第51話 女神とヤサグレ亭主
コーコーヤへの道中は活性化した魔物が闊歩していた。
随分カナンの残兵を食らったのだろう。立派に繁殖して数もデカさも凄かった。
俺たちはこの時とばかりに片っ端から狩りまくる。魔物も俺の目には銀貨が詰まったお財布が歩いている様にしか見えなかった。
特にブラックエンジェルの大群は幻のブラックカードと言った所か?
根こそぎ狩って荷台が魔石と黒い羽の詰まった袋で一杯になった。
「師匠!これだけあれば暫く遊んで暮らせますね?」
ルシ夫が甘い事を言ったので心を鬼にしてクック軍曹に目で合図する。
”がすっ”
腹パンで崩れ落ちるルシ夫。
「ルシフーよ、お前に遊ぶ暇など無い。修行あるのみ早く我を超えるのだ!」
早く独立してくれると俺がスッキリする。
えっ?ワザと手を抜いて負けてやれば満足して行くんじゃないかって?こんな若造にワザと負けるなんてプライドが許さないんだから!
失礼。いまだにホルモンバランスが混沌とした状況なので妙な事を口走った事を許して頂きたい。
さて、首都コーコーヤに付くとカサムを訪ねて女神へのお目通りをお願いした。
で、今郊外のこじんまりした邸宅の前に居る。
どうしよう?ルシ夫もアンナヨエやハッシュまで女神様に会いたいっているからこんな人数で来ちゃったけど。
「中に入る人数を厳選しようか?」
「その必要はないわ、入るわよ。」
皆がカサムに付いて扉をくぐる。
中は全く違う場所に繋がっていた。
そこは巨大な洞窟の中の様だった。一面が光る苔に覆われて明るい。
ルシ夫がブルブル震えている。武者震いか?こんな奴でも緊張する事があるものかと珍しい物を見る目で観察しているとドッコイセンさんがルシ夫の背中を摩ってあげている。いい人だよなあ彼女。
よし!おれも一発武者震いをしてみよう。
”ぶるぶるぶる”
「ちょっとガブ。ここ女神さまのお家の中だからね!トイレ行きたいなら入る前に行ってくれば良かったのに!」
「そうよ、カサムさんの言う通りよ。女神様に失礼よ!」
「はははは、…」
「ポッポウ!」
はい済みませんでした。
ハッシュが傍に来て言った。
「分かっていると思うけど気を付けてね?気が膨れ上がって来ている、最盛期のアローケス並みの化け物よ。」
分かっている。だが攻撃されない限り此方から動く訳にも行くまい。
『良く来ましたね強者達よ。そのまま進んで来なさい。』
女神の声は若かった。
ガチャリ。レンガ色のツルツルした外壁で飾られた建物の扉を開けるとそこにはキッチンがあり一人の女性と大きな長テーブルが一つあった。そして長テーブルにはホットドックを齧りエールを飲みながら新聞を読む男性が居た。
「いらっしゃい歓迎するわ、私がコーヤ。知っているかも知れないけど不老者よ。ここでは女神と呼ばれているけど呼び方はお任せするわ。それとこちらが私の旦那でカノー。経済学者なんだけど今失業中なの。話し相手になってあげて。」
なんちゅー気さくな女神様!
ルシ夫が武者震いを継続したままつかつかと前にでた。
「かーちゃん、いつ再婚したんだ!そもそも俺の親父は誰なんだ?!」
◇
そして女神さまから紅茶を頂いています。
ヨエは女神様の許可を貰って肖像画を作成中。
ルシ夫は「貴方のお父さんはクワガタ虫なの」と酷い事嘘を言われショックで机に伏せている。
「あのー、カノー様ってカナンの守り神と呼ばれた方ですよね?」
「そうだが、君は誰だ?」
「あっ私はカサムと言います。コーコーヤ人です。」
「ふむ。カサム君、それにそこでヘラヘラ笑っているエルフ、その隣のもよく聞き給え。私は君たちに興味は無い。」
随分酷い拒絶のされ方だ。
「では、どの様な事なら興味があられますか?」
カサムちゃんたら食らいつくねえ。
「ははっ。経済だ!」
「では、経済の神とも呼ばれたカノー様にお尋ねします。これからのコーコーヤはどの様に経済を伸ばせば宜しいでしょうか?」
意外な事にカノーはしかめっ面をした。その意図は俺たちには計り知れない。
「あらあら難しいお話。そうね誰か家の子と戦って5分以内に勝てればこのしかめっ面さんから私から聞き出して上げても良いわよ?」
「俺がやる!」
ルシ夫が手を挙げた。
「止めとけルシ夫。お前絶対負けるぞ。」 俺の言葉にハッシュが頷いている。
「師匠。俺には越えなきゃ成らない壁なんです、やらして下さい。」
「よし、じゃあ死ぬ気でやって来い!」
「私がこの硬貨を投げるから、テーブルに落ちた時が試合開始ね。それっ」
見たことも無い美しい硬貨だった。白銀色で良く光るその丸いコインはクルクルと回ると澄んだ音を立ててテーブルに着地すると尚を回転を続ける。
「きゃあっ」
ナアさんとニジさんが叫び声を上げる。オマイ2号、アンナ、カサムにアローケスも驚きで声が出ない様子だ。
ビリビリと服を破きながら筋肉を増長させるその様は悪魔憑きを連想させる。あーあ、いい女が台無しで目も当てられない。
俺は大きくため息を付いた後に言った。
「アローケス。お前のどデカいパンツをドッコイセンさんに貸してやってくれ。」
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