如何かと思うけど野に放置するよりも良策な事は認めるわ。私も賛成ね。」
コーヤには昨晩相談してOKを貰っている。後はどうやってエノッシュの獣人国入りを察知するかだ。居場所を監視できれば一番いいのだが。
「という訳で奴の元にスパイを送り込む。」
皆驚いた様な顔をする。アローケスに至っては自分が指名されハッシュと離れ離れになるのだと勝手に絶望的な顔をしている。安心しろお前はスパイ向きでは無い。
「おーいダイリーグ!入って来ていいぞ!」
ダイリーグに続いてコーヤとその娘達も入ってくる。ハッシュとアローケスが構えるが、俺がその必要は無いと諭す。
「この娘には再教育装置に入って貰ってエノッシュから与えられた曲った善悪の基準を世間一般の物に入れ替えさせて貰ったわ。」
女神はサラリと言うが大変な事である。之があればこの世から再犯という物が無くなってしまうかもしれない。
「という様な事を考えている人もいるとは思いますが、基本的にこれは私達が作った子供達にしか適用しません。直接人類に影響を与えない事、これが私達の不問律なの。」
その割にはエノッシュは干渉しまくりな気がするので、もし捕まえたらその機械に掛けて貰えるか聞いて見よう。
ダイリーグの鎧には通信装置が付いているので屋敷と共に置き去りにしたらしい。彼女には屋敷に戻り再び鎧を入手後エノッシュにコンタクトを取って貰う。
「所で、」
再びダイリーグに注目が集まった。
「エノッシュ様のスパイは放置して宜しいのですか?」
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